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第8章-第107話 さいよう

お読み頂きましてありがとうございます。

「卒業論文の題名と簡単な説明をお願いします。」


「アメリカ政府の環境政策という題名です。内容は共和党時代と民主党時代でどのような違いがあるか、そして、その成果と今取り組んでいる政策です。」


 全くなんてタイムリーな内容だ。過去の政策については公開されているが今、取り組んでいる政策が全くわからなくてつまづいているそうだ。このままでは、小さな予算の政策でお茶を濁してしまいそうだと笑っていた。


 大統領も極秘で進めているものを一学生が調べ出せるはずもない。


「大統領とはご昵懇の間柄だそうですね? そういった話をされたことはありませんでしょうか?」


 彼女がすがりつくような視線を向けてくる。今日、この場所に彼女が現れたのは、これが目的だったのだな。


「俺が話すと思いますか?」


「いいえ。」


 そう言いながら首を振る。なにかヒントでもないかというものなのかもしれないな。大統領も1ヵ月後には発表すると言っていたから、そのことくらいだったら、いいだろうと思うのだが・・・。


 バーン!


 突然、扉が大きな音を立てて開かれる。


「彼女、採用ね。彼女は私が頂くわ。いいよね?」


 入ってきたのは幸子だった。チラチラと視線には入っていたので近くに居るのはしっていたが・・・。気になって、盗み聞きをしていたらしい。おいおい、自分の仕事はどうしたんだ!


 俺の許可が必要なことはわかっているようだが上から目線だ。有無を言わさない迫力で迫ってくる。


「ああ、構わないよ。貴女を採用します。我が社に来て頂けますか?」


 俺は幸子が立ち上がらせようとしている傍に行き、彼女に視線をあわせるように静かに笑いかけ、そう言った。


「ああ、あの・・・私・・・。」


 彼女は真っ赤になりながら、勇気を振り絞るようになにかを言いかける。


 きっと、東京大学の学生じゃないことを言いたいのだろう。


「君は幸運だ。丁度、大統領から依頼を受けたばかりなんだ。幸子さんのアシスタントとして、アメリカに滞在してくれ。アメリカ政府との橋渡し役をお願いすることになる。まあ実際は幸子さんの使い走りだけどね。」


 東京大学の学生かどうかなんてことはどうでもいい。俺の大卒採用をしない主義もくそ食らえだ。彼女が帰ってくる頃には十分な実績を上げているだろうから。そのまま、正社員雇用しても大丈夫だろう。


 幸子の鍛え方次第では、リーダーに抜擢しても構わない。


「加納美加子さん、貴女を採用したいのです。是非とも我が社にきてくださいね。飛び入り参加で少々びっくりしましたが、貴女のような優秀な方なら安心だ。」


 そう言ってウインクしてみせる。これで意図が通じるかどうか。


「すみませんでした! 私で力になれるかどうかわかりませんが、精一杯務めますのでよろしくお願いします。」


 どうやら、意図は通じたようだ。そして、彼女は幸子に引っ張られるようにして部屋を出て行く。


「渚祐子、すまない。横取りされてしまったようだ。」


 隣で一緒に座って、面接官役をしてくれた渚祐子に謝る。


「そうですね。困りましたね。でも幸子おばさまですから、仕方ありませんね。それに、部下にしてくださるのなら、適任者を知っていますので、その方にして頂きたいです。」


「誰かな? 渚祐子のおめがねにかなった人物というのは。」


 怖いな。余程、我慢強くないと耐えられないかもしれない。でも、誰も付けないってわけにもいかないか。


「内緒です。もちろん、時期がきたらお知らせします。」


 内緒らしい。間にクッション役が必要かもしれないな。相馬くんにでもやってもらおう。そうだそうしよう。


・・・・・・・


 その日の午後、早速殴り込みに来た客がいた。加納美加子さんの父親で加納士郎氏だ。


「何をしようとしているのかわかっているのか!」


 娘が心配で駆けつけてきたのだろう。俺もその気持ちはよくわかる。もしアキエが自分の経営する会社に就職しようとしたら、同じように殴り込みにいく。


 その会社の経営者が信用できなければ、どんな手段を使ってでも阻止しようとするに違いない。


「彼女は、我が社に必要な人材です。それに彼女はもう大人だ。たとえ、親のあなたであろうとも阻止する権利は無い!」


「な、美加子。帰ろう。」


「嫌です! これから、大舞台に立つんです。祝福してください。」


「だ、騙されているんだ。」


「何を根拠に・・・。それに先程、大統領とも電話で話させて頂きました。喜んで受け入れてくれるそうです。」


 幸子、ナイスアシスト!


「智行さんは、どうするんだ!」


 彼氏がいるのか? それは不味いな。親の言うことはきかなくても彼氏のいうことなら違うかもしれない。


「それは、お父さんが勝手に進めたいだけじゃない。官僚かなにか知らないけど、あんな威張り散らす人は嫌い!」


 どうやら、見合い相手だったようだ。


 これもわかる。俺でも以前なら、安定職種である公務員、それも上級公務員である官僚が是非と言われれば、進めたいと思うだろう。今なら、余程の相手以外は認めないが・・・。


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