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第5章-第55話 ごぶりん

お読み頂きましてありがとうございます。

「ぱぱぁ。こわーぃ。・・・・・・なんちゃっての。」


 これは、どうリアクションすればいいのだろう。目の前で召喚したセイヤが身体をくねらせている。正直、気色悪い。


 だが、前回、異世界に来たときに、アキエに会いにいったら、こう言われたのだ。どうやら、戦闘に参加していることで立ち上る雰囲気が怖かったらしい。


 いつもなら、この手のギャグはスルーするところなのだが、流石に少し堪えたので、暗い顔をしていたらしい。


 セイヤが近づいてきて、ガッシリと抱きついてきたのだ。男に抱きつく趣味も抱きつかれる趣味も無い。必死に抵抗しようとするが、全く力では、敵わない。そのうち、セイヤは、頭を撫で始める。


 仕方が無いのでされるがままに放っておく。大きな身体に包まれ撫でられていると眠くなってきたので身体を預ける。身長差があったので子供に返ったような気分だ。


 カシャ。 ん、何か音が・・・・・・。


・・・・・・・


 ふと起きると、後宮の別宅のベッドルームに寝かされていた。どうやら、あのまま、寝てしまったようだ。周りを見渡すとさつき、アヤ、ミンツにアキエまで心配そうに覗き込んでいた。


「パパ、大丈夫?」


 どうやら、皆に心配を掛けてしまったようだ。このところの平日は、あの組織への対策に掛かりきりになり、合間合間で自社やZiphoneの仕事を入れ込んでいたせいで睡眠時間は僅かだった。異世界で睡眠を纏めて取る習慣になっていたのだ。


「ああ、大丈夫だ。」


 俺は、アキエの頭を撫でながら言った。


「こんなときにすまんが、アルメリアの部隊が随分とこちらに迫ってきてるのだ。偵察に行って来てはもらえぬか?隣国は、人虎国だから、そうそうは突破されないと思うのだが・・・。」


 俺は、気合を入れなおした。途端にアキエがエトランジュ様の後ろに隠れる。そ、そんなにパパ怖いのかな。


「わかりました。で、いまの位置は、どこでしょうか?」


「妖狐国の先にあるゴブリンの集落だ。」


「ゴブリンですか。あれって、魔獣じゃないのですか?人間を襲って、攫った女性に子供を産ませると聞いたことがありますが・・・。」


 ツトムから説明されたラノベによる知識だが、魔獣の討伐を行った際にこの世界の冒険者ギルドで知ったものも大差がないことがわかっていたのだ。


「うむ。間違ってはいないが、元々ゴブリンは、植物と人間のキマイラだという説がある。だから、森の民として受け入れられているようだの。ゴブリンにもメスがおり、集落を形成する農耕種族だ。きちんとした集落が形成しておれば、人間を襲わないようだの。逆に集落を襲うことでオスだけの集団が人族の国に居つくことのほうが大問題なのだ。」


・・・・・・・


 行軍は、アルム少尉を含む右軍斥候部隊に俺とアヤが同行する形だ。今回は、軍を移動させるため、ギルドを使用した移動はできない。だから、俺とアヤが単独でギルドを利用し、合流することになっている。というのも、右軍斥候部隊は陛下の指示の元、既に妖狐国まで到達しているというのだ。


 ゴブリンの集落は、ゴブリンが社会を形成できないこともあり、国としては、成り立っていない。だが、その繁殖力で優位にあるゴブリンが占める土地は、妖狐国の数十倍にも登るという。


 先行していた斥候部隊が集めた情報によるとアルメリア軍は、そのゴブリンの集落に差し掛かったところらしい。


 アヤを今回の偵察に連れてきたのには、訳がある。彼女の光魔法には、肉体強化の魔法があるためだ。1回につき、30分程だったが、俺とアルムとアヤ本人が『俊足』の肉体強化魔法を受け、妖狐国からひた走る。


 まあ、情けないことに一番肉体が鍛えられていない俺は、指輪を『足』に変えて、さらに強化しているのだが・・・。


 ほとんど獣道といっていい道をひた走ること1時間ほど経ったときだった。


 数あるゴブリンの集落でも、最大級といっていい、ある村に到着した。


 ここで、情報を収集して陛下に報告すればいいらしい。俺は、指輪を『翻』に変えた。


・・・・・・・


「貴様たち、人族だな。」


 俺たちが村に入っていくと年は取っているが屈強といっていい、鎧を付けたゴブリンの集団に囲まれた。


「はい。チバラギ国の者です。」


 直ぐには襲ってこないものの、剣呑な雰囲気だ。


 まあ、今、アルメリア国という人族と交戦状態なのだから、当たり前だろう。


 事前にエルフの里からチバラギ国は、森の民と諍いを起さないことを通達してもらっているのだが、アルメリア国と同じ人族であるというだけで信用されていないことは、明らかだった。


「よし、お前だけこちらに。」


「トム!」


「大丈夫だ。例のパンツもあるし、いざとなれば『移動』を使うから。」


 俺は、そのまま、村の中央に向かって歩き出した。街頭には、ものめずらしげな目をしたゴブリンたちが居るようだが、女性や子供たちばかりだ。


 そして、村の中央部にひと際大きな家屋が見えてくる。俺を連れた五文厘が家屋の前に立つゴブリンに挨拶をしている。


 きっと、この村の有力者の家なのだろう。しばらく、家の前で待たされたが、許可が出たようで、家屋の中に連れ込まれた。


人使いが荒い陛下ですね。


異世界でも休息できないらしい。


ちなみに領地のほうは、領民に任せる段階に進んでいます。


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