第7章-第80話 ぷろぽーず
お読み頂きましてありがとうございます。
「気になるだろ!」
「・・・・・・伯爵も・・・娼館に行ったりするのですか?」
渚佑子が真剣な目つきできいてくる。
「日本でその手の店はお客さんに連れて行かれたことがある。アイツと付き合う前だけどな。軽蔑するか、いや愚問だったな。」
そういえば、そういうことに関しては病的に潔癖症だったよな。でも、嘘をつくのは俺の信条にはずれるしな。
「そうですよね。普通、好きな人がいれば、我慢しますよね。」
ぱあーっと明るい声で答えが返ってきた。どうやら、彼女の琴線には触れなかったようだ。
「ああ、まあそうだな・・・・・・・・・。」
そういえばあんまり我慢したことはないな。鈴江ともそういう関係になるのは早かった。でも、あれは鈴江の性格によるものだったんだよな。そのときの自分のはしゃぎっぷりを思い出して・・・落ち込んでしまう。
「あっごめんなさい。」
余程沈んだ声を出していたのだろうか。謝ってくる、でもこんな時は謝られると逆に辛いんだが・・・。そこのところは人生経験がものを言うのだろう。そういった機微はわからなさそうだ。
「アポロディーナ様が好き!ティナ様が好き!あいつ、何人もの女性にプロポーズしているんですよ。信じられないですよね。」
そんなことを渚佑子に相談していたのか、ヤンデレ神父は、全く地雷踏みまくりだな。
「彼に取ってプロポーズって軽いのかも知れないな。」
しかも忘れているのか、意図して考えないようにしているのか。神父は妻子を持てないんじゃなかっただろうか。それとも、自分だけは例外だと思っているのだろうか。
「まあ、そういうなって。彼は我慢してたから、あんな罠にハマったんじゃないかな。」
彼にとってこの世界は優しくなかった。どんどん追いつめられたことであんな性格になったのだ。そこへ俺はともかく、アポロディーナやティナの優しさに触れ、それを突然取り上げられたら・・・・・・って俺のせいか・・・。
まあ、あのときは借金返済に遁走していたから仕方がない。仕方が無い。半分フォローのつもりで軍曹さんをつけたのが失敗だったかも知れん。
あの人は、女に弱いらしいからな。
「全く男って・・・。」
「あんまり、ひとくくりにしないでくれないか。俺はともかく、世の中にはいろんな男性がいるんだ。そういう奴ばかりじゃ無い。ガイもマシなほうだと思うぞ。」
半ば強制的にハーレムが形成されているが・・・いや、それは言い訳だ。俺は奥さんたちを愛している。ヤンデレ神父とそう大差無い。
まあそんなにプロポーズを連発したら、信用されなくなるだけだ。流石にそこはわかっているだろうヤンデレ神父と言えども・・・。
「ここにずっと我慢している人もいますしね。」
そう言って珍しく腕を組んでくる。彼女もようやく男性に慣れてくれたのかもしれないな。
「それは、ガイがかわいそうだろう。俺は奥さんたちがいるんだ。我慢して当然だ。だが彼には誰も居ないんだ。少しは差し引いて考えてあげようよ。」
「いいんです。あんな奴。私たちが帰ったあと苦労すればいいんだわ。それより、行きましょう。そこの角を曲がったところにありますよ。」
・・・・・・・
俺は曲がり角で間抜けにも硬直する。
そこには、裸で水浴びをする攻略者たちの姿があったからだ。
いや、指輪の『鑑』で確認すると成分的に温泉のようだった。少しぬるそうだったが、ナトリウム温泉のようで、はしゃいだ彼女たちが滑って転びそうになるのを持ち前の運動能力で回避している。
その際に大股を広げて見えてはいけないものが見えている気がするのだが、気のせいということにしておこう。
「あなたたち!何をしているんですか!!」
俺は渚佑子の大きな声に、我に返る。これは事故、事故。思わず凝視していたのを誤魔化すように煩悩を理性で押さえ込み、ムリヤリ視線を逸らす。
「キャー!!」「なになに!」「男よ。」「伯爵よ。」
四方八方から悲鳴がこだまする。




