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第2章-第11話 娘は姫さま

お読み頂きましてありがとうございます。

 宝玉と貴金属は銀行の貸金庫に預けた。袋を空にして再び商品を詰め込む。スクーターにまだガソリンは入っていたが、ガソリン携行缶も入れた。


 娘と共に時間になるまで待っていると合図の光を確認する。娘をしっかりと抱きしめ、指輪を『送』にセットする。また、あのゆらゆら揺らめく感じだ。何回みても慣れない。


・・・・・・・


 娘を抱いたまま到着する。今日はエトランジュ様がいっしょだ。いつ見ても美しい。どこをとっても、俺の好みのど真ん中だ。娘を抱いたまま、不謹慎ながらドキドキした。


「こちらが、娘さん?」


 珍しくエトランジュ様から話しかけられた。


「そうです。ほら、挨拶して。」


 娘を下に降ろす。


「アキエ、4さいです。」


「かわいいわね。なにを抱いているのかな?」


「うん、く○もん。」


 召喚の魔法には、翻訳も含まれていると事前に聞いていた。娘もエトランジュ様と問題無く疎通できているようだ。


 先日娘を連れて競馬場にいった帰り道のSAで、娘がく○もんの抱き枕を見つけたので仕方なく買ってあげた。娘のお気に入りの一つだ。


「これ、お土産です。」


 そう言ってエトランジュ様にも、く○もんの抱き枕を渡す。娘がく○もんの抱き枕をうれしそうに抱いているのを見て、ふと目の前にエトランジュ様の笑顔が浮かびあがり、もう一つ買い求めたものだ。


「まあ、私にですか。うれしい!!」


 エトランジュ様は、早速その大きな胸にく○もんをギュっと抱きしめた。うーん、く○もんになりたい。


「おそろいだね!」


「それじゃあ、行きましょうか。」


 そう言って、エトランジュ様はアキエと手を繋ぐ。


 セイヤがなにか言いたそうな顔をしている。


「セイヤさん、なんですか?」


「わしも、それが欲しいのう。」


 俺は袋の中から、オカ○エモンのぬいぐるみを出して手渡す。うーん、やはりセイヤは微妙な顔をしている。


 階下に降りていくと、担当の侍女なのだろうか。娘を出迎えてくれる。


 ひのふのみのよ・・・4人も居る。保育園とは比較にならんわ。


「この者たちが、アキエ様の身の回りの世話をします。この他に各分野の教師が控えております。」


 俺が驚いていたのをどう誤解したのか、エトランジュ様がそう説明してくれた。いったい何人で世話してくれるんだか。


「よろしくお願いします。」


 そう頭を下げる。するとアキエの世話をしてくれる侍女の中でも、一番年長らしい方が驚き声をあげる。


「いいえ、とんでもない。王族の姫君を世話させて頂くなんて、大変名誉なこと。精一杯努めさせていただきます。」


 ありゃ王族って、バレているけど・・・。セイヤの方に顔を向ける。


「大丈夫だ。この者たちは、生涯を王室に捧げると誓った者たちだ。決して外部に漏らしたりはしない。」


「じゃ、行きましょうか?」


 エトランジュ様自ら、アキエを部屋へ案内してくれるらしい。


 その場所は、ここ後宮の寝所に棟続きになった一角にあった。


「ちなみにトイレはどこですか?」


 トイレの位置を聞いて部屋からトイレにかけて、袋からセンサーライトを取り出し設置する。先程の年配の侍女に交換用の電池を渡し、電池の交換方法を教えた。


・・・・・・・


「これが網戸のネットなのですが・・・。」


 窓には、ガラスのサッシが嵌っているが、網戸が無いために窓を開けると虫が入り放題の状態なのだ。娘は虫が大の苦手なのでセイヤにお願いして、事前に大工を呼んでもらってあった。


 袋から網戸のネットを取り出し、網戸の張り方を説明する。基本的にサッシは木枠なので、ネットを挟み打ち付けるだけだ。なんとか今日中には、娘が使うすべての部屋に設置してくれるらしい。


