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第8章-第106話 まんてん

お読み頂きましてありがとうございます。

 いつもながら、さつきの調査は早い。あっという間に調査結果がメールで送られてくる。ほうほう、カノングループの会長の孫娘か。スパイのつもりなのだろうか。さて、どうやって断ろう。真実を暴いて関係を悪化させるのもなんだしなあ。


 うん?英文科か。


「マクロ経済とミクロ経済の違いを教えてください。」


 彼女はスラスラと答える。意外と勉強してきたらしい。


「日本で国が進める公共事業と経済の関係を教えてください。」


 ここまで来ると本で読んだ知識以外に自分の意見が必要だ。


 これもスラスラと答える。少し突っ込んだ質問をすると考え込む。どうやら誰かの受け売りらしい。それでも今時の大学生にしてはかなりわかっている方だ。


 いまだに公共事業で景気が向上すると思っている大学生も多いのだ。マクロ経済を習えば、今の日本の経済規模からすると公共事業で投下できる金額なんてわずかだということがわかるはずなんだが・・・。


 冷夏や暖冬での経済活動の縮小で簡単に相殺されてしまうのだ。直接投下するよりも、消費意欲が向上するような補助金政策やお金を置いておくよりも今使ったほうが得をする税金政策を推し進めて欲しいものだ。


「貴女は、この会社に入って何をしたいですか?」


 英文科なら、アメリカの企業とのやりとりの多い航空宇宙事業にぴったりなんだが・・・。ダメだダメだ、いつの間にか採用するつもりになっている。


「企画とか経理とかイロイロな職種を経験してみたいです。」


 ニコニコして答え出す。よくある質問だからかなり考えて来ているはず。一般的に花形と呼ばれる職種だ。企業の中枢部と言ってもいいだろう。まあうちには企画なんて部署は存在しないんだが・・・。


「うちは社員になると派遣もあるのだが、行ってもらうことになるかもしれんが問題ないか?」


「はい、もちろんです。Ziphoneですよね。」


 どこからの情報なのか、Ziphoneに派遣されている人間がいることまで知っているらしい。一応社外秘なんだがなあ。


「ああ、牛丼のスキスキとか。Ziphoneグループだな。」


 ヴァーチャルリアリティー事業がらみでうちで採用する人材を派遣する予定はあるが、彼女には無理だろう。フランチャイズで育て上げた人材を、直営店に派遣するつもりなのだが、はてさて彼女に務まるかどうか。


 うちの社員になりたいのなら、これらの職種が出来ないなんて、ありえないのだ。実際に総務、経理の人間も月末や期末などの忙しい時期を除き、フランチャイズで働いてもらっているのだ。


「えっ!」


 考えていない答えだったようで彼女は声を上げてしまう。ダメだな、これは。


「大学の方は単位は大丈夫ですか?」


「はい。必要な単位数は取得済みで後は論文を提出するだけです。」


 この時期に全て取得済みとはなかなかできることではない。特別優秀なのか、情報収集能力が高く要領よく取得出来ているかのどちらかだろう。


 意味は違えど使える人材であることには代わりはない。


「彼女が半年で正社員採用になった渚祐子さんだ。年齢も近いことだし、指導社員としてつける可能性があるから、話を聞くといい。」


「というと大卒で22歳か23歳なのですか? すっごくお若くみえます。」


「いや、18歳だったかな。そうだよな渚祐子さん?」


 向こうの世界で余分に年齢を重ねているから、20歳は越えているはずだが、公式には18歳だったはずだ。


「今年19歳になります。」


「そうすると高卒で?」


 余程びっくりしたのか、目を見開いている。


「いいや。中卒だよ。彼女はワケありでね。」


「えっ!」


 またしても彼女は声を上げてしまう。キラキラとした視線を渚祐子に向けていたのだが、途端に視線がさまよっている。


 羨望と嫉妬と蔑みが入り混じっているように見える。中卒だろうが東京大学を卒業していようが代わりはないのだ。使える人間ならずっといてほしいし、使えない人間を採用する余裕などないのだから。


 これがあからさまな蔑みの視線だったら、即刻不採用を通告できたのだがどうしたものか?


「では、社内を案内しよう。渚祐子さん、頼む。」


 渚祐子は我が社にくる前は、開けっぴろげなドSだったが、貴金属買取ショップ店頭で店員さんをやってもらったせいか、向こうの世界での3年で成長したのか。表面上はそれとわからないようにつくろうことができるようになってきた。


 二人はにこやかにしゃべりながら、社内を回っていく。もちろん、近くのフランチャイズの店舗も見てもらった、その際、渚祐子の励ましがきいたのか笑顔もみせるようになってきた。


 特にメッツバーガーと貴金属買取ショップは興味津々のようだ。


 社内に戻り、面接を再開する。


「留学経験はありますか?」


「はい、あります。」


 ここで注意が必要だ。本来、外国の習慣や生の外国語を学ぶ趣旨のはずが、留学経験をしたいがために英文科に入る人間がいるからだ。


「楽しかったですか?」


 少々意地悪な質問だ。ここで楽しかった出来事だけが出るようでは困る。どんなことを学びとったかを話す必要があるのだ。


 これにも、スラスラと楽しかった経験とアクシデントから学び取ったことを並べていく。ほぼ、満点だ。







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