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第4章-第49話 くんれん

お読み頂きましてありがとうございます。

 一番近いダミー人形から防弾チョッキを剥がした跡が凹んでいるが、事前に現行の防弾チョッキを使ったものと比較しても遜色ないか、軽い程度の凹み具合だ。


「すげえな、おい。しかも伸縮性自在で邪魔にならねぇじゃないか。これ全員分買うんだろ。隊長!」


 軍曹がまるで、わが社の宣伝マンのように褒めてくれる。しかし、数は、出せないのだ。大量に販売してこんなものがテロリストたちに使われたら、とんでもないことになる。SASのような、管理が厳しいところに少量だけ販売する予定だ。


 既にアメリカ陸軍のデルタフォースからも発注を受けており、近々納入する予定だ。もちろん、通常の防弾チョッキの値段とは、比較にならない高価な値段設定になっているのだが・・・。


 SASでは、突入部隊全員に行き渡る程度の量を販売する予定だ。ここが導入を決めれば、オーストラリアSASなどイギリス自治領に属する国々の対テロ部隊にも採用されるだろう。


・・・・・・・


 その日の夕方は、彼らの宿舎で酒盛りだ。お約束なのか、約束通りなのかわからないが、軍曹の嫌なモノまで見せられたのは、辟易したが彼らは、皆、気のいいやつらばかりで、とてもテロ相手に戦っているような人間たちに見えなかった。


 まあ、いざとなったら、命を掛けた戦闘をこなすのだから、オンとオフとは、全く違うのであろう。


「そういえば、テロリストは、どうだった?」


「怖かったさ。たまたま、この防弾チョッキと持っていなければ、戦おうなんて思いもしなかっただろう。接近戦は、苦手なんだ。」


「またまたぁ。聞いた話だと1人を叩きのめしたって?」


「ああ、手近にあった机でな。その後、銃を奪い取って、気絶した奴を盾にしたところ、うまく逃げていってくれたのさ。仲間を犠牲にしてでも、殺しに来られたら負けていただろうな。そういう意味では、本物の過激派とぶつからなくて幸運だったと言うべきか。」


 本当は、例のパンツがあるから、負けるとは、思わなかったがさつきを庇うだけで精一杯だったろうと思う。戦闘になれば、皆殺しにする自信は、あったがその場に居た他の人間は、皆殺されていたに違いない。


「そうだろうな。あいつらは、自分の命さえも軽いからな。最近は、無くなったが自爆テロで仲間がどれだけ殺されたか。奴らは、狂ってるとしか思えない。」


「気をつけろよ。君たちは、標的にされ易いからな。そして、俺のこともできるだけ黙っててくれないか。流石に俺の会社の人間まで狙われたらどうしようもないからな。」


 これが本音だ。情報が漏れないように気をつけているのは、自分の命もさることながら、会社の人間を狙われるなんてことがあったら、後悔してもしきれない。


「それは、安心してくれていいよ。この部隊の人間以外は、君の顔も名前も知らないさ。それに通達が回っている。バラしたら、一発で軍法会議でコレさ。」


 軍曹は、自分の首を絞める真似をする。縛り首という意味だろう。


・・・・・・・


 翌朝は、キリング・ハウスの見学だ。実は、SASにお邪魔したのには、防弾チョッキの売り込みのほかに、異世界の騎士団を訓練するのに適切な訓練施設を作ろうと思い、キリング・ハウスを参考にしようと思ったからだ。


 ここには、市街戦用の建物が建てられており、さまざまな訓練パターンをシミュレートできるようになっている。異世界に建てるにあたって、ここのように内装まで作り上げるつもりはないが、それなりのものを作れば役に立つと思うのだ。


 なにせ、簡単な建物なら、空間魔法で簡単に作れる。


 しかし、ここに来て考えが変わった。机や椅子などの障害物もあるのと無いのでは、対処の方法が変わってくる。そういった小道具もあわせることでより実戦的になるのだ。


「見て回るだけなんて、つまらないだろ。模擬戦でもやろうぜ。」


 訓練風景の映像や建物などを見学していたのだが、軍曹も飽きてきたのだろう。模擬戦を申し込んできたのだ。本来なら相手のホームであるキリング・ハウスでやりあうなんて、愚の骨頂なのだろうが、こんな機会はめったにないだろうから、それに乗せてもらうことにした。


「なに、使うのは、ペイント弾だ。とにかく、俺とトムが敵味方に分かれて戦うなら、どんなルールでも受けてやるよ。どうだ、やってみないか?」


「わかった。俺がテロリスト役で、そっちが人質に当てたら負けで人質を取り返せれば勝ちって、ルールで。もちろん、そっちはペイント弾に当たったら戦線離脱な。」


 基本的には、例のパンツがあるので、弾に当たることはないし、指輪の『偽』を使えば、人質役に見せかけて近づくことも容易だろう。


「人質役は、誰にする?」


 もちろん、俺と見分けがつきにくい人間のほうがいいとなれば、1人しかいない。


「ウィルソン隊長だ。」


「いいのかよ。その隊長は、貴族様だから叩き上げじゃねえし、実戦経験も皆無だぜ。」


「かまわない。」


・・・・・・・


「これは、貴方だけに教えるが、他の隊員たちには、変装したと伝えて頂きたい。」


 俺は、ウィルソン隊長に拠点に連れて行かれると指輪を『偽』に変えて見せた。


「っ。・・・気持ち悪いな。でも、面白いじゃないか。テロリストが要人に似せた整形をしていた場合を想定した訓練になる。」


「俺も楽しみたいから、数回しか使わないけどな。それより、随分と隊員たちから舐められてますね。」


「ああ、これでも、公爵家を継がなければいけないので実戦には投入してもらえないのだよ。ただ、こんな機会は、滅多にないから、一杯食わせてやろう。楽しみになってきた。撹乱、陽動は、任せてくれ。」


 あんなことを言われてもニコニコしているので、お飾りの隊長なのかと思っていたが、実は、対抗心を燃やしていたらしい。


 実は、もう1つ、指輪の『思』を使うつもりなのだ。これは、思考能力が10分間かぎりとは、いえ10倍になるものだ。これまでは、使いどころが無かったので使わなかったが、こういった戦闘には、役に立ちそうだ。


・・・・・・・


「負けました。」


 結果は、俺の負けだ。素直に軍曹たちに負けを認めた。


 軍曹とペアを組んだ隊員以外の隊員たちには、すべて土を付けたのだが、調子に乗ったウィルソンが陽動のために前に出たところを軍曹とペアを組んだ隊員に取り押さえられたのだ。


 まあ、向こうも決死の覚悟だったのだろう、軍曹を囮にしたことで、軍曹にもペイント弾を当てたのだが・・・。


「すまない。僕があそこで調子に乗らなければ・・・。」


「いやいや、模擬戦とはいえ、あそこで囮をやれる勇気には、頭が下がります。」


「あーあ。ルールでは、勝ったがよ。全滅かよ。これまでの訓練は、なんだったのか。くそっ。訓練の練り直しだ。テロリストが整形するのは、難しいが人質にマスクを被せるくらいは、やつらなら、やりそうだ。この模擬戦、参考になった礼を言う。」

いつも評価して頂きましてありがとうございます。


そして今週もストック放出します。日曜日もお楽しみに。


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