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第1章-第12話 おうどう

お読み頂きましてありがとうございます。

 国王主催の晩餐会は、割と穏やかなものになった。


 ダンジョンによる被害がそれだけ深刻なものであり、俺の存在を好意的に見てくれる貴族たちが多かったからだ。


 特にアルテミス国を除く、ハアデス国、ポセイドロ国、デメテアル国、セレスティア国の国々たちの被害は深刻らしく。


 それぞれの国の大使たちも俺を招聘するのにあたって順番による駆け引きには感心を寄せたものの、俺の立場に関しては、好意的な見方をしてくれていた。


 唯一、悪感情を剥きだしに接してきたのは、近衛師団団長のプラントン男爵だ。


 アポロディーナから聞き出したところによると、俺が貰った伯爵位に一番近い男として名前が挙がっており、俺たちが召喚されてこずにダンジョンの1つでも攻略すれば十分にそれを受け取れるところだったらしい。


 もちろん、この男にしても陛下の手前、陛下の居ないところでチクチクと嫌味を言うくらいだった。


「貴殿の実力を是非とも、見せて頂きたいですな。」


 どうやら、ひ弱そうな男で大丈夫かと言いたいらしい。


 確かにこの男は筋骨隆々で剣で一対一で戦えば、かなり強いに違いない。


「まあまあ、今回はダンジョン攻略ですからな。剣は王国一と言われる貴方でも遅れをとるかもしれませぬぞ。」


 横からメルハンデスが煽ってくる。


 メルハンデスにしてみれば、俺に対する対抗心でダンジョン攻略をより一層早く進められるならばそれに越したことはことはないからだ。


 それにアポロディーナから聞いた話では、この男、冒険者に対して騎士という餌をチラつかせて消耗品のように使っているらしい。


 まったくこのジジイにこの孫ありと言ったところか。


 こちらの感情も煽ってくれる。


 まあ、明らかにこの男に対して悪感情を持っているのが丸わかりなのがそれらしくて笑えるところだ。


「剣については、ド素人でして、是非ともご教授頂きたいですね。」


 これは、本当だが最近は、運動代わりにさつきにフェンシングを教えてもらっているのでレイピアくらいなら扱える。


 指輪の『思』を使って思考速度を10倍にすれば、さつきと多少なりとも打ち合える程度にはなっている。


「それならば、一戦お教えいたそう。」


 相手は早速この提案に乗ってくる。


 この機会に徹底的に潰せば、自身のプライドも維持できるだろうし成り上がることもできると思っているようだ。


 その後の話し合いで、翌日、近衛師団の訓練所で行われることになった。



・・・・・・・



「この一戦に勝ちましたら、アポロディーナ嬢への求婚の件を考えていただきたい。」


 翌日立会い人として名乗りを上げたメルハンデスに向かって、あの男がなにかを訴えている。


 どうやら、これまで求婚の名乗りをしたくても、メルハンデス側が拒否していたらしい。


 いつのまにやら、剣の練習が真剣勝負にすりかえられているみたいだ。


 アポロディーナからもあの男を嫌っている様子が見られたのでその意志を尊重していたのだろう。


 今回も否と答えるに違いない。


「私のために戦っていただけますよね。」


 だが、アポロディーナから返ってきた答えは、想像した答えと違うものだった。


 真剣な眼差しと言葉に込められた威圧に思わずたじろぐほどだった。


 なぜ?


「よかろう。」


 俺が可とも否とも答える前に勝手に話が進められる。


 なんで?


 まさか、こんな何時いなくなるかわからない人間に大切な孫を嫁にやりたいと本気で思っているのだろうか。


 まさかね。


 だが、これでこちら側も真剣に勝負しなくてはならなくなった。


「社長・・じゃなかった。トム、あんな男、叩きのめしてやって。」


 渚佑子も止めるどころか怒りに燃えている様子。


 やはり、過去に異世界でなにかがあったらしい。


 流石にそのことに触れられる雰囲気ではない。


 本当に剣の訓練をしたかっただけなんだけどなぁ。


 例の紐パンがあるから、俺自身は肉体的ダメージは受ける可能性は無くても接近戦になった場合、近くに居る人間を守れないのは、つらいものがある。


 いざとなれば、拳銃を使うことも考えるが、何年間も使えるほど弾に余裕が無いのだ。


 だから、ここに居る間だけでも、剣を多少なりとも扱えるようにしておきたかったのだが・・・。


 どうやら、教えてもらえるような雰囲気ではないようだ。


「間にあったようじゃの。」


 そこへ1人のご老人が走りこんでくる。


「アンド爺さん、どこから聞きつけてきたんだ。まったく、イベント好きだな。」


 えっ。


 俺は指輪を『鑑』にしているせいで、目の前のご老人が陛下だと解かるのだが、周囲を見回すと苦笑いをしているメルハンデスだけが解かっているらしく、それとなく周囲を窺っているくらいで、各国の大使も近衛師団の団員たちも解かっていないようだった。


 俺はメルハンデスと視線を交わす。


「こちらは、冒険者ギルドの最高顧問アンド・レ・クリス殿だ。魔法陣の研究の第一人者で今回のダンジョン攻略にも多くの助言をしてもらっているのだよ。」


 おいおい、この大陸の冒険者ギルドは、国とは別組織だと聞いていたのに、国王が兼任しているのかよ。


 しかも別人を装っているらしい。


王道的展開を期待されたかもしれませんが、王が働く、王働的展開だったりします(笑)

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― 新着の感想 ―
[一言] 序盤から登場する、ですが近衛師団団長のプラントン男爵ですが、近衛師団長と言えば国の騎士団でトップであり通常は王都を守護する最強騎士団です(表向きは)。 なのに例えプラントンが王国一の強さを…
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