第3章-第28話 しんでんかいはつ
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俺はもしかすると、薬が体質的に合わないのかと思い、意識がある間は水魔法で浄化しているのだが、中々戻らない。
賢次さんが心配そうな顔で顔を覗きこんでいる。意識が途切れ次の瞬間には、離れていくところが見えた。
また、意識が途切れ次の瞬間には、2人きりでタクシーに乗っているところだった。洋一さんは、あのバーに置いていかれたのだろうが、いい大人なんだから、起きたら自分で帰れるさと思い直す。
賢次さんは、時折こちらに視線を移してくれる。暖かい、うんいい感じだ。俺がにっこりを笑いかけるとまた意識が途切れた。
次は、どこかのホテル、おそらく、賢次さんが常宿にしていると言っていたホテルだろう。その大きなベッドに寝かされているようだ。
きっと、苦しくないように、胸元やベルトを外してくれていたんだろう。ようやく、浄化が効いてきたのか、意識が途切れる頻度が長くなった。
「もう大丈夫だ。」
俺は、近くに居て心配してくれているだろう賢次さんに声をかける。
「もう薬が切れてきたのか?・・・・・・・。」
なにやら、ほかにもブツブツ言っているが、よく聞こえない。
結局そのまま寝てしまったようで、起きると朝の7時過ぎだった。やばい、このままじゃ、ここから異世界へ召喚されてしまう。
大きなベッドだからだろう。隣に賢次さんが寝ている。俺は、慌ててシャワールームに飛び込むと酒臭くなっていた身体をボディーソープでちゃちゃと洗う。
そして、洗面台の大きな鏡に向かい、顔を洗っているところだ。
「おはよう。」
俺がシャワールームを出ると賢次さんは、もう起きてきていた。
「おはようございます。昨日は、すまなかった。どうもあの薬、体質に合わなかったみたいだよ。」
「う、うん、そうかもね。薬の効き目は、人によって違うというからね。」
昨日は、少し男らしい態度だったけど、今は、いつものCOOに戻っている。
「ゴメン。もうでかけなくっちゃ、今日は、朝から人に会う予定なんだ。この埋め合わせは、絶対するから・・・。」
俺は、そう言って、自分の服を元通り着て、洗浄魔法を唱える。これで、少しはマシなはずだ。
「それじゃあ、失礼します。」
俺は、扉のところで頭を下げ、エレベーターに飛び乗り、『移動』で自宅に戻った。
・・・・・・・
「おかえりなさい。本当に飲み明かしたのね。」
「ああ、最後は、賢次さんに世話になったよ。」
俺は、3軒目のバーから、賢次さんの常宿までの話を聞かせた。
はじめは、驚いた顔をしていたが、だんだんと険悪な顔つきになっていく。
「それで・・・ううん、何でもないわ。」
今日は異様に心配するな。
どうしたのだろう。
めずらしく体調を崩したからかな。
「ああ、健康そのものだよ。」
俺の様子を見て、頷くこと3度。
「まあ、それならいいわ。兄には、きっちりと言っておくから、安心して!」
「うん、よろしく。」
そして、作ってもらった朝食を食べて、さつきを連れて異世界に召喚された。
・・・・・・・
まずは、田んぼ作りだ。100Mx100Mおよそ1町を基準に作っていく。この間、狩りをした際に魔術師レベルが上がって、空間魔法が1辺100Mまで使用できるようになったからだ。
まずは10センチ刻みに予定地の土を空間魔法で取り込み続けると30センチ掘り進んだところ、粘土状の土が見えてきた。それにあわせて、水田予定地をすべて掘った。
水田予定地の両側は、開拓民の住居を中心に雑木林にする予定だ。落葉樹を植えることで保水性が高められるのだ。雑木林を造成する際には、マイヤーか幸子に手伝ってもらうことになる。水田自体は、彼女たちの手を煩わせるつもりは、なかったが林を作り出すとなると流石に必要なのだ。
水田は、畦を50センチほど残し、横50センチ深さ30センチの粘土を畦に乗せて他の99Mx99M深さ30センチ空間魔法で取り込んでいく。
畦は、この防水性の高い粘土層の土が必要なのだそうだ。取り込んだ普通の土と粘土状の土を別の場所で混ぜ合わせ乾燥させる。
さらにニホンから持ち込んだ畦シートを周囲に張り巡らしてから、乾燥させた土を半分ほど再び田んぼに戻すことで大まかな田んぼ作りは終わりとなる。
できあがった田んぼの周囲にコンクリート製の用水路を張り巡らせればOKだが、この世界の人間はセメントの使い方さえ知らないので、以前、防水シートと防水セメントを使用した池を作った際に指導した職人を中心に使い方を広めているところだ。
・・・・・・・
翌日は商業都市の城壁作りだ。本当は、コンクリートで作成しようと思ったのだが、コンクリートブロック工場を作成するところから、始めなくてはいけないため。諦めて以前国境に作った道を参考に岩石を切り出して、ちょうど、万里の長城を思わせる作りにした。
やはり、田んぼ作りと比べると岩石を切り出して置くだけなので、手間は少なくて楽だ。半日かけただけで、商業都市5KMx5KM、全長20KMの城壁が完成した。
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