表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
218/563

第5章-第52話 少女B

お読み頂きましてありがとうございます。


「ベル!お、お前。」


 何も知らされていなかったのだろう。メルハンデスがその女性を見た途端に固まってしまった。


「伯爵様。私、諜報部統括のベル・ローズ・クリスティーヌと申します。そして、ここに居るメルハンデスの家内でございます。お見知りおきくださいませ。」


 この女性はポセイドロに向かう随員として派遣されてきた筈だが、メルハンデスの奥方なのか?


 それにしては随分と若い。きっと後妻さんだな。幸子くらいかな。


「伯爵、お婆様はね、当代随一の諜報員と呼ばれた人でね。情報収集から謀略、破壊工作までありとあらゆる諜報活動のスペシャリストなのよ。」


 そんな人物が居るのに俺が行かなくてはいけないのだろうか。


「お前・・・引退したはず・・・いや、させた。約束してくれたのじゃなかったのか?」


「それは貴方が、信頼してくれている方たちを騙さないと言ったからでしょう。今回の件、聞きましたわよ。」


「そ、それは・・・。」


「だから、これはお仕置きなの。それに。こんなに素敵な殿方とは思わなかったわ。誘惑してみても良いかしらね。」


 そう言いながら、腕を絡ませてくる。


「お婆様!」


「常日頃から言っているでしょ。ローズと言いなさいアポロディーナ。」


 硬い。押しつけられた胸が硬いのだ。さつきのような、筋肉の固まりなのだろう。年齢以上の若々しさを保つために鍛え上げているのだろう。幸子からにさらに弾力が無いような柔らかさを想像していた俺は、頭がスッと冷える。


 そういえば、胸元までキメの細かい素肌に見えるが首の襟足部分をそれとなく見ると境目くっきりとできている、相当な厚化粧のようだ。きっとこの顔の下には幸子よりも凄いスッピンが隠されているのだろう。


「貴女が、あの薔薇姫ですか。お噂はかねがね。」


 俺は腕を振り払う代わりに『移動』で抜け出す。噂で聞いた薔薇姫は、クーデターで王政が廃止された先代の国王の娘で、その時代にもあったクーデター騒ぎをひとりでぶっ潰したというものだ。


 今回のクーデターが成功したのも、薔薇姫がアルテミス国に嫁いで来たからだというものだった。ということは少なくとも60歳は越えていそうだ。


「「「えっ!」」」


 ローズさんはわかるがメルハンデスとアポロディーナまで驚きの声を上げている。


 それは、きっともうひとつの噂のせいなのだろう。それは狙った男は落とせなかったことは無いというもので、ことごとく骨抜きにされるというものだった。


 そういう俺も、あの幸子の別人と言っても過言で無い化粧や誘惑の猛攻撃をくぐり抜けなければ、同じように落とされていたかもしれない。幸子さまさまだ。


「噂通りの鈍感さんなのかしら。まあいいわ。しばらく一緒に行動することになりそうだし。ポセイドロ国は私の本拠地、いくらでも手段がある。」


 面倒くさい人間を連れて行かねばならないようだ。それがメルハンデスへの意趣返しになるのだったら、まあ良いか。ベタ惚れなのだろう。今もローズ婆さんの顔色を窺いながらも睨みつけてくるのだ。


 いつの間に近寄って来たのか、またしてもローズ婆さんに腕を絡ませられてしまう。どうも、隠密としての訓練も受けているようだ。それ程、全く音がしなかったのだ。


 まあ、使える手駒が増えたと思っておけばいいか。マイヤーみたいに外見上16歳とかならまだしも本物の婆さんに手を出す気は無い。


 ただまあ、しばらくの間、気を抜かず例の紐パンにMPを投入し続ければいいだけだ。どのみち、敵の本拠地に向かうのだから、その必要があったことには代わりがない。


「「離れて!」」


 そこへ、ローズ婆さんの腕を強引に外して渚佑子とアポロディーナが割り込んでくる。


「なに?私に張り合おうって言うつもり?告白もできないお子ちゃまと・・・本物のお子ちゃまか・・・全く勝負にならないわね。」


 全くその通り、このメンバーなら渚佑子やアポロディーナの方が何倍も好きだ。


「バカバカしい。行くぞ渚佑子!」


 俺はギルドの壁に空間連結の扉を貼り付ける。行き先は旧王宮の一室だ。ここは、ポセイドロ国での事前打ち合わせで滞在した場所だ。


 聞いた話では、ここは政治の舞台として使われておらず、すぐ隣の日本の国会議事堂のような建物を使用しているということだった。


 この国の政治形態は特殊で一応民主主義を標榜しているがクーデターの際に市民に手を貸した貴族たちが議員の半数を占め、重要な役職を全て握っているらしい。


 議長役の議員だけはクーデターを起こした市民のリーダーが担っているため、人気を保っているのだという。


 そのリーダーも裏では貴族たちに繋がっており、傀儡同然だという。


 俺は、ゆっくりと扉を開け、中をのぞき込む。誰も居ない。


「よし!行こう。」


 ローズ婆さんの話では、アルテミス国内で諜報活動できる隙は無く、ポセイドロ国の中枢部は、俺がハアデス国のダンジョンに潜ったままだと思っているらしい。


 全員がこちら側に渡ってきたのを確認して、扉を回収する。この扉が相手に知られ、逆に敵がアルテミス国に渡ってこられては、適わないからだ。


 もちろん、自宅とポセイドロ国の拠点をつなぐ扉も回収済みだ。


パリス、マイヤーを筆頭に年寄りが多いなあ。

外見は皆若いからイラストになっても気付かれないでしょうけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】「ガチャを途中で放棄したら異世界転生できませんでした」
https://ncode.syosetu.com/n4553hc/
もよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