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第1章-第14話 あにき

お読み頂きましてありがとうございます。

「いいものが見れたようじゃの。じゃがあの男がみせた騎士道に劣る行為は、まずいの。爵位返上モノじゃの。」


 あーあ、彼は、爵位を返上させられるらしい。


 陛下の目の前でアレをしてしまっては、取り返しが付かない。


 いや待て、それは困る。


 彼が率いる第二部隊が割と被害の少ないアルテミス国内の半分のダンジョン攻略を受け持ち、その他のダンジョン攻略を俺の率いる第一部隊が受け持つ予定なのだ。



・・・・・・・


 その日の昼、早速呼び出された。


 プラントン男爵がみせた行為を問題視した国王が双方の意見を聞くという名目で呼び出されたのだ。


 その場には、メルハンデスを含め、公爵や侯爵、伯爵といった高級貴族の面々たちとあの場に居た2名の近衛師団の副団長が顔を揃えていた。


 プラントン男爵は両側に杖をついた状態で現れ、陛下の前で懸命に痛みを堪える表情で膝をつく。


「なんで呼ばれたかは、解かっておるの?」


 陛下が男爵に向かって問いただす。


「はっ、不徳のいたす次第でございます。」


 男爵は、諦めたのかそれとも、反論すれば状況が悪化すると解かっているからか、全面的に肯定する。


「汚名をそそぐ機会は必要かの?」


「はい。誠心誠意お応えしとう存じます。ですが、この身体では・・・。」


「渚佑子。」


 渚佑子は、若干不満そうな顔をするものの、素直に男爵の傍に行って『治癒』魔法を唱える。


 おそらく、複雑骨折していたと思われる両膝が『治癒』魔法で完全に治ったはずだ。


「おお、これはかたじけない。」


「よく聞け。各国大使の失笑や嘲りを買った例の国辱的行為だが、本当ならば極刑にすべきという意見で揃ったのだが、トム殿の温情により、団員への降格と士爵への降格とすることに決った。」


 あの場で陛下は爵位返上と言ったが、近衛師団団長としてあの行為は国辱モノだという意見が貴族たちの中から出たのだ。


 だが、それでは困る。


 いずれ帰らなくてはいけない俺に丸投げされてしまえば、今後同じようなことがあった場合に困るだろうし、十分維持管理できる数にまで抑制していく必要があるのだ。


 それには、この世界の人間にも攻略できるということを示して貰わなければならないのだ。


「ありがとうございます。」


「但し、条件があっての。ダンジョンを1年以内に1つ攻略することだ。しかも、2年以内に2つ攻略すれば、男爵位。3年以内に3つ攻略すれば副団長に戻す。どうだ。頑張ってみる気になったか?」


 これで死にもの狂いでダンジョン攻略に励んでくれるとうれしいんだがな。


「はっ、ありがたき幸せ。」


「副団長アルスティッポス、同じく副団長アンティスタナスは、近衛師団団長代理とする。プラントン男爵が復職後、どちらかを団長にする。よく励めよ。」


「「はっ、誠心誠意お仕え致す所存でございます。」」


 これが定番のセリフなのだろう。二人共全く同じ答えを返す。



・・・・・・・



 メルハンデスが土地を確保したというので実際に見に行くことになった。


 王宮を出ると陛下、いやアンド氏が近づいてくる。


 どうやら一緒についてくるらしい。


 王宮は幾重もの城壁に守られているらしく、2つほど大きな門を潜り抜けるとそれがあった。


「これは?」


 俺がメルハンデスに問いかけると違うところから答えが返って来た。


「これが冒険者ギルドじゃの。この裏に丁度、お主が言っておった広さが開いておったからの。ここから王宮側が下級貴族の住まいが多い地域じゃの。」


 冒険者ギルドの建物は、二階建てほどだが重厚で歴史を感じさせる建物だった。


 その建物が、この区域に1軒だけ、ぽつねんと建っていた。


「不思議そうじゃの。いわゆる冒険者ギルドの独立性の象徴として、どの国にも阿らないことを示したいというわけじゃの。ほっほっほ。」


 その代表が国王じゃな。


 まあ、国王だからこそ独立性が保たれているのだろうけど・・・。


「では、ここに建てては不味いのではないですか?」


「お主は、一応この国の伯爵という地位におるが、何れ居なくなると聞いておる。そうじゃろ。」


「ええ。」


「それに『勇者』は常に冒険者から出るものじゃろうて。のう、団長?いや、元団長だったかの?」


 ここには、メルハンデスとアンド氏のほか、アポロディーナにアルスティッポス団長代理、アンティスタナス団長代理にプラントン元団長まで付いてきている。


 プラントン元団長は、この冒険者ギルドに用事があるそうで付いてきただけだが、こちらの様子を興味深そうに伺っている。


「そうだ、『勇者』が近衛師団に入ることは、あっても近衛師団から『勇者』が出ることは無い。ソレが俺たちに常に与えられている仕事だからだ。」


 あんなことはあったが意外と仕事には、真摯な人物なのかもしれない。


 ただ、手段を選ばないだけで・・・。


「兄貴ぃー!兄貴ぃー!なあ。もう逃げよう。なあ。兄貴ぃー!」


 その冒険者ギルドから、一見ひ弱そうな男が出てきた。


 その男の視線は、俺のほうに向けられ睨みつけられているようだ。


「うるせぇよ。ベッポ。ちったは黙っていろ!心配すんな。恩赦が出たんだ。」


 元団長がそう言うと、ようやく俺から視線がはずれ、泣きながら元団長に抱きつく。


「兄貴ぃー!兄貴ぃー!よかった。兄貴ぃー!」


 意外にもこの男から元団長は慕われているみたいだ。


 訳知り顔のアンド氏に話を聞いてみると、元団長は孤児で貧民街の教会の孤児院で育ったそうだ。


 そこから、冒険者として実力でAクラスまで成り上がり、そこである男爵家に気に入られ養子として迎え入れられることになったそうだ。


「それもこれも、アンド爺さんが冒険者としてのイロハを叩き込んでくれたお陰だ。」


 そうか、この男は、陛下が育てあげたのだな。


 道理で俺が処罰に対して反対をしたときに安堵したような表情をした訳だ。


 本当は、陛下も処罰に反対をしたかったに違いない、だが立場上できなかったのだろう。


 近衛師団団長といえば、陛下の背中を預ける人物になるのだ。


 陛下が直接、触れ合え信頼できる人物を据えたいと思うことは十分考えられることだ。


 目の前の元団長に抱きついている男も孤児院育ちで、元団長が成り上がってからも頻繁に孤児院に寄付や土産を持って訪れており、孤児院の皆からは慕われているのだそうだ。


 それを聞いていたアポロディーナは、少し驚いた表情になったが、何かを頭から排除するように何度か頭を振ってから、俺の顔を見つめてきた。


 少しは見直したというところか。

「傷だらけの天○」の水×豊のイメージで(笑)


今の世代は「相◎」のイメージが強いか。


なろうコンのトップページで拙作を含め受賞作全21作品へのお祝いコメントを募集されているようです。

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