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第3章-第31話 かたがき

お読み頂きましてありがとうございます。

 その場であがったいくつかの品物を各拠点に内線電話で伝える。逆入札のための準備も必要だが、買い手側を集める必要もある。


 アルテミス国内の買い手はアポロディーナを通じて、メルハンデスを利用して商業ギルドから集めている。


 塩のような物資の場合はおよその価格が決っているので、その価格で売ればいいが新鮮な海産物となると前例が無いため大変だ。


 デメテアル国から魚料理のレストランを誘致すればいいのは解かっているが、安定供給できる理由を明かすことができないため、まずは、実績作りが必要となってくるのだ。


 一番いいのは供給される海産物を一手に扱う専門ギルドを設立してもらい。そこに任せるのがベストであろう。流石に商圏開発などの投資を行っている余裕はないからだ。


「大丈夫です。うちの父の店が乾物ですが海産物を扱っている商店なので、話を持っていけば必ず食いつきます。普段から新鮮な海産物を扱いたいと言っていましたから。」


 日本では、そういう商習慣が無いため、従業員の家族が絡む取引をしないのだが、そうも言っていられないだろう。彼女の父親ということは、メルハンデスの子供もしくは婿なのだろうから商業ギルドでも十分な発言力を持っているに違いない。


 よし、任せてみるか。


「それでは、お願いしよう。だが最初は秘密理に事を進めてくれよ。」


「解かっています。」


 そうか、彼女はメルハンデスの下で働いていたんだ。王宮から商業ギルドへの働きかけなどは彼女の担当だったのかもしれないな。


 だが、次の彼女の言葉から、覆ることになる。


「商業ギルドのギルド長として、この事業の成功をお約束します。」


 もう何と言っていいかわからなかった。何度も言うが彼女は20歳である。この世界の成人は15歳だから、20歳は十分に一人前なのであろう。しかも、彼女はメルハンデスの孫なのだ。いくつかの肩書きを持っていてもおかしくはない。


「あ・・ああ、よろしく頼むよ。」


 もしかして、俺って人選を間違っている?ダンジョン攻略の組織化は全て彼女に任せて、ダンジョン攻略に専念したほうが良くないか?


「もしかして、知らなかったんですか?」


 ショックが俺の顔に出ていたのか、クリスティがそう告げてくる。


「肩書きだけですよ肩書きだけ。それを言ったら、お姉さまも冒険者ギルドの副ギルド長でしょ。それも、お姉さまは私と違い、仕事をしないギルド長の実務を担当してらしたじゃないですか。」


 そうだよな。あのギルド長が実務を行っているとはとても思えない。


 いや、そうではないだろう。クリスティが副ギルド長だと?


「私は辞めている。一冒険者として、このダンジョン攻略に携わっているんだからな。」


 そうするとなにか?


 このダンジョン攻略組がうまく回っているのは、国王と宰相の完全なバックアップが張り巡らされていたというわけか。なんか結局、彼らの掌で上手く転がされているだけの気がしてきたぞ。


「嘘。冒険者ギルドで伯爵に反目したAクラスやBクラスの連中が仕事を干されているのって、お姉さまの仕業でしょ。」


 おいおい、それで大丈夫なのか?


「あの連中は安全な仕事しか請け負わない連中だったから、見せしめとして必要だったのよ。それに干しているのは、自発的な行動よ。女性チームが挑むダンジョン攻略を蹴った連中を雇う人間が居ると思って?」


「それはその情報をお姉さまが流したからでしょ。聞いているわよ。」


「その情報をさらに商業ギルドで広めたのは、ディーナの仕業だろ。そのせいで連中を護衛として雇いたいという人間は殆どいないらしいじゃないか。」


 もしかして、俺は、目の前に居る2人の女性の掌の上で転がされているのだろうか。


・・・・・・・


 ダンジョン攻略は俺が1時間ほど3階でフテ寝をしたため、昼を若干過ぎた頃の再開となった。


 アポロディーナもクリスティも十分に発散したようで、表情は明るい。結局、待機組との交代も無かったようで全員が万全な状態でダンジョンに戻って来た。


 若干、落ち込み気味の俺とその流れに付いていけなかった渚佑子を除くのだが・・・。


「今度は、どこを触ったとか騒がんでくれよ。」


 ダンジョンを順調に進んでいたのだが、途中飛び越える必要のある魔法陣に出会ったのだ。


 落とし穴の魔法陣で、階下に繋がるものらしい。うまく使えば既に攻略済みの階をショートカットするには便利なシロモノだが、踏み抜くと危険だし、必要な通路を埋めてしまう可能性もあるため、飛び越えることにしたのだ。


 また、この魔法陣は地面と同化しているため、取り除いても、地面に穴があいてしまうので取り除くこともできないのだ。


 ひとりひとり、手を繋いで、『フライ』で飛び越える。


「えっ、お姫さま抱っこじゃ・・・。」


 何故か籤引きまでしてトップバッターに選ばれたクリスティが呟く。君はどこまで乙女なのだね?


 というか、身長165センチの俺が190センチのクリスティをお姫さま抱っこなんぞできると思っているのだろうか。まあ、渚佑子の肉体強化が効いている今ならできそうだが・・・。


 隣では、物悲しそうな籤引きで負けたアポロディーナを連れて『フライ』を唱えた渚佑子が魔法陣を飛び越えている。


 これを10往復する。


 時折、『フライ』で飛ぶ際に怖いのか、ギュッと腕にしがみ付く女性も居る。うーん、やっぱり、胸は柔らかいほうがいいなぁ。


 不思議と隣を飛ぶ渚佑子の腕にしがみ付く女性が全くいないのだが・・・。


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