第5章-第64話 さつがいびでお
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「トム!!」
「ああ聞いた。あいつの殺されたビデオが流されたんだって?でも、それは贋物だな。きっと、今回は日本国の脅しの手段として使えなかった。だが実は生きていて再び脅しの手段として何度も利用されるんだ。テロ支援国家がよく使う手段じゃないか。」
過去に日本政府の動きを封じるために殺したにも関わらず、生きていると思わせる情報を流し続けることで日本の世論を操作し日本政府の動きを鈍らせ、それによりアメリカ軍の動きを鈍らせるという手段を取った国が過去にあったのだ。
「トム。信じたくないのは解かるけど・・・事実なのよ。ビデオを調査したアメリカやイギリスは信憑性が9割以上だって。」
アヤは、そう言って食い下がる。だがそれもこちらの計画の内だ。
「それは俺がそう発表するように頼んだ。贋物だと認定されると本当に殺され兼ねないからな。あいつを捕捉できなくなったら、救出計画を再考しなければならなくなる。この計画には、あいつの命だけでなく。他の人質の命も掛かっているんだ。」
こういう手段を使用してくれたことに感謝しなくてはな。流石に初め聞いたときは、ドキッとしたが・・・。
「でも・・・。」
アヤは、まだ不安なようだ。おかしい、アヤとアイツは直接顔を交わしたことなど無かったというのに心配し過ぎだろう。でも俺は確信があって言っているんだ。
「大丈夫だ。あいつは生きている。この潜伏用の住宅に居ても俺の空間魔法で十分に補足できている心配するな!」
もうすでに潜伏用の住宅に見立てた基地にSASの隊員たちを連れてやって来ている。
「ええとそれは、あの人を24時間捕捉し続けていたったこと?なんかムカつくわね。」
矛先をこちらに向けられても困ってしまう。実際には1時間毎にその場所に居るか確認していただけなんだが・・・。そんな事を言っても無駄だろう。やっぱり女性に口では負けてしまう。もう何も係わり合いの無い元妻へそんなに敵愾心をむき出しにされても・・・。
・・・・・・・
いよいよ作戦開始である。
「ここでは『隊長』とお呼びしたほうがいいですよね。」
フランシス軍曹がそう言ってくる。彼らには、部分的に俺のことを伝えてある。でもいまの姿は自分の家族を殺されたウィルソン隊長なのだ。部隊と上層部の一部以外は、ウィルソン隊長が今回の作戦の指揮を取っていると思っている。
ある意味、その姿は自分を投影した姿だ。家族同然の従業員と友人を殺された雪辱戦なのだ。
「ああそれでいい。まあただの案内役なんだがな。ポカをして、俺に案内役以外の仕事をさせないでくれよ。」
俺の仕事は、彼らSASに人質が居るところまで送り届けることだ。人質救出は彼らが専門家だ。俺が口を出すことではない。一応魔法を使うことで彼らと同等の動きはできるようになるところまで訓練を積み重ねたのだが・・・。
あとはSASが負傷して戦線を離脱しなくてはならないときや救出した人質を『移動』でアヤのところまで送り届ける役割だ。
「もちろんだとも。俺も傷口をあんなふうに抉り取られるなんて持っての外だからな。」
SASはそうなった場合、傷口をかなり大き目に抉り取った上でアヤに治癒魔法を使ってもらい。回復次第、戦線に戻ってもらうという過酷なサイクルが延々と繰り返されてしまうことになる。
まあそれが必要なのも、俺やアヤのことを知る人間が最低限にしてもらう必要があったからだ。SASの部隊も本来は海外の人質救出を行う専門の部隊が居るのだが無理を言ってこの部隊にして貰ったのだ。
「では、行くぞ!」
目標となる人質の隠し場所に繋がるトンネルの上には、多くの敵兵士が投入されており、おいそれと近づくことはできない。そこでどうするかと言うとこちらも即席でトンネルを作成し繋ごうという作戦である。
まず竪穴を100Mくらいトンネルのどてっぱらに穴を空ける高さに作る。もちろん空間魔法で地面を取り込んでいるだけだ。俺は『フライ』を使って降り、横穴をトンネルに繋がる寸前まで作る。
それに対してSASの隊員たちは縄梯子で降りてくる。
突入の準備が済み隊員たちの持つライトが消される。
それを合図に横穴をトンネルに繋げた。
よし。周囲には誰もいないようだ。
先陣は隊員たちに任せる。
例のパンツにはすでにMPを投入済だったが出合い頭の対応などは、彼らに任せたほうがいいだろう。彼らは人質になっている人間の顔を全て覚えるという芸当ができているからだ。
先頭のフランシス軍曹とは無線で繋がっているので俺は真ん中でいいはずだ。
まずは元妻の居るところに向かう。そこで詳しい情報を得る予定だ。事前の調査では、人質は纏められて監禁されているということだった。
縦横無尽に走るトンネルを小走りに右・左と指示をだしていく。できうるだけ最短距離で人がいないところを狙う。
途中数人の敵に出会うが事前に無線で言ってあるため、簡単に排除していく。
『ここか?』
フランシス軍曹から連絡が入る。緊張し切った声だ。
『そうだが?』
『扉は開いているが、内部は敵だらけだ。本当にここなのか?』
『そちらに行く。』
さあいよいよ戦いの火蓋が・・・。
少年娼婦楽士・マムのおもてなし ~娼館『チェリーハウス』へようこそ~
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完結しました。ようやく並行連載作品が終わりました。
こちらに注力しますね。




