第7章-第76話 もほうひん
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「ごほうびが欲しいのか?次の空組創設の時の優先権か?」
既にもう一組作るのに十分な数の2軍が育ってきている。あとは各組から実力者を数名引き抜き、その後釜に2軍を充てるつもりだ。
当然彼女たち2軍のトップクラスに所属している彼女たちも各組にバラけて入ってもらうつもりだったのだが・・・。彼女たち4人はいつも仲良く一緒にいるから、新設の組に一緒に配属されたいのかもしれない。
「いえ、それは伯爵が考えてなさることを邪魔するつもりは御座いません。」
決して彼女たちは我侭を言わない。もちろん、事前にある程度確認するがこと攻略組の人事に関しては、指揮系統がしっかりしていないと命に関わることになりかねないので、そう希望ばかり聞いていられないのだ。
「ではなにが欲しいのだ?」
まあ今回の件は勝っても負けても大差は無いから気楽だ。相手は違うだろうが・・・。
「ティナお姉さまを次期組長に!」
「お前たち!」
ティナは、今攻略の準備に取り掛かっている華組のナンバー4だ。面倒見がいいので後輩達の人気は抜群なのだが、魔法陣に関する知識にしても、使える魔法についても、攻撃力としても特筆すべき技量を持っていないため、創設メンバーとして出世は遅いほうになってしまっている。
攻略組のリーダーを何回かやらせてみて、問題ないことはわかっている。むしろ、士気向上という点ではかなり良い線にいっている。
ただ、窮地に陥った際にはリーダーがより強力な技量を持つ場合のほうがリーダーが単独で救出に向かうことが多いダンジョン攻略においては有効になることが多いのも確かなのだ。
華組の準備作業の状況報告を伝えにきたのだろう。今回も彼女にリーダーをさせるつもりだ。
「だそうだ。どうする?」
「それは、伯爵のなさることに従います。」
この従順な態度も後輩たちに受け継がれることで攻略メンバー全体に良い雰囲気を醸し出している。ある意味、かなり貢献度は高い創設メンバーなのだが・・・。
「ううむ。彼女たちの勝負の成果いかんで決められるのは、心元無いだろう。この勝負に大将として勝ってこい!そして、堂々と次期組長の技量を見せ付けてみろ。」
「はっ。わかりました。」
実は各組の組長には、その勤め上げる年月に応じて特典がある。当代だけだが1年以上で士爵位、3年以上で男爵位、5年以上で子爵位がアルテミス国から与えられることになっている。
順調にいけば俺が帰るまでに全ての組長が爵位持ちとなる予定だ。もちろんその爵位に応じた年金も支払われるから、一生食うのに困らないだろう。
・・・・・・・
「ちょっと、待った!その武器はダメだ。」
翌日、彼女たちが訓練所で準備を行っていると元団長が近くまでやってきてそんなことを言い出した。
「別に武器の制限は無かったと思うが・・・、それとも、模造剣で戦うのか?」
それだと双方とも実力が出し切れないと思うが・・・。
「その武器は、お、伯爵が異世界から持ち込んだものだろう?あまりにも、威力が違い過ぎるだろうが・・・。」
とりあえずは、お前と言うのを踏みとどまったようだ。
「ああ、これのことか?これは、1本しかなくてな。彼女たちの持つレイピアは模倣品だ。」
俺は自空間からレイピアを取り出して、無造作に訓練所に置いてあった鎧を付けた案山子に切り付けてみせる。
まるで日本刀で藁を切ったかのように案山子が崩れ落ちていく・・・。
「ほら、調べてみろ。」
俺は声を掛け、ティナの持つレイピアを借り受け、元団長に渡した。
元団長がその剣で、違う案山子に切りつけるが案山子を僅かに傷つけるに留まった。
元々、ティナは片手剣使いだったはずだが、レイピアに興味を持ったのか、俺から構造を聞き出すと攻略部隊専属の鍛冶に作って貰っていた。
たしか、あれが4代目で僅かだがオリハルコン鋼も含まれているはずだ。だから、案山子の鎧を傷つけても、レイピアが傷つくことはないはずだ。
その彼女のファンらしい2軍のトップクラスの4人は揃いも揃ってレイピア使いばかりだ。
「疑ってすまなかった。」
元団長は何度か振ってみて納得したのか。意外にも素直に謝る。まあ、彼女たちに謝らず、俺に向かって言ってるのは、例の男尊女卑のためだろうか。
男としては、信頼をおける振る舞いをできるだけに、残念なヤツだ。
あぶない。
日曜更新分ぎりぎり土曜日の夜23時にできました。
ここ3週は辛かった。
プライベートも仕事も書籍化校正もキャラデザチェックもさらにスランプと・・・。
なんとか乗り切ったので次週からはもっと早く上げられたらと思っています。
誤字脱字指摘よろしくです。




