第3章-第21話 どりーむ
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「なにをするんですか。社長って、ゲイだったんですか?・・・なんだこれ?ここはどこです?」
勉は、周りをきょろきょろと見渡している。
「勉の念願の異世界だよ。」
「おー、今度の土産は、息子かの?」
セイヤがボケをかましてくれる。セイヤの要望通り、男を連れてきてしまった。まあ、肉親でもなんでもないけどな。
「あ、勉おじちゃんだ。」
「あれ、アキちゃん。・・・ということは日本?」
「バカだろ。お前、異世界だっつーの。」
「えーだって、アキちゃんは親戚に引き取られたって・・・。」
確かにそんなことも言ったな。日本じゃなくて異世界のだけどな。
「じゃあ、ここは青森県?」
なんだその具体的な県名は、俺青森だなんて一言も言ってないぞ。そったどもなにか、俺が青森県出身にみえるきゃ?
・・・・・・
そのあと外の風景を見せても、皆で魔法を使っても異世界を来たことを認めなかったが、マイヤーが耳を見せて自己紹介をするとやっと認めてくれた。
俺が勉の耳にマイヤーの年齢を囁くと
「本物のロリババアだ。」
そうつぶやき、マイヤーに片手を燃やされていた。まあ、直ぐに『治癒』魔法で治されたが自業自得だ。
俺はセイヤとエトランジュ様、マイヤーを紹介し、俺がここに来た経緯も話した。
「社長って、王族だったんですね。それで、俺はこっちで何をしたらいいんですか?魔術師ですか?それとも剣士?鍛冶職でもいいな。魔道具職人も捨てがたい・・・。」
言いにくいな。100Gショップのバイトだなんて。
「まずは、神から祝福を受けると職業が決まるそうだよな。マイヤー?」
「はい、トム殿。あちらに後宮専用の教会がございますので、あそこを使われるとよろしいかと。」
「じゃ、マイヤー。彼をお願いするよ。」
村人とか出ればいいのに・・・。
「心得ました。」
しばらくするとツトムを連れて帰ってきた。ツトムの表情も明るい。
「社長、『戦士』と出ました。」
う。ますます、言いにくいな。
「そうか、よかったな。では装備とか調達しなくてはな。そこでだ、君に割りのいいバイトを用意してあるのだ。住まいも用意してあるぞ。では、行こうか。マイヤーも一緒に来てくれ。」
俺は、100Gショップに案内した。
「社長、ここは・・・?」
「そうだ、俺達の原点だな。これなら、直ぐにでも働けるだろ。日給は100Gだ。2階が住居になっているから、住居費はいらないな。これなら1年も働けば、そこそこの装備が買えるんじゃないかな・・・。」
「ええっ、異世界に来てまで100円ショップですか?そんなぁ!」
「それでは自分一人でやっていくというのか?無一文で住むところも無く、コネも身分証もない状態で・・・。まあ、どうしてもというなら仕方がない「いえ、ありがとうございます。こんな立派な職場を用意して頂き・・・。」」
無一文で放り出そうなんて、少ししか思っていなかったが・・・。言ってみると簡単に返事がきた。やっぱりチョロイなコイツは・・・。
「そうか、働いてくれるか。俺は7日のうち2日は、こちらに来るから、大丈夫だ。お前ならできる!それに他の従業員が居ないから気楽だろ。あと、倉庫代わりに袋を渡しておく、これには200KGまでの荷物を入れることができる。」
俺はツトムにセイヤから貰った、100Gショップ専用の袋を渡し袋の使い方を教えた。そして、日本の100円ショップとの違いを説明していく。ほとんどは値段が違うくらいであるから、勉でも難なく覚えたようだ。
「マイヤーは、空間魔法が得意だと言っていたよな。」
「はい、ほぼ時が止まった状態で最大1999個までの品物を200種類まで保管できます。重量の制限はありません。」
