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第4章-第45話 はきだす

お読み頂きましてありがとうございます。

「トム伯爵が聞いてるんだよ。さっさと教えな。・・・ふーん、『正義』か。中二病かよ似合わないものを選択したもんね。それじゃ光魔法しか使えないじゃないか。しかも、正義にそぐわない行動はできないのかい。」


 どうやら、渚佑子が『鑑定』スキル使ったらしい。ユニークスキルが『正義』で光魔法特化型の魔術師らしい。


 先程、女性たちに好き放題にやられていたのは、やり返すことが彼の中の正義に反することだったらしい。


「なんで、ソレを・・・。」


「お前と同じで神からスキルを貰っているからね。ホラ特別に見せてやるよ。『鑑定』スキルを使いな。」


 一応、勇者同士でもスキルを隠すことができるらしい。


「ズルイ!なんで、ユニークスキルを3つも持っているんだ?」


「なんでも、いいじゃないか。それだけのスキルを持っていれば十分だ。トム伯爵のお役に立ちな。それとも、ここで嬲り殺されたいのかい?」


「待ってくれ。なんでもやるから・・・。お願いします。助けてください。」


 途中から彼の口調が変わる。これが元々の口調のようだ。それはそうか、転生の際に『正義』だなんてスキルを選んでしまうくらいなのだ。


「彼女はね。これが3回目の召喚なんだ。その度に苦労しているんだ。決してズルくはないぞ。」


 俺はズルイと言われた渚佑子を庇った。


「こんなことが人生に何回も起こるのですか・・・嘘でしょ・・・もしかして俺にも・・・。貴方も召喚されたのですか?それにしては・・・勇者の称号は無い。」


「ああ、巻き込まれたんだが俺はこの世界と同じように魔法の使える世界出身なんだ。そのせいで神に一切の援助を受けられなかったんだ。」


「酷い・・・。そんな酷いことってあるんですね。なら、僕のほうがましかも・・・。」


 彼はやはり転生者だった。


 ある災害に巻き込まれて若くして死んだせいで、特別にこちらの世界に転生を許されたそうだ。


 だが、その時に選んだ『正義』というスキルのため、チートな能力を得て貴族の子供に生まれたものの。その制限ゆえ、日本の知識で始めた商売が悉く失敗し、借金を抱え込んでしまったようだ。


 そして、そのチート能力に目を付けていた教会にその借金のため、身売り同然で囲われてしまったということだった。


 偶々、その能力に目を付けていた司教が若死にしたため、自ら志願してこの辺境の神父として赴任してきたそうだ。


 その話を淡々とする中の『囲われた』という部分で目をそらしたところを見るとかなり、酷い扱いを受けたらしいことが伺える。


 宗教という中でも一部のことだろうが、全く何故、そんな酷いことができるのか・・・。アルメリア教といい、某原理主義者といい・・・。


「アポロディーナ・・・。」


 隣で話を聞いていたアポロディーナがいきなり彼をギュっと抱きしめたのだ。


「ほら、泣け!みんな吐き出してしまえ。」


 おそらくアポロディーナが言いたかったであろうことを伝える。彼には見えていないだろうがアポロディーナは真っ赤な顔をしている。とても、言葉に出来る様子は無いようなのだ。


 彼は、始め泣き笑いのような表情を浮かべると静かに泣き出す。10分くらい経過しただろうか、ようやく泣きやんだ彼が真っ赤になっている。


 どうやら女性に抱きしめられ、いろんな感触がいろいろと刺激されているようだ。


「アポロディーナ・・・もういい。離してやりなさい。」


 2人して真っ赤になって抱きあっている姿は笑えるが我慢して告げた。


「はい。」


 アポロディーナは彼を放すといつもの表情に戻った。


「君を必ず引き取ってやるから、安心していい。だがダンジョン攻略は手伝ってもらうからな。アルテミス国にダンジョン攻略のための組織を立ち上げているんだ。そこで働けばいい、待遇はいいぞ。周囲は綺麗なお姉さまたちばかりだしな。日本の食べ物も売る予定だ。」


 そう言って、彼にメッツのハンバーガーセットを渡す。


 彼は思いっきりハンバーガーセットを凝視していたが、徐に包装紙を開けるとまた涙をポロポロと零しながら食べ出す。


「これっ・・・これ・・・。」


 長く食べられなかった故郷の食べ物に、感動で言葉にできない様子だった。


「ああ将来的には、この国の羊肉やこの世界の材料を使ったものを売るつもりだ。その時には、君が覚えているその味が役に立つはずだ。」


 そう言って、彼の肩を叩く。


「はい!」


 彼は腕で涙を擦り取り、笑顔で返事をしてくれた。


「なになに、どうしたの。珍しく明るい顔してるじゃん。可愛いんだから、いつも笑顔でいなさいよね。」


 そこに軍曹さんが割り込んでくる。


 面倒見がいい彼のことだ。いつも暗い顔をしている彼を励ますために、ちょっかいを出していたのかもしれない。


「う・・・うるせえよ。寄って来るなって、言ってるだろ。」


「君のお母さんは幾つだい?きっと若いんだろうね。」


「お前、俺のお袋に手を出そうというのか?」


 いつも暗い顔をしている彼を励ますために・・・は、無理があるか。

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