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第5章-第62話 うわきしょう

お読み頂きましてありがとうございます。

 その日は、ドラゴン国に泊まることになり、迎賓館の宿泊施設のほうに通された。さすがに絢爛豪華だ。煌びやかさで言うと英国の宮殿に勝るとも劣らない。


 もし、エルフの里に行ったときのためと用意したチバラギ国の貴族としての正装もあるし、それに負けないドレスをアヤも持ってきているので、問題はない。


 この国にも、英国と同様にアフタヌーンティーの習慣があるようで、軽く1食分はあるお菓子やサンドイッチで腹ごしらえをしたあと、少し休憩を挟みパーティーに参加した。


 パーティーは、立食形式らしく、簡単なおつまみとドリンクが配られている。


「楽しんでおられるかな。」


 目の前には、黄色い短髪の丸っこい顔をした男性が居た。もちろん、イエロードラゴンだ。ドラゴンたちの中でもさらに温厚そうな感じの方だ。


 話してみると見た目通りで気遣いをいろいろしてくださる優しい方だった。


「そういえば、イエロードラゴンという種族や通称もあの勇者たちが付けたのですか?」


「そうだ。しかも愛称まで決っているらしい。ちなみに、我は『ダイちゃん』らしい。」


「そんなことまで?」


「ああ、しかも好物まで決められておったぞ。一度も食べたこともないものを好物だなんて言われてもな。しかも、人族の国に赴いて探してもどこにも無いではないか。」


「もしかして、カレーですか?それでしたら、ここにございますが、食べてみますか?」


 俺は、そう言って、牛丼のスキスキの牛すきカレーを取り出す。


「ほう、これがカレーか。なんとも芳しい香りがするの。折角だから、頂くとするか。」


 そう言って、イエロードラゴンこと、ダイちゃんが食べ出す。始めはおっかなびっくりだったが途中から凄い勢いでペロっと平らげた。


「辛いが旨い、旨いが辛い。これは、病み付きになりそうだ。これは、チバラギに行けば食べられるのか?」


「ええ、商業都市で販売させて貰っています。ほかにも、ハンバーガーや牛丼・うな丼にドーナツもありますよ。」


 そう言って、テーブルにズラズラっと並べる。


「美味しそうなものを食べているじゃない?私にも頂けるかしら。」


 現れたのは、桃色の長い髪をした女性。ピンクドラゴンことペギーさんだ。


 彼女が食べているのは、ドーナツだ。


「美味しい!この世にこんな美味しいものがあるなんて。」


 この世界には、甘味料がすくなく。砂糖もほとんど流通していないらしい。こちらで出している100Gショップで砂糖は出すと直ぐ売り切れるくらいのヒット商品だ。夕方に頂いたアフタヌーンティーに出されたお菓子も素材の甘さだけのお菓子なのだ。島だから余計に流通していないのかもしれない。


「そういえば、さきほど、私が空間魔術師だと聞かれた際に、王が酷く驚かれていたのは、どういうことなのでしょうか?」


 俺は、さっき聞けなかったことを聞いてみることにした。胃袋を掴んでしまえば、口も緩くなっているはずだ。


「ああ、あれね。空間魔術師の魔法に遠隔操作というのがあってね。魔法具のカメラを使い。リーダーの奥さんに頼まれて、初代チバラギ国王がリーダーの浮気写真を取ったと聞いたわ。それまでは、浮気をしている気配は、あっても証拠が無くて困っていたらしいわ。そうだ。リーダーの奥さまもここに連れてきましょう。」


 そう言って、離れて行ったが、暫くして1人の女性を連れて戻って来た。この女性は、赤い髪をしている。


「こちらがこの国の最大勢力を誇るレッドドラゴンの長であり、リーダーの奥さんでもある。速川エミさんよ。」


「こんばんわ。なるほど、初代によく似ておられる。で、見せて頂けないかしら、その動く絵というものを。」


 俺は、例の眷属の暴れているシーンを流して見せる。


「ふ・ふ・ふ。これならば、誤魔化しもできまい。初代に撮っていただいた写真では、偶々その場に居ただけだとか、言い逃れをされてしまったが・・・。」


 暴れているシーンが終わり、続けてエルフの次期長との話し合いのシーンが流れる。もちろん、音声もバッチリ入っている。


「おお、音まで入っているのか。口説いていたなら丸解かりではないか。まあ、まずは、脅しから使わせて頂こう。トム殿の名前をお借りしてもよろしいでしょうか?」


 一応、俺に尋ねる形だったが有無を言わさない迫力だ。俺は、素直に頷くしかない。初代のチバラギ国王は、よくこの国に出入りしていたようだが、俺はそんなに頻繁にこれない。そうだ!これを渡せば、いいかもしれない。


 俺は、音声録音用のマイクロレコーダーを乾電池と共に手渡し、使い方を説明した。会議などで頻繁に使うので持ち歩いていたのだ。もちろん、テープは新品だ。


「なるほど、これがあれば・・・。よいものを貰った。この乾電池というものが切れたら、チバラギ国で買えばよいのだな。」


「ええ、申し訳ありません。あまり、お手伝いできなくて。」


「よいよい。初代チバラギだけでも50年余り脅せたのだ。我も使えるものなら、一度使えば、

暫くはあやつの浮気癖も鳴りを顰めるだろうというものだ。」


「おまえ、こんなところに居たのだな。今紹介しようと思っていたところだったんだ。」


 後ろから、ブラックドラゴンことドラゴン国陛下が声を掛けてきたのだ。


「ええ、聞いたわ。チバラギの子孫だそうね。動く絵も見せて頂いたわ。凄いわね。アレ。」


「あ、ああ。そ、そうだね。」


 焦っているのが丸解かりな口調になっている。


「しかも、初代チバラギと同じ空間魔術師だそうよ。今度、いろいろとお願いしてみようかしら。」


「トム殿は、お忙しいようだから、ほどほどにしておきなさい。」


「はーい。」


・・・・・・・


「そうか。そんなことがあったか。では、俺はもうお役御免ということかの。」


 翌朝、ドラゴン国を辞去してセイヤの所へ報告にやってきたのだ。俺が空間魔術師になったことを報告するとなぜか残念そうな顔でそう返してきたのだ。


「そうですね。しばらくは、今のペースのまま行き来しようと思っていますので、召喚の間は、そのまま使わせて頂いてもよろしいでしょうか。」


 宝物庫で読んだ初代国王が残した魔術書に界渡り魔法は、人もしくは場所を指定することができる。しかも、半径20M以内に人のいないところ、とか曖昧な指定もできるらしい。


「かまわんが、来たら必ず顔を見せるのだぞ。」


「それは、もちろん。」


 召喚の間だけ使ってセイヤに挨拶に行かないなんてありえないことだ。今度は、セイヤの後方5Mとかでもいいかもしれない。


次は、またまた、あの人の登場です。


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