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第4章-第48話 さす

お読み頂きましてありがとうございます。

「あれっ、湯村さん?」


 まだ、しばらくイギリスで仕事があるので来たのだが、ヨークハウスから外に出た途端、知っている人間に出会ったのだ。彼女も100円ショップの古参メンバーの1人だ。


 100円ショップの本部から営業権を取得したことで、他のFCへの商品の卸しを行うことになったため、相馬くんをそのチームリーダーとした。


 うなぎ関係は順調に進んでいるのでその責任者として彼女を抜擢したばかりなのだ。


 そういえば、責任者に就任する前にどこかに旅行に行ってくるという話をしていたな。それが、イギリスだったのか。


「社長じゃないですか。仕事ですか?」


 彼女がヨークハウスを指している。


「ああ、まあな。」


「へえ、相手は誰ですか?」


「王子だ。」


 まあ、仕事相手といっちゃあ仕事相手だ。


「お、おうじって、ケント王子ですか?凄い人と知り合いなんですね。そっかぁ・・・ん・・・。・・・・・・・・・。」


「なんだ?逢って見たいのか。すまんが多分無理だぞ。」


「いえいえ、違います。そんな恐れ多い。あのお願い聞いてもらえます?」


「なんだ畏まって・・・。まあ、これから随分頑張って貰わなければいけないから、俺にできることだったら構わないけど。」


「あのですね。私の文通相手の家に同行してもらえませんか?」


「なんだ。ここまで来て、そんなこともできないのか?なんだ、通訳でもしてほしいのか?」


「いえいえ、実は、明後日に御伺いする予定なのですけど、昨日、ちょっと覗きにいったら、凄い豪邸なんです。この宮殿ほどではないですが、門から邸宅まで50Mはありそうな・・・。いえ、貴族だという話は、聞いていたのですけど・・・さすがにビビってしまって・・・。」


 そうか。それが普通の反応か。俺が異世界の王宮のスケールに見慣れてしまったからか、この宮殿もボロイ普通の家だと思っていたところだったのだ。


 詳しい時間を聞くと半日くらいなら時間が取れそうだったので了解しておいた。彼女は、今日、明日と市内観光をするというので、明日の夕食に誘っておいた。事前に文通相手のことをなにも知らないというのも変だし、責任者に抜擢した激励の意味もある。


 今日は、これからSASに試験採用された防弾チョッキのデモンストレーションとSASの訓練風景の見学だ。


 ロンドンから西北西に行ったヘレフォードにある訓練施設キリング・ハウスに向かうところだ。と言っても、この近郊のヘリポートに到着しているであろう軍用ヘリに乗り込んで送ってもらうだけだ。


 ヘリポートからほんの1時間ほどで到着するとそこは、既に山の中だった。


 到着した場所で出迎えてくれたのは、SAS連隊の隊長のウィルソン少佐だ。軍人には、珍しく小柄でほとんど俺と変わらない身長だ。まあ、その鍛えた肉体は、全く違うようだが、その端整な顔立ちは、ヨークハウスで見た近衛兵のようだった。


 彼と握手を交わし、デモンストレーションの場所に案内される。


「なんで、俺がこんな奴の手伝いなんかしなければいけないんだ!」


 小高い丘に点々と置かれたダミー人形には、オリハルコンとミスリルで作った防弾チョッキが着せられている。軍曹と紹介された彼が隊員たちの前でSASで採用されている狙撃銃で撃つ手順だったのだが、拒んできたのだ。


「フランシス軍曹!」


 俺が隊長に顔を向けると苦笑しながら説明してくれた。


 どうやら、彼が指揮する隊がテロ組織の隠れ家を襲撃、壊滅したらしいのだが、そのときに、皆殺しにしたことで、某国への繋がりが切れてしまい軍上層部やこの件に携わっていたMI6の工作員から嫌味や情報源として確保したテロリストのことで俺と比較されたらしい。


「これがAWPコンバートですか。」


 俺は、専用のスーツケースを開ける。そこには、バラバラにされた狙撃銃が入っていた。もちろん、これがSASで採用されていることを知った俺は組み上げ方も頭の中に入っている。


「ほう解かるのか?」


「俺が撃っても問題ないですよね。」


 感心したようにつぶやいた隊長に念のため聞いておく。


「ああ、弾丸はそこにあるものを使ってもらえばいい。」


 そこには、20発ほどの弾丸が置いてあった。まず、10発をマガジンに装填して構える。


「へっ、これだから素人は。その銃は、そこにある台座に装着して使うんだよ!」


 俺は、バカにする軍曹を放置して、指輪を『目』にかけて立て続けに発射する。うーん、ボルトアクションは、難しい。5発撃ってようやく、一番近い、おそらく300Mほどの所にあるダミー人形の胸に当てた。


「なにぃ。・・・・まぐれだな!!まあ、そんなこともあらぁな。」」


 マガジンの弾を補充したあと、3発で600M先にあるダミー人形の胸に当てた。


「・・・・・なんだー。そんなこと、あるわけねぇ。まあでも、次は無理だな。当てたら裸踊りでもしてやるよ。」


「軍曹、そりゃーいつも飲みに行くとやってることじゃねえか!」


 周りにいる隊員たちがはやし立てる。軍曹には、露出癖があるらしい。


「・・・・・・。」


 俺は、無言で残り、7発を撃ちつくす。


「やっぱりな。射程距離外なんだ。この連隊でも当てられるやつは、俺ともう1人いるかどうかだ。おめえじゃ、100発あってもむりだな。」


 ダミー人形は、1000M先に置いてあったらしい。この銃の射程距離が800Mだから、さらに200M先だ。


「当たってます!それも脳天と腹部です!!」


 双眼鏡で覗いていた隊員が興奮した様子で報告してくる。


「化けモンかよ・・・。」


 俺は、軍曹に銃を放り投げる。慌てて掴み取る軍曹。


「すまんな。心臓をぶち抜けなかった。見本を見せてくれないか軍曹。」


「できるかよ。台座を使っても、この距離なら当てるだけで精一杯だ。バカにして悪かったよ。この通りだ。」


 頭を下げてくれた。意外と潔いらしい。


「頭を上げてください。貴方が憤るのも解かります。命を掛けてやっているですものね。どれだけ、生かして残すのが大変か解かってないんですよ。きっと、彼らには・・・。」


「解かるか。そうなんだよな、奴らときたら・・・。」


 それから、しばらく愚痴に付き合わされたが、彼や隊員たちの表情から反感の意識は抜けたようだ。


「では、わが社の防弾チョッキの性能を見てもらいましょう。」


いつも評価して頂きましてありがとうございます。


今週は以上となります。来週をお楽しみに。

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