第8章-第95話 いーぐる
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急上昇で回避したエアフォースワンだったが、空中制御能力では、F-15イーグルとは大人と子供だ。斜めに急上昇中のエアフォースワンにまるで映画でヘリコプターが現れるシーンのように下から出現する。
「サポートするわよ!」
幸子が現れた。流石に怖いのだろうハッチから随分離れた位置だったが、自分をシートベルトで固定したうえで皆に指示して、機内にあった観葉植物を自分の周囲に集めているのだ。
大統領までこき使っている姿は、女神のようだった・・・は言い過ぎかな。
「レアのMP回復ポーションを頂戴。」
俺が自空間から2本取り出して手渡す。
「うええ、これ不味いのよねえ・・・。」
栓を開けて臭いをかいでいる。
「何ニヤニヤ笑っているのよ! トムはトムのできることをして頂戴!」
思わず状況を忘れて見つめてしまったようだ。不完全な女神だが俺には合っているのさ。
「幸子頼んだぞ!」
彼女の緑の指を使えば防御は万全だ。ミサイルの直撃さえ受けなければ機体の近くで爆発しても、火耐性を持たせた木はビクともするまい。
「任せて!」
俺は幸子の頼もしい言葉を聞きながら、ハッチからダイブする。
これで機銃掃射されてもダメージは少ないだろう。あとは何が何でもミサイルだけは、通すわけにはいかない。
どうやら、敵の戦闘機側の準備も整ったようだ。
ミサイルが発射され、F-15イーグルは、上空へ離脱していく。
正面だ。難なく自空間への取り込みを成功させると視界に捉えたままの戦闘機の機体の裏に『移動』する。ちょうど、離脱の際に横向きになっているせいで足場も十分にある。残り3基のミサイル発射装置をレイピアで切り裂くとコックピットの窓まで『移動』する。
乗員はアラブ系のようだ。例の過激派組織の残党なのかもしれない。
窓に張り付く俺の姿に驚愕の表情を浮かべつつも、戦闘機はエアフォースワンに向かって進んでいく。そして、機銃掃射を試みる。
うしろを振り向くと、エアフォースワンの後部ハッチからウネウネと観葉植物が這い出て弾丸をはじく姿が見えた。風耐性を付与したのか縦横無尽に動き、エアフォースワンを覆っていく姿は・・・、気持ち悪りぃー。
敵の戦闘機の機体は、俺を振り落とそうと錐揉み回転をしながら、エアフォースワンから、離れていく。
流石にそのまま付き合う義理は無いので、ギリギリのところへ移動する。それでも機体がグルグル回る姿を見るだけで気持ち悪くなった。
一体、中の乗員はどんな訓練を受ければ、平気になるというのだろうな。
3周ほど回転して止まる。これ以上は無理らしい。俺は、再び『移動』でコックピット後方にへばり付く。
たしか、このボタンを押してっと、あのレバーを引くとあら不思議、コックピットの窓が外れて飛んでいく。『遠隔操作』だ。流石に見えないボタンやレバーを操作するのは難しいのだが、そこにみえていれば・・・、これこのように緊急脱出装置を操作することもできるのだ。
パッ、シュー。勢いよく乗員が上空に飛ばされていく。
あ、あれぇ。
どうやら、輸送中の機体だったせいか、パラシュートが開かない。本来は座席ごと飛ばされ、座席をも浮かせられるだけの大きさのパラシュートが開くはずなのだが・・・。
お達者で――――。
そんなことを言っている場合じゃ無い。乗員を失った機体がそのまま、エアフォースワンの方へ近づいていく。ふう、危機一髪。機体を自空間に取り込む。
アアアアァ―レェェ―。
急転直下、足場を失った俺はそのまま急降下。
シュゥゥー・・・パン。
よかった。パラシュートを背負っていて。
海に着水かぁ。寒そうだな。その近くを戦闘機が通過していくF-22ラプターだ。アメリカ本国からスクランブル発信したようだ。対F-15イーグル戦を即座に判断し投入したアメリカ空軍に拍手を送りたい。
その戦闘機からヘッドセットに通信が入る。後方1キロメートルくらい先に空母がいるらしい。
俺は『フライ』で方向転換を行い、海への着水を回避できたことをホッとするのだった。
・・・・・・・
空母でエアフォースワンの大統領と連絡を取り合い、エアフォースワンの中に『移動』する。
「怪我人はいないか?」
「ジェシーが、ジェシカが・・・。」
鈴江が別室から這い出て悲鳴をあげている。
どうやら、ファーストレディが怪我を負ったようだ。俺はすぐさま、その部屋に入ると子供を抱きかかえたまま、頭から血を流して倒れている女性を見つけた。
「大統領! 奥様、病気は?」
「大丈夫だ。1ヶ月前の検診では何も無かったはずだ。お願いだ、救ってやってくれ!」
俺は指輪を『癒』に変えると患部とおぼしき頭部に手をやる。動かさないほうが良いだろう。
10秒、20秒、30秒。ようやく目の前の女性が目を開ける。
「ちょっと待って!」
起き上がろうとする女性を制して、さらに続ける。50秒ほどでどんな怪我でも治るはずだ。
「他に痛いところはないか?」
きっと俺の悪口でも言っていたのだろう。ファーストレディは複雑な表情で自分の身体を確かめている。痛い部分を申告されるたび、大統領にお伺いを立てながら、癒やしていく。勝手に胸とかお尻とか触る訳にはいかないからだ。
「ちょっとトム、何をやっているのよ。さあ、目を瞑って。私が指示するから。」
幸子がやってきて、イロイロ、口を出してくる。間近に金髪美女を鑑賞する事さえ許されないらしい。役得とか、少ししか思っていなかったのにー。
告知解禁となりました。本作品の書籍版の発売は3月3日です。
基本ストーリーはそのままで・・・少し恥ずかしかったのですが・・・
出版社がターゲットとする中高生向けにエロ描写を増量したものとなっています。
イラストレーターはTeaさんでぽにきゃんをはじめ、多くのラノベに
携わっていらっしゃるベテランさんです。
彼のセンスで物語の世界が花開きました。
かなり無理を言いましたが、聡明でかつ美しいエトランジュ様と
可憐で表情豊かなアキエとラスボスたる鈴江には私もしてやられてました。
そしてそして、激しさと優しさの2面性を持つ女、マイヤー。イメージ通りです。
まさに 『一見の価値ありです』
すでにアマゾンで予約出来るようです。よろしくお願いします。




