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第8章-第103話 しっかく

お読み頂きましてありがとうございます。

 不味い! 枯渇した!


 建物内に『移動』して、指輪を『癒』に変えて、酷い負傷を負った近衛兵たちを治療していくが3人目で指輪内の魔力が枯渇したのだ。


 俺は慌てて、レアのHP回復ポーションを取り出すと残りの5人に振りかけていく。


 しかし、3人に振りかけたところで止まる。残りの2人は既に亡くなっていたのだ。


 ギリッ。


「ダメよ、下唇を噛んじゃだめよ血が出ているじゃないの。ね、トムは良くやったわよ。だから泣かないで。」


 幸子が俺を抱きしめて一緒になって泣いてくれる。


 だが、俺が外に出て行きさえしなければ・・・、幸子に防御を任せ、テロリストを軍曹に任せ、戻って来ていれば彼らは助かったかもしれないのだ。


「でも俺のミスなんだ。俺が離れさえしなければ・・・。」


「それは、違います!」


 目の前には、死んだ近衛兵たちを悲痛な顔で見ている女王陛下の姿が・・・。


「彼らは名誉ある殉職なのだ。決して無駄死にではありえない。それに報告が上がってきています。貴方が捕まえたIRA過激派の幹部は、火炎放射器の男は陽動で動き、混乱のさなかに他の人間が爆弾を仕掛けるつもりだったと自白しました。」


 王子がそう続ける。


 そうなのか・・・。


「幹部が拘束されたIRA過激派は逃げ出すための陽動として、あの男を使ったのだろう。」


 フランシス軍曹まで現れてそう続ける。


「貴方が動かなければわたくしを含め、もっと多くの犠牲者が出ていたに違いないのです。」


 さらに女王陛下が続ける。


 ホーッホホホッ。


 あの女が高笑いを浴びせかけてくる。


「何がおかしい・ん・だ。」


「貴方は何様なの。神にでもなったつもり? 貴方なんか、タダの愚か者よ。周囲を見回してご覧なさい。」


 皆の心配そうな顔が心に突き刺さる。


「本当に悪いひとね。陛下にまでこんなに心配をかけて。」


「だが・・・。」


 鈴江の言葉だからなのか、反論が思わず口についてでる。


「本当にバカなのね。皆さんの顔をよーく見てご覧なさい。皆さん、貴方が頼って来るのを待っているのよ。ひとりで抱え込まない、そんなだから、きっと・・・。」


 もう一度、見回してみると皆、頷いてくれる。


 最後に幸子に顔を向ける。


「言いたいことを全部言われてしまったわ。」


 そのまま、俺の頭を抱きしめて頭を撫でてくれる。


 ずっと我慢していたものがこみ上げてくる。


「ええ、それでいいわ。それでこそ人間よ。」


 俺が嗚咽をあげる頃、そう付け加えてくる。全く性格が悪いな。7つも下だと思えない達観ぶりだ。


 いや、今は18歳だから・・・20歳以上も年下の女にやりこめられるとは、全く情けない愚か者だ。


 そういえば、コイツと一緒にいた頃は、いつもこうやって自分の愚かぶりを気付かされた。あの頃は追撃もハンパなかったが・・・。


「でも、こんな程度で挫けるようじゃ、王室師団を任せるわけにはいかないようね。忘れてちょうだいな。でも時折、公式行事には呼ぶつもりだから、よろしくお願いするわ。」


 ようやく顔をあげた俺に女王陛下が笑いかけてくださった。これは女王陛下の本音であり、優しさでもあるのだろう。


 しかし、言われたく無いセリフを言われたく無い女から言われたというのに、心が軽くなってしまった。さっきまでの俺を殴り倒したい。


「まあ、なんて姿なの。ジェミー!」


 女王陛下が一人の女性に近づき、大きな声を上げる。どうも彼女は女王付きの侍女で、近衛兵たちと共に陛下の盾になったようだ。


 HP回復ポーションを振りかけたせいで命はつなぎ止められたが、顔は手で覆ったのかほとんど無いが腕や足に酷い火傷の跡が残ってしまったのだ。


「貴方の婚約者でしょう。なんとかしてあげなさい。」


 思わず、ポカンと口が開く。初耳である。


「えっ、知らなかったの?」


 思いっきりマヌケな表情をしていたのだろうが女王陛下の言葉に頷くのが精一杯だ。元公爵の仕業だな。


「スウォンジー伯爵の娘、ジェミーです。ようやくお会い出来ました。アルドバラン公爵、いえトム殿、お見知りおきくださいませ。」


 目の前の女性が優雅にお辞儀をする。


「スウォンジーというと、カーディフの隣の?」


 俺が管理を任されている領地のひとつがウェールズ地方のカーディフだが、その隣にあるのがスウォンジー家の土地だ。スウォンジー家はアルドバランの遠戚にあたり、カーディフ伯爵の事故死を偽装後、アルドバランを継いで貰う予定だったのだ。


「はい。」


 どうやら、スウォンジー家を取り込んで、うるさい親戚筋を封じ込めてしまおうということらしい。


 そういうわけなら仕方が無い。本当はこのまま普通の医療機関に治療は任せようと思っていたのだが、そんなことをすれば、親戚筋がうるさいに違いない。


 一番うるさいのは元公爵だろうけど・・・。


「ジェミーは、陸軍の海外での指揮官の経験もあるのよ。きっと貴方の役にたつはずよ。」


 陛下の一押しでは断れないではないか。まさか、女王陛下の仕込みなのか。俺は商売人であって、戦争屋じゃないんだがな。


「わかりました。任務が終わり次第ついてきてください。」


ようやく書影が公表されました。

楽しそうなタイトルでとてもお気に入りなの。


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ぜひ、見にきてね。

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