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第2章-第26話 あのせんそう

お読み頂きましてありがとうございます。

「しかし、なぜいきなり?」


 まさかこの世界のオークを1頭倒すだけでいくつもレベルアップするとも思えない。


「・・・・あのぅ・・・トムは例の戦争のときはどうだったのですか?」


 おそるおそる渚佑子が問いかけてくる。


 ・・・・戦争と呼ばれるものにはいくつか巻き込まれたが、渚佑子が知っているとなると、あの戦いだよな。・・・まさか・・・あの戦争が・・・・。


「それは違う!同族殺しは経験値にはならないはずだ!」


 俺は思わず強い口調で言ってしまう。内戦でも多くの人間を殺してしまったが、レベルは全く上がらなかった。きっと、そういうシステムなのだろう。


「でも・・・でも、私は異世界の人間を殺してレベルアップしたことがあります。」


 渚佑子が意を決したように宣言をする。言いにくいことを言わせてしまったようだ。


 そうなのか・・・・・・・。私は元々異世界の人間だから、あの戦争で人間を殺したことで経験値を得ていた?


 あの・・・あのとき、あの『メテオ』で死んだ敵の数は数万人にのぼると聞いている。ただただ、あのときは無感情にそうかとしか思って居なかったが、あれが全て俺の経験値となっていた?


 それは・・・許されることなのか?


 あれは戦争だ。それは解かっている。どれだけの人間を殺しても英雄扱いこそされるが、殺人者とはならない。


 俺は英雄・・・どころか、実際には、感情に引き摺られたバカなのだ。


 感情であれだけの人間を殺した・・・・。この同族殺しが・・・経験値・・・。


「トム・・トム・・大丈夫ですか?トム・・・トム!!!」


 目の前の少女がなにかを叫んでいる。






・・・・・・・







 目を覚ますとそこは、見慣れた日本の光景だった。コンクリートで出来た建物、天井にはエアコンがしつえられており、ベッドも有名メーカーのラベルが貼ってある。


「っ・・・・。」


 だが、視界に現れた2人の女性は、どうみても日本人じゃない。見慣れない服をきた女性が2人。片方はバレーボール選手のように高身長だ。


 さらに視界に心配そうな表情の渚佑子を捉えるとおぼろげだった記憶が徐々に戻り始める。


 そうだ。渚佑子と召喚されたのだった。


 そして、ダンジョンの練習をして・・・・・・・っ・・・、頭が割れるように痛い。


「俺は、倒れたのか?」


「ええ、トム殿は無理しすぎです。疲れているのなら、剣の訓練などせずにゆっくり休むべきです。」


「すまんアポロディーナ、渚佑子も心配を掛けたな。俺は・・・・オークを倒して・・・っ。」


「どうしたんですか?」


「頭が痛い。少し記憶が混乱しているみたいだ。オークを倒して・・・どうしたんだっけ。」


 渚佑子がアポロディーナと・・・そうだクリスティと顔を見合わせている。そしてなにかを頷く。


「頭痛薬はいつもトム所持しているって・・・。」


「そうだった。」


 俺は、自空間から取り出した頭痛薬を飲み込む。これを飲むと眠くなるし、少し頭がボーっとするから嫌なんだが、他の頭痛薬は効きにくい体質みたいだから仕方が無い。


「トムってば、2頭目のオークにぶつけられてすっ転んだんですよ。ひやっとしましたよ。」


 俺は、渚佑子たちの前で情けない姿をみせて気絶したようだ。


「お・おう。情けないぞ全く。剣は封印したほうがいいな。他にも迎撃手段はあるんだろ。それにトムが同行するなら、傍には私か渚佑子が必ず居るはずだ。私たちに任せておけ。な。」


 クリスティが何故か早口でそう言う。


 それもそうだな。


 彼女たちを信頼できなくてどうする。まあ、拳銃もあるし、例の紐パンもある。とりあえず、なんとかなるだろう。


「そういえば、鈴江はどうした?」


 俺はふと思いつきそう彼女たちに聞いてみる。いつも俺べったりだったのだが、今は傍にいない。まあ、そのほうが変に焦らなくて良いんだがな。


「もう寝ましたよ。」



・・・・・・・



「トム!鈴江さんがいません!」


 翌朝、俺の部屋に渚佑子が駆け込んできた。


 昨夜は頭痛薬が効いていたのか。すっかり眠りこけてしまったようだ。


「探索してみる。・・・王宮のほうだ。」


 俺は着替えて王宮に出向く、さすがに鈴江の近くに『移動』するわけにはいかない。どうも、陛下の傍に居るようなのだ。


「私、貴方が日本に戻るまで後宮に入ります。」


 ああ、この女はこういう人間だった。


 セコセコと日々生きるのを嫌がる人間だった。まあ仕方がないだろう。


 それに若干暗い顔をして陛下の後ろに隠れているのを見ると渚佑子から自分が日本で何を仕出かしたか聞いたのかもしれないな。


「わしが預かることにするよ。大切に扱うから心配せずともよいぞ。」


 へえ。もう誑かされているみたいだ。おいおい、美少女好きじゃなかったんですかい?


 まあ、たしかに15年前は美少女だったかもしれないが・・・。


「では、よろしくお願いします。」


 俺がそう言うと鈴江は何か言いたそうな表情をするがやがて、頭を振り傍から離れていった。


 まあ、所在が解かっている分安心だ。これで他国に行ってしまい、日本に戻るときに探し回るハメになることは無いだろう。


記憶喪失3例目。

渚佑子さんは油と水のような元妻とも共闘するようです。

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