「いいなこれは、後宮と王宮全部に設置して欲しいのう。」


 セイヤがとんでもないことを言いだした。割と軽いので網戸ネットは、こちらの世界で売れるかもと30メートル巻を80巻ほど買い込み持ち込んでいるのだが足りるだろうか。


 大工さんと相談して1巻4500Gで買い上げて貰うことになった。2メートルx1メートルの網戸を500Gで作成することで、俺とセイヤと大工さんで取引が成立した。


 大工さんは王宮だけでも十分に利益が見込めること、さらに新しい売れそうな商品を扱えるようになることもあってホクホク顔だ。


 代金は明日、商品と交換で貰うことになった。


「セイヤさん?この袋の事なんですけど、幾らくらいするものなんですか?」


 200KGというのは、初めは多いくらいだと思ったのだが一見軽そうな網戸ネットも80巻もいれるのが精一杯で意外と少ないのだ。親父が使っていた袋もあるから、何とか持たせているけれど異世界と日本を繋げて取引するには、このままでは限界がある。


「そうだな。200KGのものだと200万Gはするだろうな。1袋では足りなかったか?」


「そうですね。これからも継続的に商売するとなると、足りないかもしれませんね。」


「それならば、もう一つ用意しようか?」


 非常に高いものだが何もかもセイヤに用意して貰うばかりなのは、商売人としてどうなんだろう。ここは直接生産者と取引してみたい。商売は、投資することも大切だ。


「すみませんが、作っているところを紹介して頂けませんでしょうか?」


「それでいいのか?遠慮することは無いんだぞ。」


「はい。俺も商人の端くれなんで、どんな商品があるのか興味があります。是非、紹介してください。」


「そうか?では、先に10万Gを渡しておこう。」


「はい、お心遣いありがとうございます。」


・・・・・・


 後宮で娘と昼食を摂った後、娘が昼寝をしたのを見届け、秘密の抜け穴から王宮に向かう。受付に行くと、偶々侍従長のジン殿にお会いした。


「こんにちわ。」


「おおこれは、トム殿。陛下から御伺いしておりまずぞ、少々お待ちくだされ。うーん、見づらいな。」


 ジン殿は、目を細めて何やら書類を見ているようである。


「これをお使いください。」


 俺は、老眼鏡を度別に6本取り出して、使い方を説明する。


「おおっ、この3番目のメガネを使えば一番良く見えるようになったわ。ありがとう。最近、富に細かい文字が見づらくなって。これは良いものだ。ちょっと待っていてくだされ。」


 俺が暫く待っていると、ジン殿と同世代と思われる人々が現れる。先程の5本のほか、度別に2本づつになるように、目の前に置くと、先を争うように、老眼鏡を試している。


「これの値段は、お幾らでしょうか?」


「600Gです。」


 この世界に無いものであるため、幾らでも高く買ってくれそうな気はするが100円ショップの安物である。6つの度数を仕入れる必要があることでもあり、この値段に設定した。


