第2章-第12話 かいてん
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100円ショップの商品で100Gでも購入してくれそうな商品を並べた。単3電池4本、LED懐中電灯、LEDルームライト、目覚ましトケイ、腕トケイ、壁掛けトケイ、ピーラー数種、スライサー数種、トイレットペーパー4巻、ティッシュペーパー1箱、石鹸1個、ガラスコップ類数種、スプーン2本、フォーク5本、キッチン鋏、園芸鋏、衣類圧縮袋、炭、着火剤。
さらに老眼鏡を600G、虫メガネを300G、元値1000円の腕トケイを1000Gで、また、単三充電池1本30Gで売るが、切れた充電池1本10Gで買い取る。太陽光発電で得られた電源は、この充電と店舗内のLEDライトとレジスター用である。
来週から試験的に開店して、店舗で販売するつもりだ。お店の2階に在庫となる商品を置くと後宮に戻った。
・・・・・・・
後宮の自分の部屋に戻ると、案の定、娘とエトランジュ様が一緒にヨウツブを見ている。今度は○KB48のMVのようだ。
「それで、今日は何時間みていたのかな?」
娘の眠そうな目を見ているとかなりの時間見ていただろうことが容易に想像ついたのだ。
「あっ3時間ほどです。はい。」
エトランジュ様は言いながらも顔をあわせようとしない。目がしょぼしょぼするようで、しきりに目元を揉んでいる。一体何時間見ていたのか。
「子供は幾らでも見たがるでしょうが、そこは大人のエトランジュ様が気をつけて、見せないようにしてください。よろしくお願いします。」
俺が頭を下げるとエトランジュ様はバツが悪そうな顔で頷いた。
・・・・・・・
俺は召喚時に保管しておいたあるものを冷蔵庫から引っ張り出し、厨房に行った。
「これはこれは。トム殿、何か御用ですか?」
「ああ、これを夕食の際に出して頂きたいのだが・・・。」
先程、出したものを渡す。
「これは・・・、肉ですか?」
いつも王の食卓にしては質素だと思ったのは、肉料理が鳥しか使われていないためだ。そこで日本から国産黒毛和牛のロースを200グラムを6枚持ってきた。予め、塩のみ、塩コショウ、カレースパイスで下味をつけてある。
本当は、松阪牛を持ってこようと思い、松阪出身の友達に相談したところ、本物の松阪牛のロースを買う場合100グラム5000円くらいするという。
その友達の話では、特定の販売店のみ扱っているそうで、それ以外のものは、他の和牛の最高級のものを松阪牛と偽って販売しているらしい。
そういえば、どこの百貨店でも肉売り場には松阪牛が売っているが、別に松阪市といっても北海道くらいの広さがあるわけでもない只の市なのである。どう考えても、日本中の百貨店の販売量と生産量が合っていないことは解る。
ましてや、そこらのスーパーやディスカウントストアに売っている松阪牛なんて何を言わんやである。結局、その友達の勧めに従い、自分の目利きで選んだ国産黒毛和牛を持ってきたのだ。
「はい、こちらにはこういったお肉はないのでしょうか?」
「そうですね。もっと南方の国に行くとバッファローという野獣がいるそうです。王の食卓にも1度、商人が持ち込んだものをお出ししたことがございます。そのときは、こんなに脂身が入り混じったものではなく、赤身ばかりだったように記憶しております。」
「予め下味をつけてありますので、そのまま焼いて出して頂ければかまわないのですか・・・。」
「はい、わかりました。ただ、失礼ですが毒見をさせて頂きますので3割ほど分量が減ってしまいますことをご了解頂けますでしょうか?」
「はい、もちろん。できれば、この3種類を均等に毒見してください。使っている香辛料が違いますので・・・。」
夕食は、皆で摂った。娘は家ではほとんど1人で食事することが多い。今日の食事風景はいつもよりにぎやかなようだ。
「で、よい商品はあったかの?」
「ええ、おかげさまで800KGまで入るものを入手できました。しかも、王宮前に良い物件を見つけまして、そこで商売をしようと思っています。」
俺がセイヤに場所をつげると驚いていた。
「ほとんど目と鼻の先ではないか、では、明日にでも覗きに行かせてもらおうか。」
「はい、お待ちしております。では、何時くらいに来られますか?」
「そうだな、2時くらいには行けると思う。」
「では、それまでに準備させて頂きます。」
侍女が俺が持ち込んだ肉を食卓に並べる。
「ほう、バッファローの肉か。ひさしぶりだの。」
「いいえ、そちらはトム殿が持ち込まれた肉です。」
