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第1章-第10話 しゃいん

お読み頂きましてありがとうございます。

 結局、あいつに連絡したアルバイトの彼女は、辞めたいと言い出した。まあ、そのほうがいいかもしれんな。


 どこで付け込まれるかわからないし、流石に直ぐに辞められては困るので、別の店舗の100円ショップに移動してもらうことになった。時給は100円ショップ時代に戻ってもらった。


「オーナー、いやね。あんなにフォローしたのに、簡単に辞めるのね。」


「ああ、そうだな。お前が居てくれて助かったよ。」


「だって、子供の教育費にお金がかかるもん。」


 もう一人のアルバイトは、アラフォーのお姉さまだ。普段から、こうやってお姉さまと認識するようにしている。うっかり、おばさんなんて言ってしまったら取り返しがつかないからな。


「今、中学生だったけ?」


「もう、高校生よ。塾に、受験に、大学に、いくらお金があっても足りないわよ。」


「じゃあ、正社員になるか?」


「給料あがるの?」


「ああ、上がるな。ボーナスも少ないけど出るしな。」


 まあ、保険料とか税金とかもあがるけどな。


「ボーナス、魅力的な言葉ね。でも大丈夫なの経営は。正社員になれましたけど、会社は潰れましたじゃ洒落にならないわよ。半年くらい前まで、奥さん働かせていたじゃない。皆噂してたわよ。危ないんじゃないかって。」


「大丈夫だよ。あの時は、大学生が大量に辞めて、にっちもさっちも行かなくなったんだよ。これでも、ずっと黒字経営だぞ。」


「そうだったわね。」


「正社員って、責任を負わされるんでしょ。」


「従業員のトップだからそれなりに権限は与えるつもりだ。」


「具体的には?」


「そうだな。まず、貴金属買取ショップのアルバイトを1名決めることだ。お前の好きなように選んでかまわない。それに、そいつが次の正社員候補だから・・・。」


「それいいわね。わかったわ。受けるわ正社員。」


 次の正社員候補が誰かわからないけど、扱き使う気満々のようだ。まあ、ブラック企業と言われないように監視は必要だな。


「実はもう就業規則もできているんだ。本当は、勉を正社員にするつもりだったけど、あんなことになってな。ずっと迷っていたんだ。」


・・・・・・・


 あんなことがあったが、その後の貴金属買取ショップは順調に滑り出した。ただ、ここ数日他のFC店舗からの照会案件が異様に増えている。


 それにつれ、買い取れない案件も出だしてきている。どうやら今回の件が広まり、怪しいものは全てこちらの店へ紹介してきているようである。


 本部に抗議したところ、全て裁いてほしいということだった。


 但し、交渉して買い取れない案件1件につき、幾ばくかの手数料を貰うことで決着した。買い取れないことを説明する手間賃も必要だからだ。他のFC店舗のために、タダ働きさせられては堪らない。


 それでも紹介は減らないようで、紹介手数料だけで十分利益が見込めるほどだ。まあ一般のお客様は、簡単な説明だけで大して抗議も受けないのだが、詐欺師が来たときがやっかいだった。


 初めにXX組若頭を経験したせいか、アラフォーの彼女も全然へこたれない。懇切丁寧に何度も説明する。それでもダメな場合はズバリ持ち込んだ貴金属の成分を小数点1位まで、言い切ってしまうのだ。詐欺師はギョっとした顔で、そそくさと帰って行った。


「オーナー、凄いですね。どうやって解るのですか。」


「勘だよ。詐欺で使う金属の成分が決まっているらしいから、それらしいものを言うだけさ。」


 嘘だ。指輪で読み取った成分をそのまま言ってるだけだ。


「へえ、そうなんですか。いろいろ勉強されているんですね。」


「ああ、商社時代には、扱う商品について、徹底的に勉強したもんだ。癖になってるよ。」


「良い癖ですね。私ももっと勉強しなきゃ。」


「まあ、頑張れよ。でも程々で、いいからな。」


 励ますがプレッシャーも与えない。匙加減がむずかしい。


・・・・・・・


 社員旅行を企画した。お金があるときにこそ士気向上させる必要がある。


 それに経営は大丈夫だと、思わせる必要もある。社員は全額、パート・アルバイトは半額補助だ。格差があるほうが、社員になりたいと頑張ってくれるだろう。


・・・・・・・


 結局、娘の親権は元妻が全て放棄した。もう会う気もないようだ。弁護士が調べたところでは、詳しいことは教えてくれなかったが、某会社の御曹司の女に納まっているようである。まあ、好きに生きるがいいさ。俺の邪魔にさえならなきゃな。


 今回の召喚で娘を連れて行く。セイヤに相談したところ、二つ返事で了解してくれた。それほど王族の血筋が不足しているらしい。娘は後宮で暮らすことになる。


 離れて暮らすのは可哀想だ。しかし、オーナーだから多少時間は自由にできるとはいえ、毎日保育園への送り迎えも大変だし、長時間預かって貰うので、帰り道では殆ど寝ている。よく世の中のお母さんはこんなことを続けているものだ。


 どうせ顔を合わせる時間が短いのならば保育園に通わせるよりは、後宮のほうがマシかなと思った。これは言い訳だな。


 それでも俺の故郷らしいし、子供を育てる環境としては、とても良さそうだ。姫のように育てられて、元妻のように高慢な女になっても困るが・・・。


 まあそこは、上手く育ててくれるだろう。


日本の保育園の生活と異世界の後宮での生活・・・どちらが幸せかな?

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