第3章-第23話 ぱわーはらすめんと
お読み頂きましてありがとうございます。
前から話だけは出ていた新キャラ登場。
私の小説では、珍しい女子高生です。
自社ビルに戻り、撮影した映像と録音した音声は俺が、書類を洋一さんに見てもらうことにした。USBハードディスクを予備のパソコンに繋いでみると暗号化されておらず、そのまま、すべてのファイルをパソコンの内蔵ハードディスクにコピーを開始し、あとで確認することにする。
映像と音声は、酷いものだった。罵倒につぐ罵倒、終いには、会議室に居たリーダー格の男に全ての責任を擦り付ける始末だった。今回の投資を指示したのは、副頭取だったらしい。
書類のほうは、スミス金属の貸し剥がしこそ書類があったが、他の企業のぶんは3社ぶんしか見つからず、あやふやな情報となりそうだった。
そこで一計を案じ、まずは、有名週刊誌3誌であやふやな情報のまま、掲載をしてもらい。その後、経済誌でスミス金属と今回の中国での住宅債権の損失をぶち上げることにした。
翌日、COOに連絡を取ると案の定、週刊誌に伝手があるらしく、快く引き受けてくれるらしい。COOが言うには、情報を小出しにして、2週に分けてキャンペーンを張ってもらうのが、効果的だという。
週刊誌側には、広告掲載を行う必要があるらしい。COOは、Ziphoneの広告枠で出してくれるつもりだったらしいが、それを断り、子会社のバーチャルリアリティ社の広告を打ってもらうことにした。
例の夢の中で映像を見ることができる装置の量産機プロトタイプが出来上がってきていたのだ。それのモニター販売だ。商品名は「バーチャルリアリティの夢」と名づけた。バーチャルリアリティーへの第1歩を踏み出した製品だと言える。
週刊誌3誌の発売日は、月・水・金だ。かろうじて、今週の金曜日発売の週刊誌に載せることができるらしい。金曜日に発売されてみると、大反響があった。主にバーチャルリアリティ社への広告への反応だった。週刊誌は増刷による増刷で記録的な売り上げを誇るほどだった。
そのぶん、記事への反響も徐々に大きくなりつつあるらしい。
・・・・・・・
洋一さんは、今月末に退社して会社を移るという。その準備の合間を縫って、面接の予定を入れて貰っている。
倒産した取引先の知り合いから頼まれ従業員を引き受けているためだ。倒産した会社だが優秀な人材も多い。
契約社員からの開始であるため、さすがにそのままの待遇で移ってもらうことは、出来ないがそれでも多くの応募があるのだ。
さらに100円ショップ直営だった近隣の店舗アルバイトの引き抜きも始めている。できることを自己申告してもらい。1ヶ月の試用期間中は、申告に沿った時給を払い、事実と違った場合でも、それなりに使えるようならば、時給を下げつつ継続雇用するつもりだ。
元々、うちの100円ショップで働いていた殆どのアルバイトは、複数の職種を経験するようになり、契約社員に移行する人間も多いため、100円ショップ単体でのアルバイト経験者はかなり減ってきていた。
さらにZiphone傘下の牛丼のスキスキ、ミスドーナツ、メッツバーガー、ファミレスのカカス、かんぴょう寿司の5社直営の職場への派遣も順調に増えている。
時期によって必要な人員が違うところも多く、使えるアルバイトは確保しておきたいため、最大数でアルバイトを確保しているため、余剰人員が出てきているということらしい。
アルバイトが減ったところに、多様な職種を経験してきた派遣が入り、効率的な人員にすることができるのだ。これにより、1回1回はアルバイトを雇うほうが安い人件費だがトータルで直営店の人件費が下がっているのだ。
もちろん、山田ホールディングスの飲食部門では、既にファミレスのカカスとかんぴょう寿司のFC契約を済ませ、契約社員に経験を積ませているところだ。
なのでこのアルバイトの引き抜きは、渡りに船と言っても過言ではないのだ。
・・・・・・・
「えっ、幸子って、教育ママゴンだったんじゃ?」
「なぁーんですってぇ!」
怖い。額に青筋が浮いて見える。
「いや、なんでもない。」
俺は、慌てて誤魔化す。
「娘が私立に行ったのは、向こうの親が進めてきたからよ。」
幸子の娘さんが、学校でイジメにあって、環境を変えたいらしい。つまり、別の場所に引越したいらしいのだ。そこで、どこかいいところがないか。俺に相談してきたのだ。
引越ししても、Ziphoneに通えるところなら良いと思うが、そうではないらしい。もっと遠く、娘さんの知り合いが居ない場所ということらしい。しかも、幸子は、俺の所は辞めたくないなんて無茶を言ってくる始末だ。
本当は、今週こそ、さつきを連れて召喚される予定だったが、幸子とその娘さんを連れて召喚されることになった。
・・・・・・・
「なるほどね。皆が言っていたのは、本当だったのね。へえ、これが異世界か。」
これが幸子が異世界に来た第1声だ。ものおじないしないのにも程があるだろ。まあ、らしいといっちゃらしいが。
幸子の娘さんも目をキラキラさせているようだ。
「セイヤ様、静香と申します。よろしくお願いします。」
お嬢様私立だったらしく礼儀正しくセイヤに挨拶している。
「あっ、シズカおねえちゃんだ。」
どうも、アキエと面識があるらしい。幸子も古くから居る従業員の1人だから、子供同士の面識があっても珍しくはないだろう。ということは、もしかすると・・・。
「ツトムおにいちゃんも、時々会いにきてくれるし、モモエおばちゃんも毎日、料理を作ってくれるんだよ。」
あー、言っちゃった。どうも、ツトムとも面識があるらしい。
「トム?」
幸子が俺のほうを向いて、片眉を吊り上げている。
「ほら、あいつっていろいろあったからさ。ここで、ビシビシと鍛えなおして貰っているんだよ。」
うわさをすれば影。ちょうど、ジロエ団長がツトムを連れて通りかかった。訓練でへたばっていたのか、ツトムは、アキエの前まで来て座り込む。
「これは、トム殿。辺境伯就爵おめでとうございます。」
「ありがとう。ちょうど、ツトムの話をしていたんだけど、状況はどうだい?」
「ありゃ、ダメですね。ようやく覚悟が決ったところですかね。」
やっぱりな。俺も苦労したもの。あいつを育て上げるのは。
「まあ、あいつは、地道にいくしかないよ。すまんがよろしく頼むよ。」
「もちろんですよ。義理とはいえ、わしの息子になったんだから、それなりには、なってもらわないとな。ツトム。」
「はぁー。山田さん、なんていう方々を連れてきたんですか。癒しを求めてここに来ているのに、なんにもならないじゃないですか。」
幸子と静香さんの冷たい視線が堪えるのかもしれないが、この際、静香さんのこれまでの鬱憤の八つ当たり先になってもらえれば、こころ穏やかに新生活が始められるだろう。
引き続き頑張って更新していきますので
応援よろしくお願い致します。