「おお、安いのう。」


 結局、ジン殿を含め、10人に売れた。


「それで紹介の件なんですが・・・。」


「そうだった、そうだった。これが、紹介状と主要な王宮の取引先の地図じゃよ。紹介状は見せるだけで良いようにしておいた。」


 一々、王宮の仕事の邪魔をしても、不味いかと思い、セイヤに頼んでおいたのだ。


「ありがとうございます。頂いていきます。失礼します。」


・・・・・・・・


 早速、貰った地図をみると割りと近いようなので歩いていく。


 まずは、紹介状を見せずに入ってみよう。もし必要だと言われれば、提示すればいいだろう。


「こんにちは。こちらで、魔法の袋を売って頂けると御伺いしたのですが?」


 扉から中に入ってみると女性が店の掃除をしていたので声を掛けてみる。


「いらっしゃいませ。ええございますよ。100KG、200KG、400KG、800KGと取り揃えておりますが、どう致しましょうか?」


 へえ、800KGまであるんだ。でも、高いのだろうな。


「それぞれのお値段を教えてください。」


「はい。今はオフシーズンですので100KGから、80万G、140万G、250万G、450万Gとなっています。」


 魔法の袋にシーズンがあるんだ。需要のことかな。


「オンシーズンとオフシーズンがあるのですか?」


「ええ、今の時期ですとしばらく先ですが冬に入りますので、冒険者のお客様はめっきり減りますねぇ。」


 なるほど、冒険者には必需品というわけか。


「なるほど。容量的には先程のサイズしかないのですか?」


 予算は300万G前後だけど800KGでは少しオーバーしてしまう。500KGがあればいいのに・・・。


「これ以外のサイズですと、特注になってしまいます。特注ですと、少し割高になってしまいますよ。どれくらいのサイズがご入用ですか?」


「はい。500KGくらいのがあればと思ってきたのですが・・・。」


 割高になってしまうのだったら無理だな。素直に400KGを買っておくか。


「・・・あっ、そういえば、特注サイズでキャンセル品があるのですが、こちらですとお安くできると思うのですが?」


「へえ、サイズと値段を教えてください。」


「サイズが600KGで、値段が400万Gですが、半金を頂いているので200万Gです。外側の色が、黒なんですよ。それで今まで売れ残ってしまって・・・。さらに、20万G引いて180万Gでどうでしょうか?」


 それでも構わないと思ったが、一応粘ってみるか?ダメなら言い値でも十分に予算以内だ。


「150万Gでなら買いましょう。」


「うーん、そうですね。160万Gではどうでしょう。」


「155万G!」


「はい、わかりました。それで手を打ちましょう。」


 俺は155万Gを手渡し、魔法の袋を受け取る。


「あの信用していないわけではないのですけど、容量を測らせていただきますね。」


 その場で検品するのは、商売人として当然だ。後で違っていたと言っても取り合ってくれないだろう。


 俺は、200KG入りの袋2つを入れ、さらに傍にあった計量用の10KGの錘を入れようとしたが、入らない。


「すみません。400KG以上入らないようなんですけども・・・。」


「解りました。確認しますので、中身を出してもらえますか?」


 俺は全部出すと唱え200KG入りの袋2つを取り出し、彼女に魔法の袋を渡した。


 彼女は袋を裏返し、何やら複雑な模様を一つ一つ読み解いている。どうも、この女性はただの販売員じゃない技術者でもあるようだ。


 凄いな、尊敬するなあ。俺なんて精々が材料くらいしかわからない。新人のころならまだしも商社で扱う商品だととてもじゃないが製造に関することまで調べる余裕は無い。


 ましてや商品数が何万点もある100円ショップの商品では、材料もパッケージに書いてあるものをそのまま説明するだけだ。


「申し訳ありません。こちらの手違いで400KGのものをお渡ししてしまったようです。担当者が伝票に書き間違えたようです。当方のミスですので、変わりにこちらの800KGのものをお使いください。」


 念のため、200KG入りの袋2つを入れ、さらに計量用の10KGの錘を40個入った。間違いないようだ。錘を取り出す。


「よかったですね。普通の商人相手で、王宮に入れた商品じゃなくて・・・。」


 もし王や貴族が遣うものでこんなミスをしてしまったら、王宮に出入りさせて貰えなくなってしまうかもしれない。


 購入した王宮職員が検品するとは、思えないからな。


「どこで、それを・・・。」


 そういえば紹介状は必要無かったから、言ってなかったな。彼女はしきりに額の汗を拭きながら聞いてくる。


「ああ、王宮で紹介してもらったのですよ。これが紹介状。」


 俺はそう言って、紹介状を手渡す。逆に紹介状を渡していたら、お得な特注品も出てこなかっただろうし、これはこれで結果的にOKだ。


「ひっ。これは大変粗相をしてしまって申し訳ありません。是非とも、ご内密にお願いできませんでしょうか?」


 ありゃ。これは不味い。彼女は、技術者としては優れているのだろうが販売員としては不味い反応を示している。ここは毅然としていて欲しかった。


「ああ、すまんすまん。別に脅したわけじゃなかったのだがな。そういえば、隣の店舗はどこの持ち物か知らないかな。俺も店を出そうとしているのだが、ここは王宮にも近くていい場所だな。」


