第8章-第85話 指輪
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「・・・渚佑子、本当なのか?」
渚佑子は頷いているところをみると、本当のことらしい。
俺はここでどうリアクションすればいいのだろうか。
なるほど・・・だから、皆、にこやかだし、積極的に関係を持とうとしてきたわけだ。怒ればいいのだろうか。
「はははははははぁ。」
ここは少し情けない顔を意図的にしつつ笑い続ける。少しは哀愁を感じてくれたかな。
「ハハハハアアア、ハハハハッ、ハハハハア、ハハーハハア、ハハハハッハハハハアハハハハッハハハハアハハハハッツ、ヒーッ・ヒーッ・ヒーーー、ヒーーーヒ、ハハハハア。」
次はバカ笑いだ。身体を折りたたみ笑う。
バン バン バン バン、ベシッ
近くにいたクリスティーの身体を叩く。チッ ビクともしやがらねえ。
「こりゃー、傑作だー!ヒーーーヒーッ、ハハハハア、ハッハハハッツ。」
おうおう、本当に笑いが止まらなくなってきた。
「はははははは、ハハハハッツハハハハアハーーーハッ、ハハハハッツハハハハアハーーーハッツ・・・げほ、げほっ・・・はははははは、ハハハハッハハハハア、あ。」
皆の視線が痛い人間を見るように変わってきた。
「・・・・・・・・・・・・・・・ぷッ・・・・・・はははははは、ハハハハッツハハハハアハーーーハッツ。」
本当に止めようと思えば思うほど止まらないなあ。
「ひゃっヒャッ、ぷっ・・ぷぷぷぷ、ははっははは、ひーぃひっひー。オカシイったらないね。ハーァハッハッははははは。」
やばい、心配そうな視線が痛い。狂ったと思われているのかも、早く止めなきゃ・・・。
「ははははは、・・・・・スーハー、・・・スーハー。はははははー。」
深呼吸してもうまく止まらない。
「・・・・・・・・・スーハースーハー、ヒッ・ヒッ・フー、ヒッ・ヒッ・フー・・・・・・・・・。はあああ、あーあ。」
ようやく止まった。そのまま、アポロディーナの傍に行く。
「どんなお叱りも受けます。このまま、私たちを導いてください。」
先ほどのバカ笑いは完全に無視されたみたいだ。
「わかった、わかった。」
俺がそう言うとアポロディーナの顔色が明るくなった。周囲の皆も手を取り合って喜んでいる。横に視線をズラすとアンド氏の心配そうな顔が見える。この世界の人間で唯一真実を知っている人間だ。
きっと、タルタローネとローズ婆さんくらいには話してあったらしいがアポロディーナにまでは伝わっていなかったようだ。俺が空間魔術師だというのは知れ渡っていたから、てっきり、皆知っていると思ったんだがなぁ・・・。
俺は、アポロディーナの顎をクイと上げて、唇を重ねる。
・・・・・・・・・・・・ウグッ・・・・・・
目を見開き離れそうなアポロディーナの後頭部に手を差し入れる。
チュ・・・・・・ブブブッ・・・・・・ペッビフー・・・チュ・・・
アポロディーナの唇を心ゆくまで堪能した俺は、最後に言葉を残して、『境渡り』魔法を使い、呆れた顔をしている鈴江と渚佑子の手をひっつかんで日本に渡る。
「あばよ!別れの言葉を贈らなかったことを後悔してくれ!後は宜しくな。敬愛するアンドリュー陛下!!」
境を渡る寸前、アポロディーナが崩れ落ちるのが見えた気がしたが、それが腰が砕けたためか消える俺を見て真実を悟ったためかは、もう知るすべが無いはずだった・・・・・・のだが・・・・・・。
・・・・・・・
誰もいないだろうと思っていた面接用に使っていた社長室の仮眠室に戻った俺を出迎えたのは、真っ青な顔をした、さつきと幸子だった。