「そうなのか?」
「はい。あちらの世界では一般的に食べられているものです。味付けを塩のみ、塩コショウ、カレー粉の3種類にしてみましたので、感想をお聞かせ頂きたいのですが。」
以前、侍女に聞いたときにはコショウはあるが、非常に高いそうでカレー粉なんてものは無いということだった。
「ほう、3つとも旨いが、このカレー粉というのは、特に食欲をそそるな。」
「私は、この塩コショウが気に入りましたわ。」
どうやら、コショウもカレー粉も受け入れられたようである。
・・・・・・・
娘に絵本を読んでとお願いされたので娘の寝室に行く。絵本の題は「コントあき」。娘の名前の本で、中身はいろいろいたずらを仕掛ける子供が始めは怒られるが紆余曲折の後、家族を笑顔にさせる物語だ。
娘はお気に入りなので、いったい何回読んだことだか。そらんじてしまうくらい読んだ。娘のベッドに添い寝しながら、ゆっくりと読む。もう一回、もう一回と読んでいるうちに娘は寝てしまった。
娘の部屋を出て行こうとしたところ、侍女に捕まる。話を聞くと日本から持ち込んだ絵本をこちらの言葉で書き直したいので、絵本を1度読んでほしいという。
結局、それから侍女を相手に日本から持ち込んだ10冊の絵本をすべて、読まされた。なかなかシュールな絵面だ。
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自分の部屋に戻り、風呂に入り戻ってくると・・・。そこにはエトランジュ様とセイヤの姿が・・・。
いよいよなのか。本来のお仕事である、エトランジュ様との子作りである。
「それで、何故セイヤもここにいるのですか?」
「いいだろう。居ても。」
うーん、見られながらなんてできるのか?まあ、集中すれば、なんとかなるか。
すてきなお姿のエトランジュ様が俺のベッドにもぐりこんでいく。
そのときである。遠くから、タ・タ・タ・タ・ダ・ダ・ダダダ、バタッ。
「パパ。一緒に寝よ~よ。」
娘が乱入してきて、俺を引っ張って行く。セイヤに顔を向けると、にこやかに手を振ってくれた。どうやら、今日のお役目はしなくていいらしい。
・・・・・・・・・
今朝は忙しい。昨日セイヤが店に来ると言っていたので、開店準備をするためだ。昨日置くことにした塩コショウとカレー粉を並べる。
ガラスコップには、昨日冷やした缶ビールやペットボトルのお茶を入れてお出しするので、2台の小型冷蔵庫を延長コードで1階まで持ってきている。
さらに炭のデモンストレーション用に持ってきた七輪に炭を詰める。着火は直前でいいだろ。塩コショウ・カレー粉のデモンストレーション用に鶏肉。ピーラー・スライサーのデモンストレーション用に野菜を買ってくることにする。
スクーターで出かけ、市場で必要なものを購入すると次は先週頼んだ金とプラチナのネックレスを取りに行く。
「こんにちわ。」
「これは、トム殿お待ちしておりました。こちらが商品となります。金のネックレスが8ロット分800本。くず銀のネックレスが300ロット分30000本になります。お間違えないですか?」
俺は、その場で、数を数える。よし、合っているようだ。
「こちらでは、買取はやっていないのですか?」
「はい、やっております。」
「これなんですが・・・。」
ホームセンターで買ってきた、10Mで500グラム程のアルミ製の鎖を取り出す。
「こ、これは・・・。アルミではないですか。鑑定するのにお時間がかかってしまうのですが、よろしかったでしょうか?」
「次の引き取り時には解ります?」
「はい、それはもう・・・。」
「お願いします。」
「では、こちらが預かり証となります。」
・・・・・・・
店に戻る途中にあったカフェで、紅茶とサンドイッチを食べていると、肩を叩かれた。
「ああ。これはアルム少尉ではないですか。」
「この席に座ってもよいかな?他に席が空いてなくてな。」
そこには、飲み物とサンドイッチのトレーを持った右軍のアルム少尉が立っていた。周りを見渡すといつのまにか、席が全て埋まっていた。
「ええ、どうぞ!」
「王宮前に店を出すんだって?」
思わず俺は、噴き出すところだった。あわてて、口を押さえ、口の中のものを飲み干す。
「えっ、なんで知っているんですか?」
「ああ、陛下から通達があったんだ。あの内容からすると、王宮関係者から軍、貴族にまで通達が周っているようだぞ。」
俺は自分の顔が青くなるのを感じた。やばい、てっきりセイヤと護衛と王宮の方が数名程度だと思っていたが、下手をすると100人以上の規模になるかもしれいな。デモンストレーションの材料があれでは足りないぞ。追加を買わなくては・・・。
