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第4章-第50話 おとしあな

お読み頂きましてありがとうございます。

「しかし!」


「それに教団の後ろ盾もあるのだから、裏から手を回してくれるなら良いのだが、君にそんな真似ができるとは思えない。」


 まず、『正義』の制約にひっかかりそうだ。


「ぐぬぬっ。」


「だから大人しく、ここで待機していてもらえないだろうか?」


 俺は頭を下げる。ヤンデレ神父は唸っている。この時こそ、『正義』の使いどころだと思っているのだろう。その間中、頭を下げ続けると、唸り声は聞こえなくなったようだ。


「わかった。ここで大人しくしておいてやるよ。ただ教会に働きかけるくらいはいいだろ!」


 やっとわかってもらえたようだ。


「ああそこは、是非お願いしたい。但し表面上、君が動いていることはバレないように。」


「わかっているって、国際問題に発展するっていうんだろ!」


 いまいち不安だが、下手を打たないことを祈るしかなさそうだ。これ以上言って、ゴネられても面倒だ。


「私が責任を持って面倒を見ますから、クリスティーのことをよろしくお願いします。」


 そうか。この娘はクリスティーの近くにいた。ティナという娘だったな。どうも、俺の困惑している表情が表に出てしまっていたようだ。


「ああティナ、お願いするよ。」


「さあ、ぼうや、こっちにいらっしゃい。」


 アポロディーナの時も思ったがヤンデレ神父には姉属性があるらしく素直に従っている。彼女に任せておけば大丈夫だろう。


 まずは陛下のところからだな。こんな時にギルドに居るはずも無いが一応確認してみよう。


・・・・・・・


「ギルド長、なにをしておいでです?」


 まさか本当に居るとは・・・。


「いやあ、クリスティーがおらんと仕事が溜まってしまってなあ。」


 どうやら、クリスティーがダンジョン攻略部隊に配属されても、これまでと同様に仕事をさせていたようだ。


「これを気に普段からクリスティーにやらせずにご自分でなされば良いのに・・・。」


 何の弱味を握られているかだいたいの想像はつくが公私の切り分けはしっかりしてほしいものだ。


「何か言ったか。」


「それで、どこまで介入しましょうか?」


 おそらく、俺と渚佑子が介入すれば叩き潰すことは容易いだろう。しかし、それでポセイドロ国のダンジョンの被害が拡大したのでは意味が無い。


 ポセイドロ国に与える被害をいかに少なくして国家の中枢をひっくり返すことができるか。そこが問題だ。


「念のため、お聞きしますが、こんなところでのんびりされているということは、うちの攻略者たちは無事なのですね?」


「もちろんなのじゃ。拘束する際に2・3人の怪我人が出たが・・・うぅん。な・・・何を怒っているんじゃ!」


 そこで突然、後ろから渚佑子に羽交い締めにされた。


「ダメです。伯爵は本人は無頓着だけど周囲の人間に被害が及ぶと途端に沸点が低くなるんですから。」


「離せ!」


 抵抗するとアポロディーナまで抱きついてくる。


「落ち着いてください。」


「これが落ち着いていられるか。あのSクラスの冒険者並みの娘たちが怪我をしているんだぞ!向こうはどれだけ被害が出ているか計り知れない。そんな男たちの中で拘束されているんだぞ!」


「大丈夫だ。拘束するのに攻略者たちの5倍の人数を投入して、かろうじて拘束できたらしいが、8割以上が再起不能なのじゃ。そんな娘たちにさらに暴力を振るおうという男はおらんじゃろうて。」


「しかし!」


「しかも、再起不能の半分は不埒な真似をしたのか股関を蹴り上げられて、男としても再起不能だそうだ。」


 俺は思わず股関を押さえる。それはなんとも痛そうだ。


「ポセイドロ軍も大丈夫だ。お前さんが万が一、魔獣大暴走が始まった時のために作ってくれた仕掛けを開放したのじゃから。」


 そう俺たちがハアデス国に向かうときに一番心配だったのは、ダンジョン攻略中にアルテミス国の王都で魔獣が暴走しないかということだった。


 俺はそのために袋小路にある王都に続く道にある軍駐在の周囲で一番狭いところに街道の道幅ギリギリを残し練習用ダンジョンを作り上げたのだ。


 しかも道の所々に溜め池の落とし穴まで設置したのだ。ちょうど裏が練習場の食堂やトイレがあり、汚水が流れ込む。それが何度かのろ過を経て川に流れ込むのだが、普段は例のコンクリートで蓋がしてあるのだが・・・。その仕掛けを開放したという。


「先頭の数十の重騎士たちが見事に引っ掛かったのじゃよ。」


 溜め池と言っても深さ100メートルくらい掘り下げ、コンクリートで補強してあるから、装備が無くても上がってこれないだろう。それが重騎士なのだ。沈んでいくに違いない。異臭がする溜め池に落ちて、どんな気分だったのだろうな。


「そうするとあの仕掛けも?」


「動いたとも。あれってどうなっているのじゃろうな。池の手前で元の位置に戻っていきよったのじゃが?」


 あの仕掛けとは、なんてことはないダンジョンにあった転がる大玉のことだ。溜め池に落ちなかった魔獣をひき殺すか、池に追い落とすために設置したのだ。軽装の騎士なら踏みつぶされるよりも溜め池に落ちることを選んだに違いない。


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