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第8章-第108話 かくさく

お読み頂きましてありがとうございます。

「何! 女が一人で何ができるというのだ! おまえはきれいだから、持ち上げられていい気になっているだけなんだ。そんな男の傍で働くよりも、頼れる人に旦那さまになってもらいなさい。」


「何ですって!」


 ヤバい。ヤバい。最も俺が聞きたく無いセリフが発せられてしまう。いや、違うだろう。別に親子の仲を裂きたいわけじゃないんだが・・・。


「加納さんは、アメリカ大統領を敵に回すつもりですか?」


「・・・いや、そんなことは・・・。」


 突然、割り込んだ俺の言葉を理解するのに時間がかかったのか、言いよどんだあと、やっと理解できたのか。真っ青になっていく。


 脅すみたいであまり言いたく無かったんだがなあ。とりあえず、聞きたく無いセリフが回避できたからいいか。


「お父さんなんて、嫌いよ! 社長になんてことを言わせるのよ! このわからずや! 嫌いったら嫌い! ほら社長しっかりして、こんな誠実な人に言わせたから傷ついているじゃないの。」


 いや、美加子さんのお父さん嫌い連発に心抉られます・・・。


「脅すつもりだな! それならば、こちらにも考えがある。これからは、カノングループの支援は無いと思え! 次期当主の座から引き摺り下ろしてやるからな!」


 こんなことまで言い出してしまったよ。さてどうしたものだか。でも、俺の中で優先順位は決ってるんだよなあ。


「どうぞ、ご自由に。お嬢さんを認めて頂けるのなら、蓉芙財閥の当主など、惜しくはありません。」


 まあ、あの時は引き受けざるを得なかったが元々、俺には過ぎたる地位なんだろう。


「なにぃ! 貴様、財閥の当主だぞ。たかだか女1人のために諦めるというのか。ふざけるな!」


 ふざけるなは、こっちが言いたいな。自分の娘と財閥の当主の座を較べてどうするんだ。しかも、財閥の当主の座が上みたいに言いやがって。全く。


「ええ、俺に取って従業員は、何にも変えがたいものですので。その代わり、後始末はよろしくお願いしますね。流石に後継者の心当たりは、ありませんので・・・。」


 流石に洋一さんに押し付ける気にもならないし、引き受けてくれないだろう。まあ、この人が考えてくれるでしょ。気にしないでいよう。


 真っ赤だった顔がまた真っ青に変わっていく。それでも気を取り直したのか、引っ込みがつかなくなったのか、スマホを取り出して電話を掛けている。どうやら、お父さんに泣きつくつもりのようだ。


「ばっかもーん!」


 スマホのスピーカーとは思えない音量で怒号が聞こえてくる。カノンの会長の声だ。


「はい。はい。えっ、お父さんの指示で・・・はい。・・・・はい。・・・・・はい。・・・・・・はい。き、謹慎で・・・す・・・か? いえ、とんでも無いです。はい、わかりました。申し訳ありません。」


 たしか、この人はカノンの孫会社の社長かなにかだったよな。大丈夫なのかな。目の前におずおずとスマホが出てくる。


「なにか?」


「父が変わって欲しいそうです。」


「嫌ですね。流石に直接引導を渡されるのは、御免です。あなたが後始末をしてください。」


「いえ、ダメなんです。ですから、お願いします。父が・・・父が・・・謝りたいそうなんで、お願いします。この通りです。」


 態度がさっきと打って変わって超低姿勢になっている。このままでは、土下座までしてしまいそうだ。そこまでさせるのも可哀そうなので受け取ることにする。


「ありがとうございます。」


 俺がスマホを受け取るとそう返してくる。マジメなんだな。マジメに考えた結果がこれじゃ、浮かばれないだろうな。


「はい、代わりました。山田です。」


「おお、すまんのう。倅のヤツが変なことを言い出して。いやわしが元凶じゃな。孫が泣きついてきたときに送り込んだわしに責任があるんじゃ。」


 やっぱり、画策したのはカノンの会長のようだ。それも孫可愛さじゃ、何も言えないなあ。


「そうですね。今度からは直接、言ってくだされば構いませんので。できるかぎり善処させて頂きます。」


「それでじゃな。倅が言ったことは無かったことにできないかのう?」


「・・・どうしましょうか? カノングループから出せる人材も居るんでしょう?」


 あれだけ言われたんだ。少しくらい揺さぶってみても、バチは当らないだろう。


「イカンイカン、それは絶対ダメじゃよ。カノンは、蓉芙と一心胴体なのだ。次期当主を引き摺り下ろしたと知られたら・・・。」


 カノングループを統括するカノンは蓉芙財閥の株の持ち合いでバブル期に助けられているそうだ。そのせいで財閥を敵に回すと乗っ取られかねない状況にあるということだった。


「でもですね。」


「おお、そうだ。カノンも君が以前言っていた高校卒縁故採用の枠組みに参加しようじゃないか。それでどうだろう。忘れてくれんかのう。」


「わかりました。今回限りにしてくださいね。」


 とりあえず、そこそこの条件を引き出せたから良しとしておくか。

いよいよ、今週の木曜日に本作が発売になります。よろしくお願いします。

そして、地元松阪の名産品やポストカードが当たるプレゼント企画へのご参加をお待ちしております。詳しくは活動報告まで。

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