第3章-第24話 かいたくのほうほう
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例のごとく、彼女たちにアルメリア神の祝福を授けてもらう。
幸子は『緑の手』、静香さんは『代筆』と出た。
『緑の手』とは、エルフ族が持つ大聖樹の加護、植物の育成能力に近い。この能力を持つものが触った植物は、害虫や病気に強くなる。レベルがカンストすれば、育成能力も付き、触った植物は、魔法耐性まで付くという。
『代筆』とは、個人間の契約書を代筆できる能力を持つ。この能力を持つ人間が書いた契約書は、契約が終了するまで物理的破棄できないという。さらにレベルを上げると契約内容に契約違反時に罰則事項を盛り込むことができるという。
例えば、罰則に金銭を書き込んだ場合、契約違反時に自動的に違反者の財布から消えてなくなるらしい。
レベルをカンストすると命さえ失う契約内容を書き込めるらしいのだ。もちろん、代筆なので契約に自分自身が関わる契約を盛り込むことは、できない。
魔術師がレベルカンストしても使えるようになるが代筆Lv1と同等である。
主に商人ギルドや王宮、領主の屋敷に勤めることが多いらしい。
「なかなか、めずらしい職業がでたの。これからのトムに必要な能力ばかりじゃ。」
でも、幸子が『緑の手』か。意外というかなんというか。まあ、個人の資質とは関係ないのだろう。
「なによう。言いたいことがあるの?」
本人も意外に思ったようで、こちらに視線を送ってくる。
「いえいえ、よろしくお願いします。」
これから、彼女たちを重要な役職を与えるつもりなのだ。ここで拗ねられでもしたら、やっかいだ。
・・・・・・・
「なあ、ツトム?ツトムは、異世界ものの小説を沢山読んでいたよな。その中で、領地開拓ものでは、どんな方法をとっていた?」
「うーん、あまり内政ものは、読んで無い。それなら、シズカちゃんのほうが・・・。」
あまり役に立たない奴だ。だが、静香さんとは、趣味を教えあうほど浅からぬ付き合いがあったらしい。
「では、静香さんは、どう思う?」
「そうですね。主人公が土木魔法で開墾したり、岩を砕いたりする描写が多いですね。農作業自体は、開拓民に任せておわりという話が多いですね。」
「意外と描写が少ないな。」
「それでも、多くの民が躓く部分を主人公が補えば、それほど苦労しないという設定ですね。」
「作物を育てるには、水が必要だろ。そこのところは、どうなんだ?」
「さあ、殆ど描写されていないですね。」
「セイヤ、この国の主要作物は、稲だよな。」
「ああ、裏作で小麦が栽培されているらしいがの。」
「小説の中では、水田を作れる場所は、水が豊かな場所という制限を設定していることが多いですね。」
「やはりな。では、この国で水田を増やすには、灌漑設備は、必須だということだろ。」
「そうですね。」
「そうすると、この国の川に流れている流量だと難しそうだな。実際に水田があるのは、川の近くだけみたいだし。よしわかった。」
「どういうことですの。」
「川自体が水を吸い取ってしまわないようにコンクリート製の側溝が必要だということだ。」
「セメント作りからはじめるのですの?」
「いや、セメント自体は、ニホンから持ち込むつもりだ。セメントにこの世界の砂利を混ぜ込めばOKだ。あとは、側溝を作る場所を空間魔法で切り取り、セメントを流し込み、十分乾いたところを水が流れる部分を空間魔法で切り取ればできあがりだ。」
セメント自体の材料に、アルミ鉱石が使われているから、この世界で作るとなると高くつくから、ありえないんだな。
鍛冶職なら大量のコンクリートからアルミのインゴットを抽出することも可能かもしれないから、セメントの材料とかは、秘密だな。
「大雑把ね。」
「切り取ったセメントは、商業都市の壁にでも使うつもりだ。」
「資金はどうするつもりだの?」
今度は、セイヤに質問された。
「アルミのインゴットを持ち込んだから、それを借金のかたに、国庫から借りようと思うのだけど・・・?」
「それなら、1000G通貨を発行するだけで済むから、問題なさそうだの。一時的なインフレはありそうだが、食料の供給が増えれば落ち着くだろうしの。最悪、資材を外国から調達すれば、それで防げるだろうの。」
・・・・・・・
とにかく、今日の就爵の儀式が始まるまでに、彼女たちの住むところを決めないといけない。将来的には、商業都市に作る予定の領主の屋敷のつもりだが、当分は、王都の屋敷にするつもりだ。
あそこなら、部屋もたくさん余っているから住むのに問題はなさそうだし、王宮に近いから、静香さんにアキエの相手をしてもらいやすいからな。
問題は、幸子にミンツのことを伝える必要があるということだ。
「な、なんで?トムの屋敷にミンツさんが住んでいるのよ。」
「なんでって。ミンツは、俺の側室だからだけど。」
「なに、シレっと言っているのよ。聞いていなかったわよ。そんなこと。」
「まあ、ニホンから帰ってから、正式に側室にしたのだけどな。」
「それって、側室候補だったわけでしょ。私に側室候補の世話をやらせたの?」
こういう反応が返って来るだろうから、黙っていたのだが。
「どうしてほしいんだ?やっぱり、ニホンに帰るか?」
「私も側室に加えてよ。」
「おいおい、子供の目の前で何を言っているんだ?」
「べつにいいわよ。トムのこと、好きだって、伝えてあるから。」
「本当?静香さん。」
「ええ、毎日、浮かれて電話してきますのよ。さっさと引き取ってください。」
「ええっ、お母さんを正妻には、出来ないんだけど、構わないのか?ニホンの倫理感覚じゃ、無理だろう。」
「ここは、ニホンじゃ無いんでしょ。ああ、わたしも、そんな甲斐性のある男性に出会いたいものだわ。」
こういうところは、親子だな。
「とにかく、正妻に御伺いを立ててみるよ。」
俺は、それだけを言うと魔法の袋に仕舞いこんだ荷物を取り出して置いていく。




