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第1章-第11話 だいさんじ

お読み頂きましてありがとうございます。

「あと渚佑子が『蘇生』魔法を使えることは、極秘でお願いします。」


 こんな能力があると広まってしまったら、パニックになること請け合いだ。


 各国の王族・貴族・大商人が詰め掛けてくるだろう。


 そうなればダンジョン探索は行われなくなりかねない。


 たとえダンジョンで使うにしても、治癒が間にあったことにして、記憶は混乱していることにすれば問題ないだろう。


「うーん。そうであろうな。何にしろダンジョン探索が最優先課題だ。もしどこかから漏れても、私を窓口にすれば問題にならないだろう。」


 つまり陛下の御眼鏡にかかった人間だけが受けられるということだろう。この国にある種の特権を与えかねないが、この方のことだから、ワザと漏らすようなことも無ければ、私事に利用することもないだろう。


「死後1時間までが限度としておいたほうがいいようですね。よろしくお願いします。」


 下手をすると権力者が戦争を仕掛けてでも、『蘇生』魔法を使いたいということになりかねないからだ、



・・・・・・・



「大変申し訳ないことをしました。」


 国王主催の晩餐会が始まる少し前、陛下とアポロディーナがメルハンデス殿の説得に成功したと聞き、本人の了解を取ってメルハンデス殿の部屋にお邪魔した。


 開口一番に彼を追い詰めてしまったことを謝ったところ、陛下とアポロディーナとメルハンデス殿どころか渚佑子にまで呆れた顔をされてしまった。


「貴方の宰相としての矜持を傷つけてしまったのですね。私の考えが甘かったようです。」


 メルハンデス殿は、しばらく口をパクパクさせていたが、そのまましばらく無言のまま、ハァーと溜息を吐き、首を左右に振る。


「過去の自分に言ってやりたい・・・。なぜそんなことをしたんだと、この人を見てなぜ信用できなかったんだと・・・。全く見る目が無いにもほどがある。」


 緊張した面持ちで話を聞いていたアポロディーナは、気が抜けたのかヘナヘナヘナ~とその場に倒れこんでしまいそうになったので咄嗟に支える。


「あっ・・申し訳・・・ありがとうございます。」


「なんだ。ディーナ、だらしないぞ。そんなことでは、まだまだ家督を譲ってやれないぞ。それとも、閣下のところへ嫁に行くか?」


 メルハンデス殿は、そう言うと、カッカッカと笑う。


 もう大丈夫そうだ。


 まあ、実際に一切合切の記憶が消えているから、こんなに簡単に復活できたのだろうけど・・・。


「いえ・・あの・・・その。」


 アポロディーナが真っ赤になるが身体を離してくれない。


 腰でも抜けているのだろうか。


 彼女の身体から大人の女性特有の香りが漂ってきて、こちらが赤面しそうだ。


 やばい、やばい。


 そう思って彼女の身体をそっと離そうとするのだが、腰に回った腕に絡め取られてしまった。


「そうか、そうか。かまわんぞ。」



・・・・・・・



「ジャルジェ。全くお前というやつは・・・。」


 心身ともに復活したらしいメルハンデス殿を目を細めて見ていた陛下は、そうつぶやいた。


「心配かけて、すまん。アンドレ。」


 話を聞いてみると、彼らは幼馴染らしい。


 今では影も形もないが偶々、王宮に連れられてきていた美少女然とした透けるような金髪のメルハンデス殿にひと目惚れしたらしい。


 しかも、その場で愛の告白もやらかしたらしい。


 誰かさんとは違い、流石にキスをしようとはしなかったらしいが・・・。


 そう、陛下は恥かしそうに言う。


「全くだ。その報告を聞いたときにどれだけ心が傷ついたと思う。責任を取ってもらうからな。」


「仰せのままに。」


 それまで幼馴染同士らしい会話だったのが、メルハンデス殿が膝をつき、臣下として答える。


 それを見ていた陛下は、苦々しい顔を一瞬したがすぐに表情を改める。


 もしかするとあのまま、メルハンデス殿が死んでいたら、陛下に恨まれていたのかもしれないと思うと背中がゾクゾクっとした。


 信頼できると思う人に恨まれるなんて、とても耐えられそうにない。


「改めて、ありがとう。」


「それは、彼女に・・・。」


 陛下がこちらに近づいてきた時点では、アポロディーナは離れている。


 腰が抜けたのは治ったようだ。


「俺もこの世界の『蘇生』魔法が渚佑子に使えるとは、知らなかったので・・・。」


 そう、あのときの彼女の機転がなければ、大惨事になっていたに違いないのだ。


 そう思い、渚佑子を前面に押し出す。


「ほう、よく見ると、メンコイ子だのう。どうだ、後宮に入らぬか?贅沢をさせてやるぞ。」


 陛下はどうやら美少女好きなようだ。


「断っても大丈夫だぞ。」


 渚佑子の様子を伺うと酷く怯えているようだったので声をかける。


 彼女は大切な従業員だ。


 話してはくれないが、昔召喚された異世界でなにかがあったらしい。


 渚佑子が怯えるなんて、よほどのことがあったのだろう。


 渚佑子は答える代わりに慌てて俺の後ろに逃げ込む。


「陛下、申し訳ありませんが、彼女にそういうことは止めていただけませんか?」


「うむ。すまんかった。表立った謝礼はできないが、なにかのときには力になろう。」


 どうやら、メルハンデス殿の自殺騒ぎ自体が無かったことにされるらしい。


 まあ、こちらとしても『蘇生』魔法が表に出ない分、助かるのだが・・・。


けっこう、いろいろと綱渡りだったり・・・。



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