第2章-第27話 はじめてのだんじょん
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いよいよ、ダンジョン攻略である。俺が作った練習用ダンジョンの原型になったモノなので、地下5階まではスムーズに行く予定である。
但し、超古代文明の文献でも最下層が地下50階以降と記載されているばかりで具体的な階層は解かっていない。ただ、このダンジョンの特徴から地下50階の可能性が高いというだけだ。
本来は2チームのうち、俺と渚佑子と各リーダーは別にして1チーム12名の構成なのだが、両チームに実戦を経験してもらうため、2チームから選抜した18名の構成で投入する。
ダンジョンの中は現れるモンスターと戦うには十分な広さがあるが、流石に外とは違うので前衛2名、後衛2名の構成で戦うのだ。
12名の構成にしたのは、二股に分かれた通路の両方からモンスターが現れ、さらに後方からもモンスターが現れても対処できるようにしたためだ。
必要な物資は、全て俺の自空間に入っている。まあ、俺がいなくなったとしても、代用できるように800KGが入る魔法の袋を国に買い取って貰っている。
こういった魔道具は、超古代文明の遺跡から発掘されるだけで、製造技術は失われているらしい。そのため、魔法の袋は、オークションでも値段が付かないほどで800KGも入るものとなると王宮の宝物庫にも存在しないらしい。
そのため、この魔法の袋の買取価格は、国家予算の数%となり、俺の購入価格の数百倍を提示されて戸惑ったのだが、これ以上安い価格になると経済が混乱すると押し切られてしまった。
腐敗しない袋も余剰が若干あったので、出そうと思っていたのだが、どんな金額が付くかと思うと怖くなってしまった。帰る前にアポロディーナにプレゼントしようと思っている。小さく纏まるからラッピングすれば誤魔化せるだろう。
・・・・・・・
大人数になってしまったため、練習のときよりは若干攻略スピードが落ちているようだが、割と順調に進む。
時折、罠の魔法陣があり前方に進めない場合にのみ、魔法陣の解除ができる俺の活躍の場がある。だが、これもアポロディーナとクリスティに教え込みながらだから、その内、やることが無くなるに違いない。
あとは、リーダーが間違った選択をしそうになった場合に止めるくらいだ。
各モンスターに対しても、各冒険者の力量のほうが上回っており、まだまだ余裕がある。
半日かけて、ようやく地下5階のボス部屋の手前まで到着した。
「どうする?ここで泊まるか?ちょうど広い部屋もあることだし。」
皆初めての体験ばかりで疲れが見えていたので、そう告げる。皆ダンジョンに入る前に渚佑子から肉体強化の支援魔法を受けているが、肉体とは別に精神的な疲労が酷い気がする。
「ここのボスを倒してからにしましょう。」
一番、疲れが酷いように見えるアポロディーナがそう提案する。他の皆も異存はないようだ。
ボスは、地下5階のモンスターに比べるとかなり強く、HPも高いがこちらも戦闘員が3倍いるため、かなりの速度で相手のHPを削っていく。
あえて俺や渚佑子など魔術師は、手を出さない。ココのボスは、反転の魔法陣を使うからだ。初めに受けた1種類の魔法だけだが、それを使った敵全体にその魔法を反転させ浴びせるらしい。
それを知らずにそれまで温存しておいたMPで火力の強い魔法で攻撃した調査チームが一瞬にして全滅したらしい。さらに全滅すると情報が残らないため、何度も調査チームが全滅の憂き目にあっている。
たまたま、火力の弱い魔術師が混ざったチームがボスを倒しきれたせいで、ここのボスが反転の魔法陣を使うことが判明しているのである。
「よし、最後のトドメはクリスティが行け!魔術師になるんだと強く思い込めよ!」
指輪の『鑑』で十分にHPを削りきり、複数の冒険者で押さえつけられているボスを倒せと俺はクリスティに指示を出す。渚佑子の『鑑定』スキルでもおそらくここのボスを倒せばレベルアップができることがわかっている。
長身のクリスティがブツブツと呟きながら、剣を突き刺す姿は異様だが仕方が無い。どうしても、リーダーには探索など魔術師の能力が必要なのだ。
目の前で1人の魔術師が誕生した。
・・・・・・・
ボス部屋の後方に階段があることを確認した俺は、クリスティに探索の指示する。
「わかります。階下に降りた直後にモンスターが1頭。」
魔術師になりたてでも、20メートル程度の探索魔法は使える。これまで気配とかで判断してきたものに、探索魔法がうまく加われば、アポロディーナの探索魔法に匹敵する能力になるはずだ。
「あっ、宝箱があります!」
アポロディーナの声のする方に視線を向けるとフラフラとアポロディーナが宝箱に向かって歩いているところだった。
俺は、咄嗟に横っ飛びにアポロディーナに飛びつく。
「キャー。何をするんですか!」
どうも俺が飛びついた際にうっかり胸を触ってしまったみたいで、胸を押さえ込み抗議の声をあげる。
「いや、違う。不可抗力だ。」
「トム!なにをしているんですか?」
渚佑子も可哀想な人という視線を向けて来る。どういう意味だ。
「そうだ。ディーナの胸を触るとは・・・言語道断。そんなに触りたかったのか。それなら、私のにしておけ!」
クリスティがニヤニヤと近寄ってくるが、その他の人々からは、チームは女性ばかりだからか、白い視線が降り注いでくる。
どうして、トムはアポロディーナの胸を触ったのか・・・って、なんでそんなラストになったのだろう。シリアスで閉めるつもりだったのに・・・。
まあ、バレバレですよね。




