第3章-第39話 ほうしゅう
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「ねぇ・・・ねぇねぇ・・。んふっ。んふふふふ。」
火曜日の夜に田安家の屋敷から帰ってきて、ずっと、1日中これだ。よっぽど、報酬がうれしいらしい。
「ああ、報酬だったな。ほら。大事に使えよ。」
俺は、ポケットから用意しておいた封筒を出して渡した。
「特別ボーナスだ。俺のポケットマネーだから、誰にも言うなよ。」
特別に100万円入れておいたから、何でも買えるだろう。
「・・・・・違うわよ。もっと、違うものが欲しいのよ。ねえ、解かるでしょ。」
珍しく幸子がもじもじしている。
「なんだ!おしっこでもしたいのか?」
「違うわよ!幼稚園児じゃないんだから、おしっこがしたくて、もじもじしてたわけじゃないわよ。・・・ええと、できれば海辺のホテルがいいな。」
「解かった。明日の木曜日から有給休暇だな。俺も休みは、久しぶりだから、ゆっくりと過ごすぞ。さつきは、ゆっくり、羽を伸ばせよ。幸子と出かけてくるから。」
俺は早速、ネットからホテルなどの予約を入れた。今はオフシーズンだから、それほど高くないようだ。
「どこにいらっしゃるのですか?」
俺は、さつきの耳元で行き先告げた。
「あそこなら、護衛もいらないですね。では、私は、久しぶりにスポーツで汗を流しますか。」
「ねえ、ねえ。私には、教えてくれないの?」
「幸子どうせなら、知らないほうがいいだろう?泊まれるように旅行鞄に着替えは必要だよ。」
「そうね。どんなところなんだろう。わくわくしてきたわ。トムのことだから、きっと、素敵な場所よね。」
「ああ、泊まったことは、無いけど、屋上の展望レストランから見た夜景は、綺麗だぞ。」
・・・・・・・
翌朝、旅行鞄を持った幸子が胸元をこれでもかとばかりに開き、強調したスタイルで出てきた。もう、秋口だというのに、寒くはないんだろうか。
まあ、これから、行くところには、ちょうどいいだろう。
「では、お嬢さま」と、腕を差し出すと幸子が腕に絡みついてくる。さらに、ぐいぐいと子供が居るとは、思えない弾力のたわわな胸を押し付けてくる。
「じゃあ、さつき、留守番よろしく。」
俺は、幸子を連れて、ハワイに『移動』した。そのまま、予約したホテルに荷物を置きに行く。かなりの早朝にも関わらず、優しい笑顔でフロント係が出迎えてくれた。
俺は、7泊分のホテル代をフロントに預け、彼女の荷物も預かってもらった。
「じゃあ、朝飯にいこうぜ。すぐ近くに美味しいパンケーキ屋さんがあるんだ。」
「いいわね。ハワイに来たら、絶対にパンケーキよね。でも、ハワイに連れて行ってくれるとは、思わなかったわ。」
「そうか?海辺と聞いたら、ハワイだろって。ちょっと、俗っぽすぎるか。悪いな、幸子。」
「ううん。素敵。ありがとう、トム。」
そんなことを言いながら、歩いているとお店が見えてきた。店内に入ると、既に半分ほど席が埋まっていたが、うまく窓際の席がとれた。メニューを見ると、ワッフルとパンケーキがあったので、2人で取り分けて食べることにした。
「わお。すごいわね。」
「そうだね、すごいフルーツがいっぱいだ。」
ワッフルの上にも、パンケーキの上にも、フルーツがどっさりだ。シロップとクリームが添えてあって好きなように食べられるようにしてあるようだ。
「美味しいわね。少し多すぎるかと思ったけど、ペロっと食べちゃった。」
「うむ。流石にコナコーヒーの本場だ。コーヒーも旨いな。」
朝飯をゆっくりと食べ終わると旅行社に申し込んだツアーのチケットを取りにいく。
時差が19時間だから、まだまだ9時過ぎだ。
まずは、ハワイに来たら、ロミロミのスパだ。マッサージを受けつつ、ゆっくりとうつらうつらとしているともう11時前だという。
「お肌、つるつるよー。ほら、触ってみて。」
「本当だ。」