「ほう、それは凄いな。なら、これを仕舞っておいてくれるか。」
俺はそう言って、腐敗しない袋に入れたハンバーガーとポテトと紙コップを取り出して手渡した。
「これは・・・。美味しそうですね。一つ貰ってもいいですか?・・・このイモ、美味しいです。たっぷり塩が使ってあって贅沢ですね。それに、こちらのパン・・・サンドイッチでしょうか・・・分厚いお肉がジューシーだわ。コレを売るのですか?」
「ああ王宮の近くで小さい店でいいんだが、どこか空き店舗を知らないか?」
「そうですね。私の昔の職場の隣が空き店舗だったと思います。あそこなら、ここから歩いても直ぐだし私が交渉をすれば家賃も安くしてくれると思いますよ。」
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「あら、マイヤーじゃない。どうしたの、もう王宮をクビになったの?早いわねぇ。」
「違うわよ。もう、なんでクビ前提なのよ。エミー。隣の空き店舗って、教会所有だったわね。あそこ、貸し出すとしたら幾らになるのかな?」
「ああ、あそこはね。食べ物屋だけなのよ。食べ物屋が入ってくれるなら、タダでもいいわよ。但し、厨房スペースが無いから、使えるとしても弁当屋くらいなのよね。でも教会へ来る客は一定じゃないから、皆儲からなくて撤退していくのよ。」
「だそうです。ではサッサっと、店をキレイにして売れるだけ売ってしまいましょう。エミー!早速、食べ物を売るから、みんな連れてきてね。」
マイヤーがエミーに店舗の鍵を借りると店舗に行く。店舗は100Gショップをさらに小さくしたような店舗で、やはり2階に住居がある。2階にアタッシュケース型太陽光発電機を設置した。
「トム殿、1階の掃除終わりました!」
早いな。まあ、本職の魔術師だもんな。魔法でサッサとできるか。発電機から電源ケーブルを延ばし、1階に小型冷蔵庫を設置する。ハンバーガーショップを異世界で開業するのに一番悩んだのは、ドリンクをどうするかだった。
初めはドリンクメーカーが提供してくれるサーバー機を持ってこようと思ったが、水道工事や炭酸ガスボンベなどを考えに入れると無理であると諦めた。
そこでメッツバーガーで1日の終りに廃棄する氷を紙コップに入れたものを腐敗しない袋に入れ、水で薄めるタイプのドリンクの濃縮液を水筒に移し変えた。濃縮液は小型冷蔵庫に入れておけば、1週間くらいは持つだろう。
ドリンクの作り方はマイヤーが氷入りの紙コップを取り出す。そこに濃縮液を少し入れ、『ウォータ』で綺麗な水を作り出して入れて混ぜてストローを差せば出来上がりだ。ハンバーガーやポテトは暖かいまま保存されているので、そのまま出せばバーガーセットの出来上がりだ。
値段設定は、この辺りのランチの値段が20Gであることから、ハンバーガーが10G~25G、ドリンクの氷ありが10G、氷なしが5G、ポテトが10G、ハンバーガーセットで30Gだ。タダの水ならば教会でも貰えるので、これでいくことにした。
・・・・・・・
ランチタイムだけは忙しいから、ツトムも100Gショップは午後2時開始ということで俺が居ない日の昼は応援に来てもらうことにした。
初日はもの珍しさもあったのだろうか。持ってきたハンバーガー900個の内150個、ポテト800個の内100個、ドリンクも100個売れた。
トータルの売り上げは5000Gだ。原価はほとんどタダみたいなものだから、そのまま純利益と考えていいかもしれない。
マイヤーには売り上げの5%250G、ツトムは100Gショップの日給はそのまま7日分先渡ししてあるのでツトムがバーガーショップに応援に来たときは、ツトムの売り上げの1%を渡すことにした。
・・・・・・・
夕方には、教会の伝手で大工を呼んだ。
大工を呼んでなにをするのかな?