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第4章-第42話 ぼうそう

お読み頂きましてありがとうございます。

 それからは、サクサクと攻略・・・できたらよかったのだが、そうも行かない。2箇所目は挑むこと5度目でやっと攻略し、3箇所目は4度目だ。


 少しは進歩していると思いたいところだが、ようやく全員が地下50階のモンスターにすんなり勝てるレベルになっただけだ。


 タルタローネから聞いた情報によると、最大で地下100階まであるというからまだまだのようだ。


 それも仕方が無い。極力攻略者に犠牲者を出さないことを最優先にしているためだ。これまで誰一人として蘇生魔法の厄介になったものは居ないのが自慢したいところだ。


 だが、国内の貴族たちのから突き上げも凄いが他国からの要請に伴う被害の報告が日増しに深刻度を増している。


 元々、アルテミス国では騒動になるほど、魔獣が暴れているという話も無いことから、ハアデス国を1箇所攻略しに行くことが決定した。


 その後、ポセイドロ国、ハアデス国、ポセイドロ国という順番だという。


・・・・・・・


 ハアデス国のモンスターは厄介だ。今回攻略する場所を事前調査したところ、スケルトンとスライムという組み合わせだったらしいのだ。


 どちらも闇の生物なのでミスリル系の武器以外は威力半減する。しかも渚佑子の掛ける支援魔法もろくに効かないのが厄介だ。ミスリル製の弾丸もあることはあるが、数が限りあるのでスライム相手に無駄弾を撃ちたくない。


 そこでクロスボウの出番となった。これはチバラギ国右軍に納入予定の武器でおよそ50丁のクロスボウとミスリル製の矢尻を備えた矢が10000本ほどあるのだ。他にもオリハルコン製の矢尻を備えた矢もあるが出番はなさそうだ。


 矢は再利用可能なので攻撃魔法代わりに使うつもりだ。


 この場で一番強いのは光魔法の使えるアポロディーナかもしれない。


・・・・・・・


 自宅とハアデス国の拠点とは、空間連結の扉で繋がっているが攻略部隊がいきなり大挙して押しかければ、侵略行為と間違われてしまうということもあり、竜馬車での移動となった。


 竜馬車は、その馬力が馬とは格段に違うため、山道が多いハアデス国に向かうのに最適なのである。


 本来は一部の大商人か上級貴族しか所有してないそうなのだが、今回特別に俺たちとその護衛にアルテミス国所有の3台とハアデス国所有の6台、あわせて9台の竜馬車をお借りすることができた。


 24名の攻略部隊の内、リーダーアポロディーナの精鋭部隊12名が担当だ。あとは、俺と渚佑子が補佐として付いていく。本当は俺1人でいいと言ったのだがどうしても渚佑子が付いてくると聞かなかったのだ。


 残り12名とリーダークリスティは、タルタローネたちと共にアルテミス国内に待機となった。もしかすると魔獣が暴れ出して緊急に攻略しなくてはいけないダンジョンが出る可能性もあるためだ。


「しかし、のどかだね。」


「ええ、のどかですね。心洗われるって、こんな感じかな。」


 俺と渚佑子は竜に騎乗できないため、2人で馬車の中で揺られている。意外にもアポロディーナは騎乗できるので部隊の先頭で指揮を取っている。


 まるで、昔のアルプスのアニメに出てくるような場所だ。街に到着すれば、地味な服を着て、眼鏡を掛けたマイヤーが登場してくるかも知れない。


 渚佑子とそんな下らない冗談を言いながら乗っている。もしかすると、ジェネレーションギャップがあるかもと思ったが、彼女の子供の頃にも、夏休みの早朝に再放送していたらしい。


 遠くのほうでは、羊だか山羊だかわからないがのどかすぎる鳴き声が聞こえてくる。同乗してくれたこの国出身の攻略者はあと3ヶ月もすると冬になり雪に閉ざされてしまうという。


 それもあって、雪に閉ざされる前にこの国のダンジョンを1つでも2つでも早く攻略してほしいということだった。


・・・・・・・


 突然、竜馬車の進行が止まる。何ががあったのかと、馬車を降り先頭のアポロディーナのところに向かう。


「何があった?」


「こちら、アルテミス国攻略部隊、最高顧問のトム伯爵だ。もう一度説明致せ!」


 その場には、数名の傷ついた兵士たちが横たわっており、そして目の前にはおそらく指揮官であろうと思われる重装備の騎士が片腕を失った状態で跪いている。


「渚佑子、あれは治せないのか?」


 後ろを振り向いて聞いてみるが、彼女は首を振るばかりだった。彼女の『知識』を持ってしても、この世界に部位欠損を再生する魔法は存在しないらしい。


 使い手が限られる蘇生魔法さえ、本人の記憶を失うというペナルティが必要な世界なのだ。本人にペナルティ無しに治癒できることには限界があるみたいだ。


 渚佑子はその騎士に傷口の手当のみを行い、周囲に居る兵士たちの治療に当たっている。


「これは、かたじけない。」


 俺の世界なら、部位欠損も再生できるのに目の前の騎士は傷口の治療だけで深々とお礼を言ってくれた。なにか本当に申し訳ない限りだ。


「それで、何があったのだ。これは、いったい。」


「はっ、申し上げます。この先の山肌に突如としてダンジョンの入り口らしきものが3つ発見、そのせいなのか、数百頭の魔獣が暴れております。至急退避願います。」


「渚佑子!聞いたか。俺たちの出番のようだ。付いてこい!」


「はっ。」


 渚佑子はその場で大きく返事をした。


「アポロディーナは、この人に道案内をお願いして攻略部隊を退避させよ。」


「ですが・・・。」


 アポロディーナも付いて来たい様子だったが、俺たちが魔獣を討伐後、ダンジョンを攻略してもらう必要がある。今は引くべき時だ。


「誰一人と怪我人を出しては許さぬぞ。待っておれ、必ず、見せ場を用意してやるからな。」


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