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第3章-第29話 少女C

お読み頂きましてありがとうございます。

 皆、隠し事が下手なのである。あんな態度で俺がわからないとでも思っているのだろうか。今回、クリスティに添い寝をお願いしたことにしたって、一番口が軽そうだったというだけだ。


「そうですね。渚佑子は、戦争がどうとか言っていました。モンスター相手の戦争があったのでしょうか。そのせいでレベルアップしたんだとか。私、なんか言ってはいけないことを言いました?」


 俺の顔色が翳ったのがわかったのだろう。


「いや、大丈夫だ。」


 今でも断片的にしか思い出せないが、例の戦争で数万人を殺した俺は、こちらの世界でレベルアップをしたらしい。俺は指輪の『鑑』で自分自身を見てみる。たしかにHPは数百倍に増えているようだ。


 だが、俺も酒が入っているようでなぜショックを受けて記憶を失ったのか、わからない。おそらく致命的なショックだったのだろうというだけだ。ショックを受けた際の記憶が戻らないせいなのか、ショックを受けてから時間が経っていることが良かったのかわからないが二次的にショックをうけるようなことは無いようなのだ。


「なんれ、私なんれす。」


「なにがだ?」


「なんれ、私なんか抱きたいんれすか?」


 なにか誤解しているみたいだ。彼女を抱きたいなんて言ったつもりは、無かったんだがな。


 俺も男だ。そんなことを言われて、欲望が首を擡げないわけはない。


「嫌なのか?」


 嫌じゃなければ・・・双方合意であれば、構わないだろう。今日は近くに渚佑子もアポロディーナも居ないのだ。


「嫌れす。」


 俺は、その言葉で萎えてしまう。まあ、嫌なら仕方が無いか。


「嫌なんれす。愛の無いソレは。」


「好きだよ。」


 そう彼女の耳元で囁いてみる。


 きっと、また真っ赤になるに違いないと思い囁いてみるが一向にリアクションが返ってこない。そして、クリスティの顔を覗きこんでみると、大きな口を開けて爆睡してるようだった。


 うーん。全くバカなことを言ってしまった。少し飲ませすぎたし、俺も飲みすぎたみたいだ。


 俺は、室内の明かりを消すとそーっとクリスティの横に潜り込む。うん、やっぱり安心するな。口実のつもりだったんだがな・・・結局そのまま、眠ってしまう。


・・・・・・・


「どうした?」


 クリスティが上半身裸のままでソレを腕で隠そうとして、口をパクパクしている。


「ああソレな、大変だったんだぞ!暑いって脱ぎ出すから・・・頑張って見ないようにしたんだぞ!」


 本当はバッチリ堪能しようとしたんだが、胸をボディビルダーのように動かしてみせる姿に気持ちが萎えてしまったんだが、それは言わないほうがいいだろう。


「そんなに心配なら、そこの姿見で確認して見ればいいだろう。キスもしていないよ。」


 全く少女みたいな反応だな。俺をジッと見る姿に思わず口をついて出てしまう。


「ほらダンジョンの連中も呼んでこい。朝飯にしよう。」


 俺は余裕のない様子のクリスティを2階の部屋に送り届け、部屋の前でそう言うと1階に降りていく。


 そして、メッツバーガーのモーニングメニューをあらかじめ数日分を自空間から取り出しておいた冷蔵庫から取り出し手早く調理していく、王宮でのデモンストレーションも出来るくらいには作れるようにしているのだ。


 2階からクリスティが降りてくると裏のダンジョンにつないだ扉の方へ行ったようだ。そしてさらに2階から待機組の冒険者たちが降りてくると出来上がったマフィンから手渡していく。


「伯爵、帰っていたんですね。もう攻略終わったんですか?あとはやっておきますから、休んでいてください。」


 顔見知りの冒険者たちが厨房に入ってきたのでバトンタッチして、自分の分を持ち厨房を離れる。


「ああ、一時停止だ。後で再開する。」


「はぁあ?」


 やはり、何のことか解らないようだ。魔法で一時的に戻ってきたことを説明する。


「そんな事が出来るのですね。」


「ピンチの時以外は使わないけどな。くだらない理由で使わせるなよ。」


 自分のことは棚に上げて言う。


「ちぇっ。今回いきなりピンチですか?そう言えば、ダンジョン攻略組がいませんねぇ。まさか・・・。」


 なにを想像したのか、真っ青になっている。


 そこへすっかり疲れた様子の渚佑子たちがやってきた。


「「「「「昨日はすみませんでした。」」」」」


 すこし、憮然とした様子のアポロディーナと渚佑子たちが俺の前へ来て頭を下げてくれる。とりあえず女性恐怖症らしき症状は出ない。


「どうだった?1晩ダンジョンで過ごした感想は?」


 あの扉を開ける方法はクリスティに聞いたとみえバツが悪そうな顔をしている。


「2交代で見張りを置いたのですが、1度モンスターの奇襲があった後はろくに眠れませんでした。」


 それならば、朝食後すぐに再開というわけにはいかないか。


「では昼まで休憩したあと、再開しよう。調子の悪い人間がいたら、待機組と交代してもいいぞ。」


 見張りの順番によっては一睡もしていない人間が居る可能性がある。この際だ交代すれば問題ないだろう。


「出来ると解っていたのですか?」


 主語を省略するなよ。周囲の人たちは何のことか解らないだろ。


「ああ、アレのことか?『転移』や『移動』は連続空間が必要みたいだったから、出来なくても不思議じゃないけど、特に他に制限が掛かるわけではなかったからな・・・・・・本当はピンチになるまで試すつもりはなかったんだがな。」


 思いの外、俺のピンチが早かっただけだ。言葉にはしないけどな。


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