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第6章-第69話 ふける

お読み頂きましてありがとうございます。

「皆の気持ちは嬉しいが、去る俺を立ててくれるよりは、利を取ってくれるほうが嬉しい。」


 唯一無二になりつつあるこの組織だが、できることは限られているのだ。独立した組織であることは必要なのだが、各国の協力が無ければ何もできない組織と言ってもかまわないだろう。


 もし国家を超える位置に居るならば、人々はそれを意識するだろうし、期待されるだろう。そして、それが実行できないと解かれば、落胆するだろうし、組織の存在価値さえ瓦解してしまうに違いない。


 すくなくとも、新たなダンジョンが発生するからには、存続していってもらわなくてはならないのだ。


「ですが・・・。」


「今はいいかもしれない。だが、俺が去ったあとも存続していくならば、俺の顔を知らない攻略者も出てくるだろう。そういった人間に取っては必要無い。むしろ邪魔だ。君たちは俺のために存在しているのではない。ダンジョンで困っている人のために存在しているのだ。」


「・・・そうでした。」


「確かにこのところのダンジョン発生率は、凄まじいな。・・・しかたがない、こんな手段は使いたくなかったが・・・。」


 俺は地面に手を付き、自空間から取り出したレイピアで地面を削り取っていく。そしてギリギリ人が通れるだけあけると『フライ』で下に降りる。最下層まで到達すると打ち合わせ通り、ヤンデレ神父と渚佑子が『フライ』に降り立った。


「神父は浄化魔法を、渚佑子は広域火炎魔法だ。」


 ヤンデレ神父が発した濃厚な光魔法を見て、俺は慌てて『フライ』で元の階まで戻った。闇属性の俺には、防げない。きっとやけどでは、済まないに違いない。


 皆のところまで上がってきたところで階下にあけた穴から凄まじい量の光が見えて消えた。浄化の光を広域火炎魔法が隅々まで行き渡らせる。


・・・・・・・


「なによ。こんな手段があるなら、さっさと使いなさいよ!」


「そんなことより、どうだ?ここのダンジョンマスターまで倒せたか?」


 ローズ婆さんは、その場に手を付く。周囲の壁という壁が一瞬、ぐにゃりと揺れたかと思ったら、すぐに元に戻った。


「大丈夫よ。支配下に置いたわ。」


「もしかして、壁を軟体動物のように扱えるのか?」


「そうよ。こんなふうにね。」


 俺のすぐ後ろの壁が俺の身体にめり込む。む、身動きできない。


 ローズ婆さんは、俺に近づいてくるとその手を俺の頬に這わせる。


「目尻のシワが増えているぞ!」


 バッチーン。


 痛っ。しまったな。つい気安く突っ込んでしまった。逆鱗に触れてしまったらしい。


 アルテミス国とポセイドロ国の場合はタルタローネが支配下においているらしく、最近、身体の成長著しいのだ。ローズ婆さんも、どアップで見れば明らかにシワが増えているのが丸わかりだ。


「仕方ないでしょ。支配下に置いた直後はこんなふうになるの!そのうち、中に冒険者が入って来るようになれば、元に戻るわよ。」


 ここに冒険者たちが訪れるようになると、人が排出する澱がダンジョンの支配者の生命力に変換されるのだという。


 各王都の地下ダンジョンも若干だが地上から降り注ぐ澱の受け皿になっており、それが各王の長寿命の源なのだとか。


 俺はこっそり、背中側の壁を空間連結で自宅につなぎ、後ろに動けることを確認して言う。


「すまんな。その大穴があいているから、閉鎖対象だろうな。」


 俺は、そう言い捨て自宅に逃げ込む。


「あーーーーー!!!なんてことしてくれたのよ!通路の組み替えも老けるのよ!!」


 通路の組み替えは出来ても地面の修復はできないらしい。どうやら、この穴をデッドゾーンとして、通路を組み替えることで回避するつもりのようだ。


「大丈夫、大丈夫だ。まだ若い若い!」


 空間連結の穴から覗き込むとそこには、額に青筋を立てたローズ婆さんがこちらを睨んで仁王立ちしていた。怖い怖い。


「ん、もう。こんなときばっかり!キーーーーーー!」


・・・・・・・


 それからのハアデス国でのダンジョン攻略は10階程進んだ後でダンジョンの端っこのデッドゾーンを選び、攻略することでなんとかローズ婆さんの了解を取り付けたことでスピードアップされることになった。


 それでもローズ婆さんはブツブツ言いながら、付いてくるのだった。ローズ婆さんの厚化粧が復活する1年後には、ハアデス国、ポセイドロ国、アルテミス国の新たなダンジョンの8割の攻略完了したのだった。


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