 この店の隣に明らかに閉鎖された店舗があったのだ。この人も良い人みたいだし、隣で開業できればいろいろ教えてくれそうだ。


「はい。私どもの店なのですが若干小さかったので、隣に大きく立て直したのです。建物はまだまた頑丈ですし、問題無いと思います。」


 ラッキー!大家さんだ。これは交渉するしか無い。


「貸してくれるか?」


「はい、もちろんです。こちらがお願いしたいくらいです。月1000Gでどうでしょうか?」


 向こうから飛びつくように金額まで提示してくる。どうも大家と店子の関係になれば先程のミスが漏れないと考えているみたいだ。なんか悪いことしたな。


 不動産屋でこの辺りの相場が月3000G前後であることはわかっている。少し狭いが2000Gを下ることは無いだろう。


 金額交渉まで出来るのなら、販売員じゃなくて店のオーナーだな。俺は運がいいようだ。


「えっ、そんなに安くていいのかい。じゃあ、お願いするよ。前金で12ヶ月分くらい払えばいいか?ほかに費用とかは必要か?」


「いえいえ、十分でございます。」


 彼女は揉み手をせんばかりな笑顔で答えてくれる。


「じゃあ、早速契約を結ぼう。立会い人は王宮で構わないだろう?」


・・・・・・・


 不動産の賃貸契約の場合、立会い人が必要であるらしい。不動産屋が噛んでいる場合は、不動産屋がやるらしいのだがギルドや役所などでもいいらしい。


「じゃ、わしがやってやろう。今日はこのメガネがあるから、見やすくてよいわ。ありがとうな、トム殿。」


「いえいえ、どう致しまして。お客様の笑顔を見せていただけることが、商人にとって何よりのご褒美でございます。」


 これは建前じゃなくて本音だ。うれしそうな顔で商品をお買い上げくださる客の姿を見るのは大好きだ。


「おい、トム殿は陛下直々に特級商人を授けた王宮ご用達の商人だ。決して、粗末に扱ってはならぬぞ。」


「はい、もちろんです。」


 ジン殿がさらに追い討ちをかけてしまったようだ。大家さんの顔は引きつり、足は震えている。


 店に戻ると12000Gを手渡し、大家さんから鍵を受け取る。


「これから、どうぞよろしくお願いします。」


 頭を下げると大家さんは物凄く恐縮した様子で縮こまってしまった。


・・・・・・・


 早速、店舗に入ってみる。中はもちろん何も無いが埃だらけである。


 俺は指輪を『洗』に切り替え、指を壁や天井に向けると綺麗になっていく。まるでホースで水を撒いているようである。1時間かけて綺麗にすると、奥の扉に2階へ続く階段が現れた。


 2階は従業員が住めるような作りになっているようである。階段はもちろん、2階もすべて指輪で綺麗にしていく。ベランダもあるようだ。


 ベランダというよりも店舗の屋根部分だ。ここに袋からアタッシュケース型太陽光発電機を2機設置する。1台には小型冷蔵庫を繋ぎ、缶ビールを詰め込む。


 この発電機はアタッシュケース内に充電池が入っており、一晩中冷蔵庫を使っても十分な容量がある。


 もう一台から延長コードや電源タップで直接1階の店舗につなぎ、接着型のフックで縦横無尽に張り巡らす。そして什器を袋から取り出し設置していく。


 なるほど結構せまいな。一般的な100円ショップの通路幅で設置したところ、ギリギリ奥の方向に3つの通路ができるくらいしかない。とりあえず什器は設置したが、試験的なお店のつもりなので多種多様な商品を置くつもりはない。


さて、どんな商品が並ぶのでしょうか?




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