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第3章-第27話 そうべつかい

お読み頂きましてありがとうございます。

 週刊誌3誌の記事の第1陣の記事が出揃ったが、全国紙の新聞で取り上げたところは無く、唯一、関西の虎日新聞社の社説として、載ったくらいだった。


 ただ、ネット上では、専用掲示板も立てられ活発な論議を巻き起こしている。それが、時たま昼のTV番組で取り上げられる程度で、なかなかうまくことが運んでくれない。


 それでも、経済誌の担当者と会い、打ち合わせを行うが、反応が薄い。やはり、富強銀行から今回の損失について、発表が無いかぎり、紙面に載せても不発に終りそうだというのだ。


 俺は、不本意ながらも掲載タイミングを担当者に任せることにした。


・・・・・・・


「かんぱーい。」


 今日で洋一さんが退社されるので送別会をうなぎを仕入れて貰っている料亭を貸しきって行うことにした。本来2万円はするお座敷の料理を特別にうなぎ抜きにして7千円で提供してもらい。その量が減った分、うな丼を持ち込みにしてもらった。


 酒代入れてもトータルで1万円を越えないが半分を会社の経費で落としたからか、結構な数の社員が参加したみたいだ。


 さらにどこで聞きつけたのかCEOやCOOから田畑元会長まで参加したいと言い出したのには、まいった。


 しかたがないので、俺のポケットマネーで数人の芸者さんを呼んで対応に当たって貰っている。そうしないと、うちの社員たちが気を回してお酌しに行ったりしては、純粋に楽しめないからだ。


 まあCEOや田畑元会長は、上座で両側から芸者さんに挟まれご機嫌なのでよかったが幸子や洋一さんの絡み酒には、参った。


「わったしの酒が飲めないって言うの?」


 もう、相当出来上がっているようだ。


「飲んでますって。」


 ここは、下手に出ておくのが無難だろう。どこの席に行っても、次から次へと酌をしてくれる社員たちだったが幸子につかまってからは、より一層飲まされている。実は、半分はトイレに『移動』させていたり、水魔法で浄化していたりするのだが・・・。


「そうよねぇ。オカシイな、なっんで、そんなに酔わないの?うっぷ、吐きそう・・・。」


 俺は、即座にソレを両手で受け止めた。そして、それを持って走るフリをしながら、トイレが空いているのを確認して『移動』した。あわてて、さつきがおしぼりを持ってきたので、そのままトイレに入り洗浄魔法を唱え、掌に残った気持ち悪い感触をおしぼりで拭った。


 元の席に戻ってくると幸子は座布団をまくらにして、スヤスヤと眠っていた。


「社長、決定的瞬間を撮りました!」


 そう、言ってスマートフォンの画面を差し出してきたのは、相馬くんの奥様だ。妊娠中なので、ソフトドリンクばかりで素面だがそのときは、顔を赤くしてバカ笑いをしていた。


 そこに写っていたのは、丁度、幸子が吐いて、俺が受け止めた瞬間だった。眉を顰めて、顔を上げるとその表情が面白かったのか、そこいらじゅうに笑いが伝染していく。


 相馬さんがスマートフォンを受け取る。


「これを広報誌に載せましょう。これは、もう愛ですね。社長の社員愛を代表する出来事です。」


「そんなことは・・・。」


 一応、反論してみるが殆ど誰も聞いていない。周囲の総務部の連中は、思い思いに広報に載せる文章を考え、批評しあっている。まあ、広報誌は、社長が口を出せる領域じゃ無いからどうしようもないか。