「でも、トムのほうが、もっとつるつるよ。羨ましいわ、その白い肌。」
「健康的でいいじゃないか。幸子のほうが・・・。それに白いとシミが目立つんだぞ!ほら、この辺とか・・・。」
俺の目尻の下辺りにできたシミを指し示すと嫌そうな顔をする。これは、35歳を過ぎた頃にできたもので、このときばかりは、落ち込んで、小麦色の肌をした人間を羨んだものだ。
「そうねぇ。シミは嫌ねぇ。」
次は、スパのホテルでゆっくりとランチを食べる。ビュッフェ形式で、あれもこれもとよくもまあいっぱい食べるものだと感心する。俺は、まだ朝食のパンケーキが後を引いていて、好きなものを少しずつだけ食べた。
その後は、腹ごなしも兼ねてトロリーバスでショッピングセンターに向かった。そこで、後で少しだけ、ビーチに行こうということになって、水着を選ぶことになった。
俺の水着は、もう海外でしか穿けないような、ハデハデの水着を選ばれてしまった。幸子の水着は、選ばせてもらえないどころか、ビーチまで内緒だという。
まあ、持っていったのが殆どビキニだったから、超大胆な肢体を晒してくれるのだろう。とっても、楽しみだ。
ほかにいくつかの買い物を済ませたあと、ショッピングセンターで着替え、目の前のアラモアナ・ビーチに飛び出した。
幸子のバスタオルの下から出てきた水着は、マイクロビキニだった。へえ、ハワイにも、売っているんだな。
「ほら、良く見てよ。」
幸子は、身体を揺らしながら、近づいてくるから、もう少しではみ出してしまうかと思った。ついつい、注視してしまったのだ。視線を外そうにも外せない。なんという、破壊力なんだ。
「ほら、行きましょう。」
そう、言ってビーチに引っ張っていく。澄んだ水がTバックの幸子のお尻を洗っていく。
その後、少し泳いだあと、再びツアーだ。決して、幸子が水際で立ち上がった途端、マイクロビキニの紐が外れて、少し垂れ気味だが、豊満な胸を堪能したなどということは、なかった。なかったといったら無かったんだ。
今日の締めくくりは、ディナークルーズだ。ジャズが演奏されている空間で、船外に遠ざかる町並みを見ながら、ハワイアンな魚料理中心のディナーを頂いた。
ハワイアンショーの最中に、無理矢理、例の椰子の実をビキニにしたダンサーと踊らされたのは、辟易したが、幸子が大笑いしてくれたので、良いことにしよう。やがて、見えた沖からのハワイの夜景は、とても綺麗だった。
・・・・・・・
ホテルまで戻ってくると屋上のバーに行って、見た目は綺麗でとても甘いがたぶん、アルコール度数の高いカクテル類を2人で何杯もあけた。もちろん、俺は、ずっと、水魔法に浄化しつつだったが・・・。
やがて、ハワイの夜景も明かりが少しずつ落ちていき、街灯のあかりのみになった頃に、部屋に戻った。夜だったのでわからなかったが、高層のオーシャンビューの部屋を選んだので、翌朝には、きっと素晴らしい眺めだろう。
幸子は、酔っ払ったのか。部屋に到着するなり、軽くシャワーでしおかぜを流したあとでベッドに入って行った。
俺は、ベッドに座り込み言う。
「今日は、楽しかったかい?」
「え・ええ・楽しかったわ。」
「よかった。じゃあ、俺は帰るから!」
「えっ・・・」
幸子は、なにかびっくりしたような顔をしていたが、俺は、自宅に『移動』した。
途端に、家の電話が鳴り響く、ハワイからのコレクトコールだ。向こうの交換手にYES、OKを繰り返し、繋いでもらう。
「ああ、希望は、海辺のホテルだろ。俺も便乗したのは、悪かったけど。枕元に特別ボーナスの100万円をドルに交換して置いておいたから、1週間遊んで暮らせよ。もちろん、ホテル代も払ってあるし。来週の木曜日には、迎えに行くから、英気を養ってくれ。・・う。」
向こうから、ガチャンと切られてしまった。俺、なにか気の触ることでもしたかなぁ?
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