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第5章-第55話 しゅうげき

お読み頂きましてありがとうございます。

 そのまま、こっそりとその場を離れた俺たちは、この国の拠点にしている場所に向かう。


「大変だったな。大丈夫だったか?」


 拠点で働く彼女たちはこの国の人間だが、俺の従業員でもある。拠点と自宅を繋ぐ扉を撤去する際に訪れてアルテミス国に移住するように説得したのだが、彼女たちはガンとして聞かなかったのだ。


「ええ、大丈夫でした。この国の人間も解かっているようです。アルテミス国の拠点といえど、ここを襲えば、この国のダンジョン攻略が立ち行かなくなるだろうことが・・・。」


「だが明日、俺は最後通告を伝えに行くつもりだ。そうなれば、首都は混乱状態になるだろう。破れかぶれにここを襲う輩が出ないともかぎらない。とにかく、安全な場所に避難してくれないか。」


「わかりました。ギルドが避難先に指定した場所に行くことにします。ただ、ダンジョン攻略が再開するときは必ず呼び戻してくださいね。」


 彼女たちは逡巡している様子だったがようやく頷いてくれた。この国のダンジョン攻略が遅れれば遅れるほど、その被害は甚大なものとなってきている。自業自得とはいえ、それに心を痛めていることは容易に想像できる。


 この国の行く末を案じる彼女たちにとっては、なにものにも替え難い場所になっているのだろう。俺が約束をすると告げるとようやく安心したのか少し笑顔が戻って来た。


 彼女たちが荷物を持ち帰っていくとこの建物に入れないように周囲を例のコンクリートの壁で覆う。これでも本格的な破壊工作が行われれば、ひとたまりも無いだろうが少なくとも暴徒は防げるだろう。


・・・・・・・


 その後もピリピリとした空気が漂う街の散策を続ける。


 街の商店も各種市場も店主の顔は不安そうだが特に混乱も無く取引が行われている様子だった。


 そのまま、迎賓館に戻ると情報収集の諜報部隊が戻ってきていた。ローズ婆さんも一緒だ。


 元々、この国の地下組織に旧王族派に組する人間たちが居り、そこから情報収集してきたらしい。


 それによると意外なことにハアデス国に向かうと目された部隊が周辺の村々に発生していた魔獣の対応に追われているらしい。


 まさか、俺が首都に現れたから方針を転換した?


 それにしては、情報伝達が早すぎる。


 この国の情報伝達手段で一番早い馬でも首都から1昼夜掛けたところ辺りに居たはずだ。戻って来る時間を加味すると俺たちが掴んでいた場所から反転したとしか思えないところで活動しているらしい。


・・・・・・・


「あれっ。なによこれ。」


 俺が寝室で寝ていると思った通りの人物が夜這いに現れたようだ。俺は、LEDランタンとスマホを取り出し電源を付ける。


「やはり、来ましたか薔薇姫。」


 万が一のために扉の前に配置していた近衛兵も何らかの手段を使って、かわして通り抜けてきたようだ。


 当然ながら、就寝後1時間は例の紐パンの守護域であり、さらに指輪も『守』にしてあるので何も知らないうちに殺されることは無いだろう。


 俺は、ようやく電源の入ったスマホの動画撮影を開始しながら問いかけた。


「なんで、こんなに明るいの?」


「それは、貴女の美しい顔が良く見えるようにですね。」


 本当は違う。こんな夜中に厚化粧のままでは美容に良くない。実際におやすみの挨拶をしたときは、暗がりの中、薄めの化粧を施した状態だった。


 だから、もし夜這いに来るなら、それはスッピン状態に近いのでは無いかと思ったのである。


 その考えはドンピシャだったようでLEDランタンに映し出された顔には化粧は無く、ひたすら光り輝くランタンに目を細めている様子がスマホに映し出されている。


「きゃあ・・・み、見ないで・・・。」


 ようやく光が目に馴染んできたのか。ローズ婆さんは自分の顔を手で覆い隠す。


 だがそこにあった顔は意外にも40代くらいの女性で老人特有の深く刻まれた皺も40歳くらいに頬の上辺りに現れる肝斑らしきシミを除くとシミもほとんど見えない。


 俺は自分の目を疑い、その手を掴み強引に開かせる。


「やっ、やめて。」


 マジマジとその顔を見てみるがやはり、幸子の若干上の年齢にしか見えない。そんな厚化粧で覆い隠さなくても良いくらいの美熟女と呼んでも支障が無い女性が佇んでいた。


「なぜ?その綺麗な顔を化粧で覆い隠す。なあ、渚佑子。そう思わないか?」


 いつのまにか、駆けつけてきていた。渚佑子に問いかける。


「ええ、189歳にしては若い・・・若過ぎです。なんなのですかこの女性は・・・人族・・・ですよね。」


 渚佑子は『鑑定』スキルでローズ婆さんの情報を読み取りつつ、質問で返してくる。


「王族だから・・・なんだろうな。長寿だと聞いているから・・・。」


 俺は彼女の手を離し、スマホの映像を見せながら、2度と夜這いを掛けないことを約束させると素直に頷いた。余程、素顔を他人に見られたくなかったらしい。


 そのうち、可愛らしい声で泣き出す始末。襲われたのはこちらだというのに物凄く悪者になった気分だ。


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