表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
255/563

第8章-第89話 きもったまかあさん

お読み頂きましてありがとうございます。

「まあ、あんまり言いふらさないでくれよ。幸子。いくら、さつき公認でも世間の目というものが・・・。」


 我ながら気弱だと思うが、今の時代、社長にそういった甲斐性を求めていないのだ。見つかれば必ず叩かれる。


 本来はそういう甲斐性がある人物こそが社員に対しても甲斐性を発揮すると思うのだが・・・。


 逆に言えば、独身社長は誰に対しても簡単に切り捨てれるということだろう。それはそれで時代に合っているのかもしれないが、俺にはできないのだ。


「あっ、それで・・・。ごめんなさい。もう誰にも言わないから。」


「そうしてくれると助かる。だが、渚佑子だけじゃないんだろうな。」


「たぶん、チームの皆にはバレていると・・・思うの雰囲気からして。」


「あちゃー。」


 それで、何かを期待するような眼差しが多かったのか。どうやって懐柔すればいいのだろう。


 そのうち、異世界に連れて行って共犯者に仕立て上げるしかないのだろうか。あまりやりたいことじゃないのだけどなあ。皆大事なメンバーだ。誰も失いたくは無いというのが本音だ。


 だが幾人かを連れていけば、嫌だという人間の1人や2人は出てくるかもしれない。そのとき、どうすればいいんだろう。社長としての強権をつかうべきなのだろうか。無理だな。そんなこと俺にはできない。


「さつき、俺が失踪したと思っている人間はどれくらいなんだ?」


 まずは今現状の収拾を急ぐ必要がある。


「そうですね。父を通じて、アメリカ大統領に依頼を・・・。」


 それは不味いかも、せっかく出来上っていた大きなコネが役立たずになってしまったかもしれない。そこは、キッチリとフォローしないと大変なことになる。


「・・・あとは・・・?」


 俺はおそるおそる、先を即す。


「・・・社員たちには伝えてませんが、私たちが不安そうな顔をしていたことは見られていますので・・・。」


 そうか、会社の中や店舗視察をサッサと済ませて・・・、こんなとき普段から良く視察しているから不信に思われないだろう。


 その後は大統領のところへお伺いしなくてはな。きっと、アルドバランのほうにも伝わっているんだろうな。仕方が無い、ゴン氏はさつきにフォローしてもらおう。そして今日だけは、鈴江を自宅に泊めないといけないだろう。


「さつきは、お義父さんへのフォローと鈴江の今晩の宿を頼む。渚佑子はどうする?異世界への出発は、明日以降になってしまうと思うが。」


 本当はセイヤのフォローもしなきゃいけないのだろうが・・・。放っておこう、元凶だしな。


「私も泊めて頂けますか?鈴江さんの着替えもこの中に入ってますので・・・。」


 そう異世界での鈴江の所持品は、渚佑子の『箱』の中に仕舞ってもらっているのだ。元妻とはいえ女性だ。男の俺に見られたくは無いものがひとつやふたつあったに違いない。俺が気にしなくても、相手の中身は18歳の女性なのだ、つい忘れそうになるけど・・・。


「おい!幸子いくぞ。今日は厳しくあたるからな。社員たちには、管理職への教育の一貫だと伝えておけよ。」


 途端に幸子は嬉しそうな顔をする。余程、昇格するのが嬉しいらしい。


 それに引き換え、さつきが不安そうな顔をするが、そろそろ俺を守りぬくという使命感から抜け出して貰わなくては・・・。


 ここは心を鬼にして、突き放す。


 俺は、さつきにキスをして、その場を離れた。


・・・・・・・


 まずは深夜営業店舗からだな。


 それにしても幸子のやつ遅いな。俺がスッピンなのを指摘すると慌てて化粧室に入っていったのが30分前。いかな幸子とはいえ、化粧に30分以上掛かるとは思えない。


 毎日、見ているがまるで魔法のようにあれだけの厚化粧が15分ほどで出来上がっていくのだ。ついつい、目で追ってしまっては、見ないでって怒られてしまうほどなのだ。


 なんだろう。体調でも悪化したのか?


 様子を見に行きたいが相手は女子トイレの中だ。いくら深夜でだれもいないからといえども、簡単に入っていい場所じゃない。


 カチャ。


 俺が女子トイレの前で右往左往しているとようやく幸子が出てきた。物凄く表情が暗い。やはり、体調を崩したのだろうか。別に俺一人でもかまわないのだから、ゆっくりと寝かせることにしよう。


「う、うまく化粧がのらないの。」


 こっちが気を揉んでいたのに本人は、うまく化粧ができなくて試行錯誤していたようだ。なにやってんだか。


「ほら、こっちにこい。」


「やだ。見ないで。」


 俺は無理やり手繰り寄せる。やっぱり、落ちくぼんだ瞼が問題のようだ。


「ほら、目を閉じろ。」


「・・・冷たい・・・気持ちいい!」


 俺は指輪を『冷』にして彼女の瞼に指を置く。指先を冷たくするだけのことなんだが、今までどう使うのかわからなかったのだ。


 本来の使い方とは違うかもしれないが、まあいいだろう。


「これを飲め。」


 ついでに残り少ないレアのHPポーションを手渡す。少々もったいないが仕方が無いだろう。会社の肝っ玉母さん役の幸子がしおれていては、皆の士気に関わるのだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】「ガチャを途中で放棄したら異世界転生できませんでした」
https://ncode.syosetu.com/n4553hc/
もよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