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第1章-第5話 しょくぎょう

お読み頂きましてありがとうございます。

「よく調べられましたね。その通りです。」


「上位世界の第3平行宇宙へ行く方法は、ありますか?」


 あわよくば上位世界に関する情報が貰えるかと思い質問してみる。下位世界と日本と技術力の差を痛感している俺としては、そのさらに上を行くであろう上位世界の技術に関心を寄せたのである。


「ありません。但し、貴方の能力を使えば、偶然行き着くことができる可能性は、あります。あまり、お勧めしませんが・・・。」


 『界渡り』魔法を使う場合のイメージの問題なのだろう。


 今は、行きたい世界や誰かの近くといったことを思い浮かべて唱えているが、単純に人間が住めるところとか、人間が住んでいるところとか思い浮かべれば、幾つあるのか解からないが平行宇宙のどれかには、渡れるのだろう。


 もちろん、人間が住めないような環境や戦争状態のように行ってもすぐに死んでしまうような環境も平行宇宙にはあるだろうから、お勧めできないのだろう。きっと、俺の先祖もそうやって平行宇宙を渡ってきたに違いないのだから・・・。


 その後もいくつか第3平行宇宙について質問してみたが、どれも答えられないらしい。上位世界のことには、答えられないと思ったほうがよさそうだ。


 だが、これで今後の動き方は決定した。


 渚佑子さんには悪いが、休暇は3日ある。暫く召喚先に厄介になることにする。できれば、その間に最大HPを上げて、少しでも寿命を延ばしたいのだ。


 最低限度、マイヤーの生んだの子供が成人したあともしばらく生きていられるだけは欲しいところだ。


「渚佑子さんの経験では、剣士がHP上昇率が高いのかな?」


 『勇者』としての経験をしているなら、仲間に剣士が居てもおかしくはない。


「いいえ。意外と1番高いのは農夫と鍛冶ですね。農夫は腕力と脚力が高いのが特徴です。鍛冶は、腕力が飛びぬけて高いのが特徴です。その次が剣士で腕力、脚力、素早さが高くなります。」


 農夫と鍛冶か。どちらも領地運営で役に立ちそうな職業だ。鍛冶は特に日本の技術を異世界に導入する場合に是非とも欲しい能力だ。


「ですが鍛冶は、MPが下がってしまうので農夫がお勧めですね。」


 渚佑子さんの話では、鍛冶に関する魔法の消費MPは格段に減るものの、最大MPが大幅に減ってしまうという。


「君の鑑定魔法で今の俺を見てもらえないかな。」


 渚佑子さんに鑑定魔法を使って貰った結果、HPが100、MPが25600と出た。農夫ならレベルを上げるごとに3倍の上昇率だからレベル5で24300だ。


 ここまで、上げるのが今回の目標だ。


「女神様、召喚先はどういったところなのですか?」


「第139平行宇宙は、強い魔術師が出現しにくい世界です。魔術師の出生率も低いがMP回復ポーションが存在しないため、成長しにくいみたいです。そして、召喚先のアルテミス王国の宰相兼王立魔導師協会の会長が今回の召喚者となります。」


 レアのMP回復ポーションなら沢山、自空間に入れてあるから大丈夫なはずだ。特に戦争でどれだけ消費するか解からなかったから、買い付けられるだけ買ってあったのだ。


 相手は、王国の要である宰相か。どうすれば、厚遇な条件を引き出せるだろうか。


 細かい事情は女神にも解からないということだったが、召喚魔法は複数の魔術師が合同で行っているものらしい。


 王国の数少ない魔術師をかき集めて召喚するのだ。


 ただごとでは、あるまい。


 かなり危機に逼迫していると見ていいだろう。


 しかし、相手も宰相だ。


 そんな簡単に弱みを見せるとは思えない。


 まずは、相手を慌てさせる必要があるだろう。


 渚佑子さんへのユニーク魔法の付与が完了し、そのまま召喚魔法による移動の波に乗ることになった。


「それでは、いってらっしゃいませ。」


 渚佑子さんとしっかり手を繋ぎ、女神の見送りの言葉を聞くとあの世界の境目を越えるときの気持ち悪さが襲ってくると一瞬にして世界が変わった。



・・・・・・・



 目の前には、数十人の揃いの格好をした人々が居り、その真ん中に居る小柄な老人こそが今回の召喚者である宰相なのだろう。


「ようこそいらっしゃいました。勇者殿。」


 そのご老人が喋る。言葉こそ慇懃だったが目が笑っていない。


「我輩は、チバラギ国侯爵トム・ヤマーダ・チバラギだ。此度の召喚、大儀であった。この者は侯爵家筆頭魔術師である。」


 渚佑子さんと俺は事前に話し合い。俺は侯爵としての正装を、渚佑子さんは、初めて召喚された先で貰った国宝級の賢者としての装備を身に付けている。


 また、普段の言葉使いでは嘗められてしまう恐れもあるため、鷹揚な言葉使いにわざわざ変えた。


 召喚相手が宰相ということで、こちらの身分を前面に出せば、それなりに考慮しなければならないだろうという思惑もあり、このようにしたのだが、さてうまくいくだろうか。


 俺の言葉に動じなかったのは、目の前の宰相だけで他の人たちは目に見えて動揺しているようだった。宰相が隣に居た人物に小声で何かを話しかけるとその人物がスッと席を外した。


 しかし、宰相の顔を良くみると顔が引き攣っているようだった。自分の宰相としてのプライドに掛けて表立って動揺するわけにもいかないのだろう。


「ようこそ、侯爵閣下。アルテミス王国宰相、メルハンデスと申します。此度の召喚に応じて頂き、ありがとうございました。召喚理由についてお話したいと思っております。歓迎の席を用意致しますのでしばらく城内でごつろぎください。」


 内心の動揺を押し隠し、そう言葉にするのが精一杯の様子だった。


これ以降、トムの喋り方が公式の場所だと変わります。

混乱するかもしれませんがご了承願います。

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