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第3章-第30話 ひとりだち

お読み頂きましてありがとうございます。

「なんで教えておいてくれなかったんですか?」


 とにかく、何か抗議したかったのだろう。アポロディーナは言ってから、しまったという顔をする。


「頭は大丈夫か?そんな事してみろ、緊張感が無くなってしまうだろうが。それに俺が居なくなった後、どうするんだ!」


 俺は理路整然と説明する。


「それは・・・その・・・。」


 すこしキツく言い過ぎただろうか。だが緊張感が無くなってしまっては死に直結してしまう。これだけはキッチリと伝えておかなくてはいけない。


「俺が居なくなるまえには、独り立ちしてもらうつもりだ。これをアテにしてはいかん!解ったな。」


 そこへクリスティがダンジョン攻略組すべて無事帰還したことを報告してくれる。もうすっかり元のクリスティに戻っているようだ。


「扉を開けたら、ディーナの奴、捨てられた犬みたいな顔をしていましたよ。」


 さらにイラナイことまで報告してくれる。


「ク、クリスティ・・・それは、言わないでって言ったでしょ。」


 捨てられた犬か・・・。


「なぜ、そんなに依存するようになったのだ?皆、そんな風じゃなかった筈だ。」


 俺が甘やかしてしまったのか?


「皆、あなたのことが好きなのよ。それにあなたは全く先の見えないダンジョン攻略に道筋をつけてくれたもの。」


 アポロディーナも含め周囲にいる人たちが頷いている。あれは好きがこうじてできた集団心理みたいなものだったのか?だったら泣くぞ、全くもう。


 まあ、渚佑子のは違うだろうが。


 道筋か。俺は単にいきなりダンジョン攻略をして、犠牲者が出るのが嫌だっただけに過ぎない。ましてや、こうやって集団生活をしているのだ。


 そこまで好かれているとまでは思わなかったが仲間意識はあった。いや従業員を思うのに近いかもしれない。


 ただ、商品のようにそこから1人欠けては補充するようなことは、したくないというこの世界においては子供じみた願望のためにやってきたのだ。


 それがこれからも絶対上手くいくとは思わないが、最善を尽くすつもりだ。そのためならどんな手だって使ってみせる。周囲からどれだけ罵られようともだ。


・・・・・・・


 時間があいたので各拠点の確認と共にこの国での商人としての第一歩を踏み出すことにした。


 各国からはダンジョン攻略の特権として、税金の免除を受けているため、物を仕入れたり、売ったりするだけで十分儲かるのだ。


 しかし、生活必需品の塩や各国の特産物などを空間連結の扉で行き来させることでだれでも簡単に利益を出せる。


 この利益を将来、ダンジョン攻略での資金にしようと思っている。いまは各国共に被害がでているため、資金を拠出してくれるが被害が出なくなったときにまで出してくれるとは、思えないからだ。


 そうなれば、誰もダンジョン攻略技術を引き継いでくれる人が居なくなり、今回のような非常事態が発生した場合、再度召喚されかねない。


 そこでここを完全に独立した組織にする必要があるのだ。


 まずは、ポセイドロ国の内線電話にかける。既に仕入先の選定はすんでおり、逆入札も完了している。


 今の俺の位置は救世主らしく、その救世主に物資を提供するだけで十分名誉であり、商売上十分な利益をもたらすらしいのだ。


 そのため、逆入札にしたところ、原価ギリギリもしくは原価を割ってでもという仕入れ価格となった。


 1円入札みたいなことをする人間もいたが、長期にわたって供給できるか不安だったので排除した。


「そうだ。塩だ。仕入先はわかっているな。その扉の奥に山積みにしておいてくれ。」


 空間連結の扉の奥は閉鎖空間になっており、拠点側の建物の一部に見せかけている。


 内陸部にあるアルテミス国はもちろんのこと、山岳地帯が多いハアデス国でも塩は生産していない。


 生産量の多いポセイドロ国の塩に頼っているその流通の一部を握ることが必要なのだ。


 現時点では俺の自空間による輸送であり、俺が居なくなっても商行為の一つで一般的な流通を使用するものだと思われているようだ。


 誰でも使える手段だとは思われていないようだ。下手に空間連結のことがバレたら、どこかの国が奪いにくる可能性もあるだろう。


 そうなる前に各国の流通の担い手として欠かせないところまで登り詰める必要があるのだ。どこかの国が握ってしまうと他の国の経済に影響が出るところまでだ。


 そのためには徐々に徐々に手を広げていく必要がある。


「どうだアポロディーナ、絶対アルテミス国で売れるものなら、何でも構わない。」


 アルテミス国の王都の事情に詳しいアポロディーナに商売になりそうな品物が無いか聞いてみる。


「デメテアル国の海産物なんかどうです。アルテミス国の庶民でも年に1回は海産物を求めて、デメテアル国へ旅行へ行くくらい。好きな人たちが多いですね。」


「それだ!乾物なら流通しているだろうが新鮮な海産物なら、誰も損はしないだろうしな。良く教えてくれた。ありがとう。」


 叱ったあとはしっかりと褒めてやる、これも大事なことだ。アポロディーナもさっきとは違い、とても嬉しそうだ。


「えー、魚なの。あれ嫌い、生臭いじゃん。」


 クリスティが混ぜっ返してくる。別にかまわないだろうお前の口に入るわけじゃ無いんだから・・・。


「それよりもセレスティア国のワインにしようよ。」


 それって、お前が飲みたいだけなんじゃ・・・。


「アポロディーナ、アルテミス国でワインを扱っているのは誰だ?」


「侯爵のトリフ・ラミス卿が一手に取り仕切ってます。」


「クリスティ、却下だ。」


 ラミス侯爵はこの国でも最大規模の貴族集団のトップじゃないか。そんな人間に目をつけられてみろ、俺が居なくなったあと理由をつけて奪いにくるぞ。


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