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第6章-第63話 しこうていし

お読み頂きましてありがとうございます。

「それよりも、部隊を動かしているのか?」


「もちろんよ。貴方の大切な人に危害を加えた、奴らですもの。逃しはしないわよ。」


 うっとうしいな。誤解だと言っても、聞いてくれないのだろうな。この婆さんは・・・。


 とにかく、言い訳している時間も惜しい。


 諜報部隊が調べてきた内容に照らし合わせると東北東に小さな子供くらいなら、抜け出ることができる穴があるらしい。どうやら、ソコを基点に、穴を広げて通りぬけるつもりのようだ。


「では、行こう。」


 俺は結界を解除すると、建物の出入り口から出て行く。議長や側近たちも確認のためなのか、後ろからついてくる。


 俺が怖いのか、俺が持つ血がこびりついているレイピアが怖いのか。自然と人の波が割れていく。


 それでも、人々は結果がどうなるか見届けたいのだろう。後ろからついてくるようだ。


 東北東の城壁に到着すると、今まさに切り崩した場所から、荷物を運び出しているところだった。


「これは、どういうことだ!」


 元ギルド長の姿を見つけた議長が男に詰め寄っている。


「いや、私も見つけたので、修復するところだったのです。」


 男は、城壁の外に置かれた土砂を指し示し、言い訳をする。それで議長の追及は止まってしまう。出た後に外側から塞ぐための土砂だろうに悠長なことだ。


 俺は、土砂に隠れるようにおいてある、荷物の前につくと、レイピアを振るう。指輪の『鑑』で確認したとおり、金塊や金貨が出てくる。宝石らしきものまででてきた。


「これはどういうことだ!金を持ち出すには、私の許可が必要なはずだが・・・。」


「知らん!わしは、知らんぞ。わしのモノじゃない。」


 あくまでしらを切り通すつもりのようだ。俺は無言でそれらのモノを自空間に取り込む。賠償金の一部にすればいいだろう。


「では、他の誰かのだな。拾得物として預かっておこう。」


 元ギルド長は、その場にへたり込んでしまう。きっと全財産だったのかもしれないな。


 その時だった。突然、地響きが伝わってきた。音のする方向に視線を向けると遠くの方に土煙があがっており、数千頭はいると思われる魔獣の群れがあらわれたのだ。


「このままだと、この穴から侵入されるぞ。さあどうする。このまま滅んでしまうか?それとも、俺の提案を受け取るかの二択だ。俺は一回滅べばすっきりするとおもうんだがなぁ。この国を思う人間を見捨てた罪は重い。」


 30秒程待っても誰からも返事が無い。この期に及んでまだ他に選択肢がないか考え込んでいるようだ。まあ返事が無いのが回答なのだろう。


 これが間接民主主義の弱点だ。議員を選べば、それで終わりだと思っている。きっと議員たちの説明も碌々聞かずにただ君主制は悪だという思い込みだけで突っ走ったのだろう。だから、肝心なところで思考停止してしまうのだ。


 まあ、日本だとそれを議員がやってくれるから始末が悪い。何十年も前からとりただされてきた議題でも審議に録に出席もせず、説明も受けず、質問もせず、説明不足だとか、審議不足だとか、強行採決とか言っている議員が居る。


 いったい、何年議論を行えば十分なのだろう。結局は嫌な議題を通したくないだけなのだろうに言い訳にしているだけなのだ。


 しかも議会制民主主義の崩壊などとバカなことを言い出す始末だ。間接民主主義と多数決主義は日本の民主主義の根幹であることは子供でも知っているのに・・・。


「じゃあ、ローズさん行くか。」


 俺は彼らに背を向けるとその場に置いて城壁の中へ歩き出す。あの群れがここまで到着するまでに少なくとも5分は余裕がありそうだ。それまでに、アルテミス国の部隊を撤退させる必要がある。


 ようやく、俺が見離したことに気付いたのか、民衆が我先にと悲鳴を上げながら、四方八方に逃げ出した。王宮などの建物ならば、あの群れをやり過ごすことも可能だろうが普通の建物では、ひとたまりもないだろう。


 流石にそこまでは、彼らでも解るらしく大きな建物に殺到して入り口付近で押し合いへし合いを演じている。俺は、ローズ婆さんたちを伴い、ミネルヴァたちが居る王宮へ『移動』した。


 門番をしていたアルテミス国の兵士に王宮の吊り橋を上げるように命じた。


「待って、待ってください!」


 前方からミネルヴァが走ってくる。


「ね、お願いします!彼らを助けてください。お願いします。」


「もう嫌だ。ほとほと愛想が尽きた。さあ帰ろう、君の肉親も確保したぞ。新しい国でやり直せばいいだろう。そのための援助は、惜しまない。」


「本当にお願いします。助けてくれないのなら、この場で死にます!」


 きっと、護身用に持たされたのだろう短剣を自分の首に当てる。ついさっき、ミネルヴァが死んだシーンがフラッシュバックされる。


「ひ、卑怯だぞ。お、お前どれだけ、卑怯なことをしているか、解っているのか?」


「お願いします!どんなことでも、やりますから!私はこの国が好きなんです。滅びて欲しくありません。」


「なんでもすると言ったな。俺のことは聞いているだろう。無茶振りするつもりだからそのつもりでいろよ!」


 もうこれ以上、ミネルヴァが死ぬシーンなど見たくなかった俺は観念することにした。


「解ったから、とにかく、その短剣を離せ。」


「・・・・・離れません。」


 どうやら緊張のため、短剣を握り込みすぎて、手が開けなくなったらしい。俺はミネルヴァに近づき短剣の刃の部分を持つと、わき腹をつついてやった。


「きゃっ。・・・きゃー、伯爵、血が・・・。」


 ミネルヴァが取り落とした短剣を自空間にしまうと指輪を『癒』に変えて念じる。


「ほら、大丈夫だろ。」


 ヤンデレ神父のチートスキルで治ったミネルヴァの首筋と比べると多少歪かもしれないが・・・。

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