第4章-第40話 少女T
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「むむ、お主はクロナスの血筋のようだ。」
この発言に陛下、いやアンド氏が動揺し出す、いきなり、国王であろうと名指しされたのだと思ったのだろうがアンド氏がクロナス皇帝の血筋であっても不思議は無いのだが、気付いていないらしい。
ここで変なことをつぶやかれて、おかしなことにならないうちに助け舟を出すことにする。
「そうです。アンド氏は陛下のまたいとこです。クロナス皇帝の血筋で間違いない。そうですね、ギルド長?」
「・・・・・ごほん、・・・ああ、そうだ。わしは陛下のまたいとこのアンド・レ・クリスだ。なぜ、わかったのじゃ?」
「クロナス皇帝によく似ておいででしたので・・・。懐かしいですわ。失礼致しました。私、タルタローネと申します。」
そこでなぜか彼女の口調が変わる。王族と知って、態度を改めたのか?
「タルタローネ・・・ってもしかして、クロノス皇帝の最後の娘・・・なんて・・そんな馬鹿な。あの方は、謀反の罪でクロノス皇帝の手で帝都の地下に幽閉されたという。」
おいおい。それって、この場で喋っていい内容なのか?
「意外とお詳しいのね。当時、極秘事項で一切記録には残っていないはずだけど。」
「・・あ、直系に伝わる文書を見・・陛下に見せて頂いたことが・・・あるのじゃ。」
やっぱり、危ないな。陛下とアンド氏のキャラクターがごちゃまぜ状態だ。
「詳しいところは、あちらの会議室でお聞きしましょう。」
普段、訓練の際にクリスティ、アポロディーナ、渚佑子と俺で話し合いを行っている会議室にアンド氏とタルタローネを連れ込む。
「そうね。いいわ話してあげましょう。ミンティーはここで待機しなさい!」
彼?は従者扱いなのか、会議室の扉のところで待つように命じた。
全く、危ないな。攻略者の彼女たちを信用しないわけではないが・・・広まっては不味いことだろうに・・・。
彼女が言うには、当時クロナス皇帝から次代のゼススに権力が移行しだした時でそのゼススの能力を上回る潜在能力を持つ、子供が彼女だったそうだ。
一計を案じたクロナス皇帝は、彼女の存在をひた隠しに隠し続けたそうだったが、結局は見つかってしまい。それが逆に謀反の疑いに発展してしまったそうだ。
ゼススの追及をかわすために、彼女は名目上、帝都の地下に幽閉されることになったが、実際にはダンジョンの最深部に住居を移した結果、モンスター化、元々持っていた能力でダンジョンマスターの座にまで登りつめたそうだ。
「お父様は解ってらしたのね。ダンジョンでモンスター化するのが唯一生き残る方法だと。」
「だからなんじゃな。クロナス皇帝が最後に出した勅命がダンジョンを攻略するべからず・・・だったのは!」
ふむふむと頷くアンド氏に・・・。
「お父様!」
うっとりとそのアンド氏を見つめるタルタローネ・・・。
あのう、勝手に盛り上がらないで頂きたいなあ。すこし置いてきぼり感を感じた俺は視線で訴える。
「そうだったわね。ダンジョン攻略のお手伝いだったわね。解ったわ。新興勢力をこの機に叩き潰しましょう。」
「えっ、お仲間じゃなかったんですか?」
突然の心変わりにアポロディーナが驚いた様子を見せる。
「直系の子孫の頼みでは、断れないであろう。ましてや国王の頼みではな。」
タルタローネがニヤリと幼女とは思えない笑みを零した。咄嗟に俺は、アンド氏とタルタローネの間に立ちはだかり、渚佑子はアンド氏を庇う。クリスティも剣を抜こうとしたところを見ると知っていたようだ。
「えっ・・・・・・、エーーーーっ・・・・・・。」
ひとりついていけないアポロディーナは、俺たちの行動の様子を見て、やっと理解したようだ。
あんなに普段から陛下の近くにいたのに知らなかったかよ。
「心配しなくても、ダンジョンの外なら、ただの少女よ。それにお父様によく似たこの人の頼みでは、断れないわ。」
先ほどの笑みはとても、ただの少女とは思えないが・・・。
「そうじゃ。ではアルテミス国王としてお願いする。ダンジョン攻略を手伝って下され。」
陛下がタルタローネに近づき、正式に依頼をした。
「はい!」
タルタローネが何の含みも無い満面の笑顔で返事している。どうやらファザコンのようだ。そこでやっと緊張を解く。
・・・・・・・
結局、このダンジョン攻略は、失敗したと発表され、ダンジョンの入り口は堅く閉ざされることとなった。
Aクラス冒険者たちや一部の貴族からは、イヤミを頂戴したが全員が生き残り、強力な助っ人を得たのだ。100点以上の出来だろう。
本当は待機組を連れてダンジョンに入りたいところだが、助っ人を得る条件では、仕方が無い。
タルタローネの住まいは、王宮の一室ということになっているが、その部屋と彼女のダンジョンの地下25階を繋ぐ空間連結の扉を設置した。例の聖水の使用許諾を条件に俺が設置したのだ。
彼女は一定期間ごとにダンジョンに戻らないと衰弱してしまうらしいのだ。