「わかった。わかった。出来上がったら先にくれ。」


 まあ、それを見た幸子の顔も見ものだろうから、直接見せてどんな反応を返してくれるかを楽しみにしておこう。


 隣で洋一さんもバカ笑いをしている。珍しい顔も見れたし良しということにしておこうか。しかし、本日の主役である彼は、それだけでは、物足りないらしく。


 幸子の代わりにどんどん、酒を勧めてくる。さすがに断るわけにもいかないので、素直に飲み続ける。


「社長、お世話になりました。」


「いや、こちらこそ世話になった。洋一さんが居てくれて本当に助かったよ。」


「いえいえ、楽しい4ヶ月間でした。そして、学ぶべきところも多かったです。この山田イズムを次の会社へ継承して行きますので、また、なにかと相談させてください。」


「おいおい、大袈裟だな。俺は、ただ自分の思う通りにしてきただけであって、対した思想もない。君は君の思想を持って取り組めばいいさ。」


・・・・・・・


 CEOと田畑元会長は、CEOの自宅に戻られるそうだ。


「賢次と洋一くんが飲み明かしたいといっているのじゃ、しっかりと付き合ってやってくれ。」


「はい。わかりました。」


「すまんが、さきに失礼するわい。洋一も好きなだけ楽しめ。今日までだからのう。」


 さつきも幸子を担いで、タクシーに乗ろうとするのを『移動』で自宅のマンションまで送り届けた。


 2軒目は、洋一さんが昔、懇意にしていたという六本木のバーだ。


「あらあら、久しぶりだこと。」


「ママも相変わらず綺麗だね。」


「そんなこと言ってもいいの?結婚したばかりの奥様が怒るんじゃないの?」


「なんで知っている?」


「それはもう蓉芙グループのかたがたには、懇意にして頂いているもの。」


「そうか、そうだったな。こっちが、ZiphoneのCOOの大川さんで、そっちが俺の社長の山田さんだ。」


「あらあら、2人ともいい男ね。大川さんは、飲み歩いているでしょ。どこかでみたことがあるわ。山田さんは・・・・・・・ふうぅぅ・・・うっとりするほど可愛いわ。惚れてしまいそう。」


「おいおい、ひと目惚れとかヌカスんじゃないだろうな。」


 洋一さんはかなり酔っ払ってきているみたいだ。喋り方がべらんめえ調になってきている気がする。しかし、可愛いは無いだろう。こんなオッサンを捕まえて。


「・・・・・コホン・・・そ、そんなことは、無いわよ。私は、お客さま皆の恋人ですからね。」


「俺の友達を何人も手玉にとったくせに、そんなお前でも、惚れるんだな。」


「そ、そんなわけ無いじゃない。この私が・・・。でも。」


 ママさんは、俺と洋一さんの隣に座り直してきて、俺のほうをジッと見つめてくる。


「洋一、コレちょうだい。」


「バカ言うなよ。俺のモノじゃねえよ。本人に言えよ。本人に。」


「ねえ。ねえ。今度、いっしょに旅行いきません。再来週の土日なら空いているのよ。」


 旅行って・・・いきなり、ソレかよ。据え膳って訳だろうが、土日は異世界だ。それに、このタイプは、元妻を思い出すから・・・。


「無理だな。」


「ははは、振られてやんの?」


 洋一さん大丈夫だろうか。なにか壊れてきている?それとも、これが本性なのだろうか。


「ちぇっ、ダメか。そっちのお兄さんは、分野違いよね。」


 ママさんは、COOを分野違いだという。分野ってなんだ。


「ああ、わかるか。」


「ええ、臭いが違うもの。もしかして・・・。」


 ママさんは、俺とCOOを交互に見ている。何を言っているのだろうか。


「そうだな。」


「やっぱりね。」


「なんのことだ?」


「いえね。洋一もそちらのお兄さんも山田さんに惚れこんでいるみたいだなって・・・。」


「それは、もう師匠だからな。」


「そうね。」


 それから、洋一さんは延々と俺との出会いから一緒に仕事をしたことや舟本さんを通じて知りえた情報を披露し続けたのだった。


・・・・・・・


 夜中の2時を回るころになり、まだ、洋一さんが次のところへ行きたいと駄々を捏ねるので、今度は賢次さんのお勧めの店に連れて行ってもらった。


 流石に疲れたのでタクシーの中でうとうとしていると着いたらしい。


「どこだ。ここは?」


「歌舞伎町だ。」


「おいおい、しっかりしろよ。洋一さん、3軒目に到着したよ。」


「さぁんけぇんめ?」


 ダメだ。こりゃ。完全に思考が止まってやがる。


 それでも、なんとか店に入り、1つだけあるソファ席に洋一さんを押し込んだ。


「かんぱーい!」


 乾杯をしたものの、1杯目を飲み干したところで洋一さんは潰れた。仕方が無いのでそのまま、ソファに寝かした。


 その店は、他に小さめのカウンター席と奥にカップル専用のイス席がいくつかあるだけのこじんまりとしたところだった。


 カウンターの中には、もういい大人なんだろうが、少し少年っぽい男性がシェイカーを振っている。


 ソファ席は、洋一さんに占領されてしまったので、COOとカウンター席に座った。


「賢次さんもお酒強いなあ。」


 料亭でもソコソコ飲んでいたし、2軒目も洋一さんと同じくらい飲んでいたはずなのに、ズルをしている俺と大差無い酔い方なのだ。


「トムほどじゃ、それにこの薬を飲んでいるからね。」


「へぇ、それを飲むと酔わないの?」


「ああ、滅多なことでは酔わないな。今日みたいに、だれかの介抱をするときには、必ず飲んでいる。」


「へえ、じゃあ、俺ももっと酔っ払っても大丈夫だったのか。まあ、賢次さんが俺を介抱してくれるかわからないか。」


「するさ。大丈夫だよ。飲んでみる?お酒を飲んだあとでも、効き目は、ばっちりだよ。」


「ああ、くれよ。」


 俺は、カウンターで水をもらい。ソレを飲んだ。しばらくすると、意識がはっきりしてきた。凄い効き目だ。

だが、さらに時間が経過すると今度は、心臓がドキドキしてきた。そこからが大変だった。突然、ほんの数秒単位で意識が飛ぶのだ。


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