第6章-第70話 まっさお
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「ん、ん、ン。・・・バカな。」
「どうですか?伯爵。」
目の前でヤンデレ神父が真剣な目つきでうったえてくる。
「旨い。イヤイヤ、ちょっと待て。」
俺は、自空間からメッツバーガーのチーズバーガーを取り出すと食べ比べてみた。・・・そっくりだ。
「どうでしょう。そっくりでしょう?」
特に指示したわけでもなかったのだが、ヤンデレ神父は、ハアデス国でのダンジョン攻略が休みのときは、厨房に籠もってメッツバーガーの商品の再現に精を出していたらしい。
そんなバカな。こんなに簡単に再現できるはずがない。この世界にはマスタードもマヨネーズもケチャップも無かったはずだ。これらをいちから再現しなければ・・・、だが、以前試算したときはこれまで受け取ったダンジョン攻略の報奨金のうち半分以上使わなければいけなかったはずだ。
「いくら、使った。一体幾ら使ったんだ。」
俺のその言葉にヤンデレ神父はビクッとする。
「あのう・・・xxxxxxですが・・・。」
ヤンデレ神父がおずおずと提示してきた額はダンジョン攻略どころか、この組織の総収入の8割以上だった。
「お前の一存で使ったのか?」
空間連結の扉のおかげで収入の目処がついたため、俺はダンジョン攻略に全精力を注ぎ込んでおり、経営にはノータッチだったのだ。
「いえ、メンバーの了承は得ました。」
そう一定以上投資活動を行う際にはメンバーの9割以上の賛成が必要とのルールを作ってあり、普通に考えれば簡単に投資出来ないようにしてあったのだが・・・。
「マヨネーズを作ってみせたところ、メンバー全員の了承を得られました。」
ヤンデレ神父は、えへんと胸を張る。周囲の攻略者たちを見渡す。この中には、マヨラーもいるのだろうな。デブらなきゃいいが・・・。
「特にアポロディーナのお父上からは、多額の資金援助までしていただきました。」
さらに商業ギルドに借金まであるのか?
俺は慌ててアポロディーナを呼びつけ聞いてみると、無利息無催促だという。それは、余計に怖いじゃないか。期限も付けられてはいるがアポロディーナの一存で延長出来るらしい。
ガタッ。
だが、その額を聞いて思わず立ち上がってしまう。このままのペースでダンジョン攻略を進めていけば、俺が帰るまでになんとか返せるそんな額だったのだ。
さらに聞いていくとテリヤキバーガーを作るために醤油の醸造や白砂糖の精製、ポテトにかけるための岩塩発掘調査、などありとあらゆるメニューを再現するために投資が行われていたのだ。
・・・そういえば、コイツは借金で身持ちを崩したのだったな。そんなことをいまさらながらに思い出す。
・・・・・・・
「えっよろしいんですか?」
俺はハアデス国の今や中佐まで登りつめた軍曹さんを呼び出し、ヤンデレ神父が攻略に参加しないときは、軍曹さんの指揮下に置くことに決めた。
「ああ煮るなり焼くなり、ナンパの餌にするなり好きにしろ!こいつが教主になった暁に小遣いをせびってもいいぞ。」
「いくらなんでも、そこまでしませんて。」
「そうか?軍曹時代ならどうだった?」
「それは、こいつを買いたいというどこかの貴婦人にでも売って豪遊ですかね。・・・って、なにを言わせるんですか!」
これでこれ以上の使い込みは防げるだろう。さらにヤンデレ神父がダンジョン攻略で得た収入は、赤貧な生活を送れるだけを残して、全て借金返済にあてることとした。
ローズ婆さんに売り渡せば良いのかもしれないが、俺もそこまで鬼畜では無い。治癒魔法をかける時だけレンタルで貸し出すことにして、とりあえず、貞操だけは守ってやった。
後はこちらに残していく自宅などの資材の資金として残しておいた金と俺個人に支払われた年金にダンジョン攻略の個人的な分け前やローズ婆さんに高額で売りつけた化粧品の代金などを足しても、半分も行かない。
さらにマスタードやケチャップ、マヨネーズの研究を依頼した料理人ギルドに回り込むとこれらの研究過程で多種多様な調味料を生み出していたことに目をつけた俺はそれを商業ギルドに持ち込み、ヤーマダ伯爵ブランドとして、特定の商人と契約書を交わし、なんとか8割の借金を返済できるだけの額を用意することができたのだ。




