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第3章-第30話 しょうがっこう

お読み頂きましてありがとうございます。


用水路のセメントの使い方について指摘があったので補足情報を盛り込みました。まだまだ初心者の職人さんに難しい工法は無理です。

 『バーチャルリアリティの夢』では、開始時に研究員によるデモンストレーションをする予定だったが、洋一さんと賢次さんがやりたいと言い出した。


 洋一さんは、前から欲しいと言っていたので解かるが、賢次さんから言ってきたのには、驚いた。


「トムの役に立ちたいんだ。」


 賢次さんには、俺に全く及びもつかないコネクションを使わせて貰っており、物凄くお世話になっているのだが、もっと直接的に俺の仕事に関わりたいというのだ。


 まあ、デモンストレーションを企業の偉い人にしてもらったほうが、その後モニターをする人々に安心感を与えるので、お願いすることにした。


 研究施設でのモニターには、1日15名ずつで、まず最初に洋一さん、若しくは賢次さんに挨拶をして頂き、その後、昼食に入ってもらう。


 健常者ならば入眠後、ノンレム睡眠レベル1から3に行き、その後レベル3から1に戻った後、入眠開始後約2時間後からレム睡眠状態に突入する。レム睡眠状態だと装置が脳からの指令を受け取りやすくなる。


 間に昼食時間を取るのは、レム睡眠に入る時がデモンストレーションの開始となるためだ。


 その後、ノンレム睡眠とレム睡眠を行き来するのだが、ノンレム睡眠状態でも問題なく映像を見れることは実証されている。


 ノンレム睡眠状態でも脳からの指令を受け取れはするが、あまり感度がいいわけではない。しかし、感度の良い装置を使おうとすると価格設定が1000万円を越えるため、断念したのだ。


 しばらくは、全身麻痺患者のための娯楽装置として、研究を進め、価格を下げられるようになれば一般の装置に組み込むつもりである。


「さつき。賢次さんにお礼を言っておいてくれるかな。」


 俺は、デモンストレーションのことをさつきに説明した。


「流石、お兄様手早い・・・。」


 さつきがなにかブツブツ言っているがうまく聞き取れない。


「ん、何か言ったか?」


「お兄様もトムの影響か、こういう対応が出来るようになったのだなと思いまして。」


 いつものことながら、過大評価だなあ。ここで反論しても言い負かされるのでもう諦めて聞かなかったことにする。


・・・・・・・


 土曜日の朝、俺は、さつきと一緒に例の小学校の前に立っている。この小学校と体育館は、阪神淡路大震災の教訓を生かし震度7クラスの地震にも耐えうるように作られているという。


 当時は脱サラで農業をというのが流行りだったから、多くの子供を受け入れられるように作ったのだろうが。あっという間に廃れたからな。


 廃校になっても、周辺地域の避難所として使われてきたが、過疎化によりこの村自体が廃村となったため、地主から建物を含めここら一帯の土地を購入してある。


 一般の家は別だが、村役場の耐震性もそこそこ良さそうなのでそのうち移築するつもりである。さらに、村独自の上下水道の施設も整っているため、これらも移築予定だ。


 また、歴史的価値の高い古民家も多いため、今、国内で移築先を検討しているところだ。


 できれば、利便性の高い場所に田畑も含め纏めて移築して、サラリーマン定年退職後にファーマーとして活躍できるところとして、売り出すつもりだ。


 指輪の合図が始まり、空間魔法を構築し、小学校をまるごと取り込み、さつきを連れて召喚された。


・・・・・・・


「セイヤ、ありがとう。では、行ってくる。」


 召喚直後に召喚の間から直接、『移動』で商業都市へ飛んだ。


 まずは、基礎部分の小学校の広さより若干大きめで深さ50センチの土を空間魔法で取り込み、その中へ移築する。あとは、今後接続するであろう上下水道などのインフラ部分を除き、周囲に土を埋め戻していく。


「ちょっと、異様な光景だな。異世界に小学校が建っているというのは。」


「そうね。でも、この世界の人間からすれば、少し変わった建物だと思うくらいじゃないのかな。」


「そうかもしれんな。」


 小学校は、市町村合併の有り余った予算で作られており、山奥の学校ということもあってか二重窓になっており、保温性も抜群だ。2階建てでコの字型だが中央部分には、大きな時計とスピーカーも設置してある。

 その内部にある視聴覚室から放送を行うことも可能だが、戦時などの非常時のみ活躍させるつもりで、他に利用予定はない。


「ここは、朝と夕方のチャイムは入れたほうがいいかな?」


「そうね。下校時の音楽もあるといいかもしれないわ。」


 まあ、そんなことでノスタルジックな気分になれるのは、ニホンから召喚されてきた人間だけであるが、習慣付ければ何らかの効果を得られるかもしれない。


・・・・・・・


「取水口を持ってきたが、どこまで出来た?」


「ようやく、川周辺の既存の水田に届いたところです。」


 結局、用水路は、俺が掘った溝の両側に木板の柵を設置し、そこにコンクリートを流し込み、固まり次第、底にもコンクリートを流し込み、固まれば完成という、昔ながらの方法を取ることにした。


 それは、用水路の幅や深さの関係でコンクリートが固まりにくく、1週間単位では、固まらない計算になったためだ。


 また、この世界の職人はセメント工法の初心者である。本来なら側面が倒れないように鉄筋を入れて下から固めていくべきなのかもしれないが、できるだけ簡単な工法で丈夫なものを作るための方法としたのだ。


 尚、排水のための用水路は溝を掘っただけで、コンクリートを設置するのは来シーズンの農閑期に持ち越すことにして、取水のための用水路を急ピッチで設置してもらっているところだ。


 既存の水田は、直接川から水を取り入れていたため、今回拡張するおよそ100分の1程度の広さしかない。1週間でこれだけの長さだけしか作れないとなると計画の変更を考えなくてはならないが、セメントを扱える職人が増えてくれば、もう少し早くなるだろう。


 計画の変更は、そのスピードに合わせればいい。セメントなどの資材は、小学校内部に入れて十二分に持ってきてあるため、問題はない。


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また、再評価もして頂けるとありがたいです。


レム睡眠とノンレム睡眠に関しては、私が受けた睡眠ポリグラフ検査の内容を参考にしました。

私の場合、5回の検査のうち数回入眠直後にノンレム睡眠状態になるようです。

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