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第7章-第83話 おちる

お読み頂きましてありがとうございます。

 各国で活発化していたダンジョンは帰還時期に合わせたかのように3ヶ月前には鎮静化していった。


 攻略部隊の収入源である各国の予算は今後5年間維持されることが決定済みだったが各国拠点に散らばった各組での流通業がそれを上回る収入を叩き出している。


 ポセイドロ国のクリスティーへの権限移譲も滞りなく完了した。


 そして帰還前日を迎えた。


「願いを叶えて下さると仰いましたよね。」


 期間準備も完了したその日の午後に訪ねてきたクリスティーがそう言ってきた。


 うーん、このタイミングか。明日の帰還式典では、各国大使との最後の挨拶がのこっている。ここで逃げ出すのはいささか都合が悪い。


「ああ、俺のできることならな。」


「アポロディーナを抱いてください。」


 結局、俺は逃げ回っていてアポロディーナとはしていない。向こうは拙いコミュニケーションで必死に食い下がってきたが最後の一線は死守してきた。


 彼女の幸せを思うとどうしても踏ん切りがつかなかったのだ。恋に破れれば、次の恋を見つけるのは容易いだろうが、成就してしまえば、彼女の性格からして、一生思い続けてしまう可能性が高い。


「お前はそれでいいのか?愛しているんだろう。」


 クリスティーはアポロディーナを大切に思っていることは見ていればわかる。むしろ、愛していると言ったほうがしっくりくる。


「えっ、あの・・・、いったいいつから気づいていたのですか?」


「初めからかな。」


 クリスティーのアポロディーナを見つめる視線は情愛に満ちたもので肉親を思うそれに近いものだったのだ。初めは血のつながりによるものと誤解していたのだが、よく考えるとそのときは、血がつながっているとは知らなかったはずなのだ。


「・・・もちろん、私が男だったら、頂いていたさ。」


「もう一度聞こう。お前たちはそれでいいのか?」


 複数形に変わった俺の言葉にクリスティーは思わず振り向いた。


「!」


 そう扉のところでアポロディーナが顔を覗かせていたのだ。


「何を勝手なことをしているのですか。お姉さま。」


「・・・。どこから、聞いていたの。」


「全てよ。お姉さまの思いなんて、そんなことはわかっていたけどね。」


「っ・・・・・・。」


 クリスティーは目を白黒させている。


「私からもお願いします。私を抱いてください。・・・・・・お姉さまと一緒に・・・。」


「俺にピエロになれと?」


「いいえ!」


 いつになく強い口調のアポロディーナが否定する。


「このままでは生きる屍です。一生後悔して生きるなんてまっぴらです。ですから抱いてください。思い出があれば、お姉さまと慰めあって生きていけます。だから・・・。」


「・・・。」


「もしかして、ティナお姉さまのように押し倒した方がよろしいですか?」


「あれは・・・。」


 あれは押し倒されたのでは無い。泣き落とされたのだ。たしかに結果としては、夜這いしてきたティナを返り討ちした格好になってはいる。


 深夜、夜這いしてきたティナにいきなりガッシリと押さえつけられ、顔の上にポタポタと涙を零しているティナの姿を見たら、すごく申し訳ない気持ちになって、つい応えてしまったのだ。


 それで枷が外れたのか、攻略部隊の猛攻に屈してしまったというわけだ。


 ここ1ヶ月の猛攻撃を耐えられたのは、ひとえにチバラギ国王室でセイヤが2年間いろいろと試した秘術の成果のおかげと言えるだろう。


 セイヤに側室を無理やりとらされたときに教えてもらったのだ。


 そのなかでも最大に効果があったのは・・・。まあいいか・・・そういうわけで、攻略部隊の何・・・人かと関係を持った。


 どうやら、最初に関係を持ったティナが言いふらしたらしく、攻略部隊の彼女たち全員と関係を疑われているが・・・実際は違うのだが・・・誰も信じてくれない。


 この世界を離れたら、俺がこのことを墓場まで持っていけばいいだけの話だ。渚佑子の了解も得たのでバレる心配もないだろう。


 ガタッ


 扉の方向で物音がしたので歩み寄って、一気に扉を開くと・・・。


 誰もいなかった。俺の気のせいらしい。


「どうしました?」


「いや、こういうときは決まってローズさんが現れるだろう?」


 今回も裏で糸を引いていると思ったんだがなぁ。少々被害妄想気味になっているのかもしれない。


「お婆さまなら、教皇様のところに行きましたけど・・・。」


 きっとシミ、シワを無くす治癒魔法を掛けてもらいに行ったのだろう。


 もしかして、最後の最後に俺を落とそうと入念に磨いているのかも知れないな。兎に角被害妄想でもいい。今日さえ逃げ切ればいいのだ。


・・・・・・・


 結局、俺は泣き落としに弱いらしい。


 抱き合って眠る彼女たちの幸せそうな表情を見ているとまあいいかという気分になってくる。頑張って明日を乗り切ろうと決意して彼女たちの横に潜り込んだ。




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