第3章-第16話 俺は魔法使い?
お読み頂きましてありがとうございます。
「アルミの件なのですが、30万Gで買取させて頂きますがよろしかったでしょうか。」
大体、想定どおりかな。貴金属買取ショップでも、大体5分の3くらいなんだよな。
「はい。それでお願いします。」
俺は30万Gとネックレスを受け取るとその場を後にした。
・・・・・・・・・・
俺は王宮まで戻り、スクーターを置くと店の扉をあける。
むわっとした空気だ。本当は人を雇って毎日店を開店させられるようにしなくては・・・。夏場になったら商品がダメになりそうだ。でも、信用ができて100円ショップの知識がある人物なんて異世界にはいない。どうしたものか。
とりあえず、換気扇代わりに持ってきた扇風機を回した。しばらくすると、淀んだ空気が抜けた。これでよし。そのまま、大家さんの居る隣の店に行く。
「こんにちは。」
「やあ、どうされました。」
「あのですね。店は今は7日に1回しか開いていないのですが、あとの5日、店の換気をお願いしたいのですが・・・。」
「ああ、そんなこと、かまわないよ。こっちの店を閉める前でいいよね。」
「説明したいのできて頂けますか?」
「はい?はあ」
俺は、店に連れて行き、扇風機の使い方を教えた。
「へえ、涼しいのね。これって売り物?」
「いえ備品ですが、大家さんが欲しいのでしたら、レンタルすることもできますよ。」
「いいわね。いくらなのかしら。」
「はい、月2000Gって所です。」
アタッシュケース型太陽電池と扇風機だから、本当はもっと高く設定するべきなのだろうけど・・・。大家さんには、これから世話になる。これくらいの金額が妥当だろう。
「うーん、高いわね。でも、この魅力には勝てそうにないわ。」
それはそうだろう店舗の家賃の2倍だ。だが大家さんの嬉しそうな顔を見ていると商品を引っ込めるわけにもいかない。
この国で初めて扇風機を使うのだ。セイヤさえまだ使っていない。まあ、欲しがりそうではあるが・・・。
「どこに設置します?」
「どこにでも設置できるの?」
「はい。良く日の当たるところから、10メートル以内なら・・・。」
大家さんのところは3階建てだ。3階のベランダにアタッシュケース型太陽電池を設置し、3階の寝室に扇風機を設置した。こちらにも熱帯夜があるんだそうだ。
・・・・・・・
「これ何ですか?」
寝室に額縁に入れられた黒い袋が飾ってあった。
「ああ、これ?入れたものが腐敗しない袋。オークションで落札したまでは、良かったんだけど肝心の呪文が解析できないように塗りつぶしてあったんだよね。どうやら勇者の一行が作った代物らしくて、偶にこうやって拡散しないようにした魔道具が残っているのよ。」
勇者の一行というのは、過去に日本から転生し当時の魔王を倒した人々らしいとセイヤから聞いている。どうやら、社会構造を壊してしまうようなモノを残していくことに躊躇いがあったみたいだ。
この国にチバラギだなんて、ふざけた名前を付けたのも彼ららしいが・・・。
「へえ、幾らくらいするものなんですか?」
「100万Gだったかな。でも、50KGまでしか入らないのよ。出入りの商人に売ろうとしたけど、氷の魔法が使える魔術師を雇ったほうが効率がいいって買って貰えなかったわ。なに欲しいの?」
「あればいいかなと思ったけど、100万Gじゃあな。」
何が何でも必要というわけでは無い。今のところ生鮮品を扱うつもりも無い。
「みんな、そう言うのよね。じゃあ80万Gでどう?売れないものをいつまでも残してもムダだからね。」
「うーん、どうしようかな・・・「じゃ、75万G」・・買った!」
生ものが扱えるのは大きいな。
「あと、これなんかどうかな。当人しか扱えない袋を開発したの。」
どうも、月2000Gのレンタル料が負担になっているらしい。いろいろと売りつけるつもりのようだ。
「へえ、どうやっても他人には扱えないのですか?」
「そうね。でも、私は扱えるけどね。そうしないと確認できないから・・・。」
「そうすると、もし奪われたりした場合でも出せないわけですね。」
「そういうことになるね。完全にというわけでもないのがネックなんだけど。」
「というと?」
「まあ私も命が危険に晒されてまで、それを守るつもりはないから。そのときは、袋の代金+アルファくらいは返すよ。どう?」
「幾らですか?」
「30KG入れの袋で60万Gだよ。」
「意外と安いんですね。」
「うん。開発したはいいけど意外と売れなくてね。やっぱり、転売できないのが売れない原因かな。」
「そういえば、そうですね。親から子へと受け継ぐこともできないか。よっぽど、貴重品を入れないかぎり必要ないか。現金はギルドに預けれますしね。」
「幾らなら買うかな?」
「そうですね。40万Gくらいですかね。」
「うーん、よし売った。これで新しい商品開発ができる。ありがとね。」
「いえいえ。こちらこそ、ありがとうございます。」
・・・・・・・
後宮に戻ると魔法の訓練だ。これで俺も魔法使いだ。と喜んでいるところをいきなり希望を打ち砕かれた。なんと日本ではMPの自然回復がほとんどしないそうだ。セイヤから貰った指輪には、MPを入れるタンクがついていて、こちらの世界に居る間に自動的に俺のMPから投入されるらしい。
