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第8章-第101話 めいよ

お読み頂きましてありがとうございます。

「いい加減にしなさい! なんのゆかりもないこの方が王室の名誉を守ってくださったというのになんてことを言うの。貴方っていう子は・・・。」


「・・・・・・はい、おばあさま。申し訳ありません。」


「謝るのは私ではないでしょ。そんなこともわからないの!」


 ケント王子はお気に入りの賢次さんの態度を引きずっているのだろう。それに女王陛下も顔が紅潮し始めている。これくらいの年齢の方が興奮していいことなんてひとつもない。


「陛下、もうそのへんで。私も公爵家を預かる身、王室の名誉は私の名誉同然です。当然のことをしただけですから・・・ね。」


 そっと、女王陛下からスマートフォンを取り上げ、その手に自分の手を重ねる。決してこの危ういバランスの上にたつ家族を崩壊させたいわけではないのだ。


 しばらくそうしていると陛下の紅潮した顔が元の顔色まで戻る。さらに微笑みかけると血色も取り戻したようだ。


「そうね。そうだったわね。それでは、アルドバラン公爵に次期王室師団長を命じます。受けてくれますわね。」


 俺の手を握り、そう告げてきた。


 王室師団は、近衛連隊を統括する組織だ。王子たちは近衛連隊の連隊長を兼務しているがさらにその上で束ねる役目を命ぜられたようだ。


 これは大変名誉なことであり、アルドバラン公爵としては決して断れないことだ。だが、そんな暇がどこにあるというのだろう。


 ここに王室一家しかいないことを改めて確認するとゆっくりと首を振る。


「そうね。そういえば、襲爵の際にアメリカ大統領にも釘をさされたのだったわ。独り占めはダメだと・・・。そうね・・・名前だけでも貸してくださらない。今は、それで満足することにするわ。」


 助かった。しかし、そんな密約が米英でかわされているとは・・・。


 俺が了解すると女王陛下は、にっこりと微笑み返してくる。何かしてやられた気がするが、あきらめるしかないようだ。


 無茶な任務を押し付けられ無いことを願うしかないようだ。そこはアルドバラン公爵としての時間だから、公爵領で過ごす時間が少しくらい減っても、元公爵も何も言えないだろう。


「それでは、引き続き任務に当たらせて頂きますので王子もそちらのほうでごゆるりとお過ごしください。」


 手にしたスマートフォンに話しかける。


「うん。お願いします。」


 女王陛下の言葉が効いたのか、ケント王子は素直に返してくる。


「任務が終わり次第、ご報告に上がります。今日の件は賢次さんを交えて話し合う必要がありそうですね。」


 少し怒気を含んだ声色でそう返しておく。俺も怒っていることを伝えておく必要があるだろう。それに賢次さんの言葉だと不思議とよく聞いてくれるのだ。


「あっ、ダメだよ駄目「話は聞いた。コイツにはよく言い聞かせおくから。もう邪魔はさせない。元公爵も今回は寄らなくても大丈夫だと言っていたから、そのまま日本に戻ってくれて構わない。」」


 なぜか賢次さんも怒っているようだ。あのいつも飄々とした賢次さんを怒らせるなんて、いったいなにをしでかしたんだか・・・。


「わかりました。お願いします。」


 そのまま、スマートフォンを王子に手渡す。スピーカーから一部始終流れたから、後で賢次さんに対して抗議されないだろうかと思ったが、女王陛下を含め皆さん呆れた表情をしていたから多分大丈夫だろう。


・・・・・・・


「このお嬢さんたちは・・・。」


 お嬢さんってどこにいるんだ?


 ヨーク競馬場に到着して俺が鈴江と幸子を紹介したのだが、そんな返答が王子から返ってきたのだ。


 そういえば欧米人に取って東洋人は幼く見えると聞いたことがあったな。しかし、鈴江ならまだしも幸子もか?


 まあ、これくらいの厚化粧はイギリスでは普通だから、厚化粧イコール・・・・にはならないこかもしれないな。


 俺が王子の耳元で彼女たちの年齢とバツイチであることを告げるとガックリと肩を落とした。


 父親の例を見て思い知っているのだろう。イギリスでバツイチは王子の相手として歓迎されないどころか、イロイロとクリアする必要があるのだ。


「何で年まで教えているのよ。というか、いつ私の本当の年齢を・・・。」


 幸子が俺の耳をひっぱり部屋の隅に行く。


 痛い! 痛いって!


 俺は無言で自空間から履歴書を取り出し、生年月日欄を指でつつく。もちろん、幸子を採用した時のだ。当時、身分証明書で確認したから合っているはずだ。


 こいつは、年齢を何重にも詐称しているのだ。身近な人間にも2歳ほどサバをよんでおり、男性の同僚には5歳、新人には10歳とイロイロ使い分けをしているようなのだ。


 当然、ある程度はバレているがそれこそが隠れ蓑で身近な人間が知っている年齢の信憑性をあげている。よくそんなことを考え出すもんだ。

 

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