「ありがとうございます。お話しのところ申し訳ありませんが、店の準備がありますので、これで失礼します。」
「ああ、頑張ってな。俺も後で店に顔を出すからよろしくな。」
俺は慌てて市場に戻り、鶏肉と野菜を朝買った量の20倍ほどを買って、店に戻る。七輪の炭に着火剤を使って火をつける。本当ならここからが面倒なんだが、指輪を『風』にして、炭を起こすと結構簡単に火が周っていく。さらに七輪をもう3個ほど出し。火がついた炭を押し込み、それぞれ、炭を追加していく。それぞれに指輪で炭をおこした。
次は、鶏肉に塩コショウとカレー粉で下味をつけていく。予め肉屋で小さめに切ってもらっているので簡単に味が付くはずだ。とりだしたチャックつきのビニール袋に一定量づつ入れて冷蔵庫に保管していく。2台目の冷蔵庫が野菜と鶏肉でいっぱいになるほどだ。
レジスターが置いてあった机を外に引っ張り出し、そこに紙皿を並べ、爪楊枝を置く。
もうすぐ2時だ。冷蔵庫から鶏肉を1袋づつ引っ張り出し、七輪で焼き始める。
「お手伝いしましょう。」
声が掛かったほうに振り向くとそこには、後宮の侍女が・・・。
「陛下より、手伝ってくるように申し付けられまして。」
「ありがとうございます。さっそくですが、こちらの2台の七輪が塩コショウ用で、あっちの2台がカレー粉用です。焼きあがりましたら、塩コショウは白い皿に、カレー粉は黄色い皿にいれてください。」
焼く前ならどちらが、カレー粉なのかは容易に想像がつくだろうが一応説明した。冷蔵庫の使い方も教える。あと使用したガラスコップを洗うための流し台を教えた。
・・・・・・・
初めは陛下と王宮の関係者がやってきた。
「おお、これは鶏肉をカレー粉で焼いたのか。これが旨いんだな。」
セイヤはまるで自分が焼いたかのように自慢げに言っている。まあ、後宮の侍女が焼いてくれたのだから、あまり違いはないか。
「ええ、こちらが塩コショウで、これがカレー粉になります。1つ100Gです。」
料理をする人間は少ないのかあまり大量には売れないみたいだ。でも、試食をした人は、気に入ったほうを1つ買っていく。
「陛下、お茶とお酒がございますが、どちらがよろしいでしょうか?」
「もちろん酒だ。」
毒見役の侍女に売り物のガラスコップを手渡し、缶ビールを注ぐ。侍女はうれしそうに飲み干す。おいおい、毒見じゃなかったのか。横をみるとうらやましそうにセイヤが見ている。慌ててセイヤにも缶ビールを注ぐ。
「こちらのガラスコップも1つ100Gです。」
「ほう、安いな。ガラス製なら最低でも500Gくらいするのにか。」
「はい、ジン殿、シンプルな形ですので・・・。」
「このお酒は売り物か?」
「申し訳ありません。それは、コップのデモンストレーションをするためのもので売り物ではありません。」
本当は売ってもいいのだが、アルミ缶なので10000Gくらい取る必要がある。それに冷蔵庫が無ければ、この美味しさも半減なのである。
王宮の関係者は、トケイの重要性に目覚めたのか目覚ましトケイを一人1個づつ買ってもらった。
セイヤが帰ると次は貴族が執事をつれて現れるようになり、アルム少尉を始め右軍の関係者や近衛師団の関係者が現れた。
なぜか皆に好評だったのは紙皿だ。行軍や歓楽の際にもって行きたいというので、次に大量に持ってくることにした。
老齢の貴族に老眼鏡を勧めると、一様に感動しているらしかった。また、1000Gの腕トケイも100本も持ってきたのに、あっという間に無くなった。トケイ関係は、陛下が推進していることもあってか、どんどん無くなっていく。
「あの陛下の執務室にあるようなトケイはないのか?」
「はい、これですか?」
目の前の貴族の前にセイヤに上げたのよりは安物だが、そこそこ見栄えのするトケイを取り出す。
「おお、これこれ。いくらだ?」
「はい、5000Gになります。受注生産になりますので、7日程お時間を頂きたいのですがよろしかったでしょうか?」
「ああかまわん!」
「では、こちらが予約票です。代金は商品を引き換えの際いただきます。」
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「アルム少尉、いらっしゃいませ。フォリー大尉、ようこそ。」
「なにか、陛下の警備に役立つものはないか?」
さあ、次はなにを売りつけるのか?
ヒント:ダイ○ーにはありました。