「まずは、この玉の上に手を翳してください。・・・・ほうやはり、お血筋だ。職業は魔術師が選ばれている。しかも、レベル3だ。おそらく、幼子のころに簡単な討伐に連れて行きその手に持たしたナイフを使い、最後の一撃を行わせたのだろう。そのころなら、オーク1頭でレベルは2つくらい簡単にあがる。」
マイヤーが言うに16歳を頂点に人の成長過程においては、討伐による経験値取得が年齢にほぼ反比例しているらしい。例えば、オークの場合、16歳で、レベル1の取得経験値が500とすると4歳では2000という具合だ。
しかも1度に取得した経験値は、現在のレベルのレベルアップ必要経験値で割り算される。
例えばレベル1からレベル2への必要経験値は1000で、レベル2からレベル3への必要経験値は1100と言われているが、オークで取得した2000の経験値が、レベル1の必要経験値の1000で割られて2段階レベルアップしたというわけだ。
血統魔法が伝わる王家では、この方法で幼いときに中堅魔法使いレベルに上げた上で、血統魔法を教え込むのだそうだ。俺は覚えていないが幼い時にきっと多くの人たちに守られながら、オーク討伐に赴き十分に弱らせたオークの命を刈り取ったのだろう。
日本人の感性では、考えられないことをするな。こちらの人々は・・・。
「では、指輪を『炎』にして念じて頂けませんか?」
俺は指輪を回し『炎』にすると右手を出し、出ろと念じると右手の人差し指に、小さな灯が灯った。
「そうとう、指輪を使用されたようですね。本当は長い間魔法を使っていないと使い方を忘れてしまいなかなか、うまく魔力が流れないものですが・・・。」
確かにここ最近、『鑑』の状態で使い続けていたからな。
「わかるのですか?」
「ええ、魔術師のMAXレベル到達者は、魔力の流れと共に、その魔力の流れを解析することができます。伝説の勇者には、魔術師と魔道具職人という両方の職業を持ち、勇者のスキルからの魔力の流れを解析し、魔道具としては複雑怪奇な呪文を刻み込む必要があるこの玉を作った人物が居たと言われています。」
そうすると、目の前の少女は魔術師のMAXレベル到達者というわけか、せいぜいが16歳くらい少女にしか見えないのだが、実は違うのかもしれないな。
俺がしげしげと見つめたせいか、マイヤーは少し赤くなった。どうやら、こちらの意図を察したようだ。
「すみません。そういえば、言ってませんでしたね。私の種族はエルフといいまして、妖精族の中でも森を守る民として有名ですね。」
マイヤーは、エルフの特徴であるという耳を髪の毛をかきあげ見せてくれた。
「これでも、80歳を越えているのですよ。」
女性の年齢は追求しないほうがいいな。
「それで、俺は直ぐに魔法が使えるようになるということですか?」
「おそらくなります。そのために私がいるし、その指輪があるのですから。」
どういう意味だろうか?
「まずはやってみましょう?指輪を『水』にしてください。そして、先程と同じように、右手の指に火が灯ったイメージのまま、『灯』と唱えてください。」
俺は言われた通り、指輪を『水』に切り替え、右手の指に集中し、『灯』と唱えたところ、先程と同じように、火が灯った。
「おお!」
「できましたね。ではイメージを定着させるため、5回ほど行ってください。そうですね、それでいいです。」
俺は言われた通り5回唱え5回とも成功した。
「では指輪を使って、水を出してもらえませんか。そうです。では、もういちど、そのまま『灯』と唱えてください。」
俺は言われた通り唱えたが、今度はうまく灯らない。
どうしてだ?そうか、イメージだ。イメージだな。
「そうなんです。イメージが水が出るイメージにすり替わっているからでません。もう一度、指輪を『炎』にして灯らせてから指輪を『水』にして、魔法で『灯』と唱えて灯らせてから指輪で水をだして、強く先程の灯らせるイメージを強く思いながら、魔法で『灯』を唱えてください。」
今度は、すんなりと灯った。
「これで、指輪を使った練習方法はお分かり頂けましたか?」
「ええ、次は指輪で水を出してから指輪を『風』にして、魔法で『水』を唱え水を出して指輪で風を出してから、魔法で『水』を唱え水を出す。」
「ええそれで正解です。でも、決して人のいないところでは、やらないでください。MPを使いすぎると気絶してしまったりしますから。すでに、なんらかの倦怠感が出ていませんか?」
なんとなく、気力が落ちているような気がする。俺がうなずくとマイヤーが続けて言う。
「指輪を『鑑』にして、自分自身を見てください。MPが減っていることが解ると思います。では、これを飲んでください。」
指輪を『鑑』にするとHPとMPの残量のイメージが読み取れる。目の前の青汁みたいな・・・。いや、青汁そのものの味だ。それを無理矢理飲み込む。そうすると減っていたMPが元に戻った。
「MPは回復しましたね。念のためにこれを10本お渡ししておきます。今お渡ししたのが、レアのMP回復ポーション、そして、これがレアのHP回復ポーションです。MPは50%、HPは30%回復します。尚、レアまででしたら、街の薬草屋に行けば手に入れられますので無くなったらそちらで買ってください。」
HP回復ポーションという新たな商材を得られた主人公だが、どういう使い方ができるのでしょうか。法律の壁が・・・。