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第2章-第15話 ひろう

お読み頂きましてありがとうございます。

 一番最後に入った主催者であるセイヤから、一人ひとり、貴族を紹介してもらう。会って握手して多少お喋りしてセイヤに王家との関係性やどういった人柄なのかとかを教えてもらう。


 もちろん、指輪は『写』にしている。なんとなくは覚えていられるが、細かくは覚えられないので仕方がないだろう。直接関係するようになる前に見直せばいいだろう。


 内心土方貴族とあざ笑っているんだろうなと思いながら、セイヤから道路工事の説明がなされ、俺が作った道が国にそして王家に多くの利益をもたらすと説明を受けると皆、鷹揚に頷いているのだ。


また、この場は、俺の側室のお披露目であると共に貴族達の娘を売り込む場でもあるらしく、綺麗に着飾った女の子を伴ってきている。俺がアヤとミンツを紹介すると目をキラキラさせている。やはり、ミンツの変身が気になるようでしきりに話しかけられているようだ。


 交わす会話の中で、屋敷に遊びに来てやってくださいと半ば社交事例だかやや本気でそう付け加えている。それは、ミンツにこの世界での化粧品類の販売窓口になってもらうためだ。


 もう既に化粧品の問屋とは、相当数売れればかなりの粗利が稼げるようになっているし、試供品も手に入れている。ほかに、盛る付け睫や100円ショップの付け睫、それに度の入っていないカラーコンタクトレンズなど、ミンツが説明できる女性を着飾る商品を多数屋敷に用意したのだ。


・・・・・・・


「これはこれは、義父殿。」


 目の前には、ミンツの父であるユリアウス男爵である。


「お父さんっ。」


「おまえ、ミンツか。見違えたぞ。」


 ユリアウス男爵は、セイヤから他の貴族同様に話を聞かされても、生返事ばかりでミンツを見つめて、うんうんと頷いている。


「男爵!!」


 さしものセイヤからもお叱りの言葉が出た。


「男爵、何を考えているか知らんが、王家を敵に回すなよ。俺もそうそう、トムへの無礼ばかりで処刑などしたくないからの。」


 この男は、解かりやす過ぎた。きっと、ミンツの美貌を目にして、俺に対して側室として差し出すよりも有効な利用方法でも思いめぐらしていたのだろう。


 セイヤが釘を刺すと、先日処刑された貴族たちのことを思い描いたのだろう、男爵がガクガクブルブルと震えだした。


「わたしは、なにも・・・。」


「解かっていればよい。」


 ミンツは俺と顔を見合すと、溜息をついた。たとえ、親でも呆れているのだろう。


「お父さん?」


「解かっている。解かっているよ。少し夢に見ただけだよ。そんな度胸もないよ。」


 全く正直な男だ。まあ、解かりやすくて良いか。


・・・・・・・


「えっ。」


 今日は、ジロエ伯爵は参加者として、ここに居る。そして、その隣には・・・。


「モモエさん・・・どうして・・・。」


 モモエさんが、側室たちのドレスに劣らない豪奢なドレスを着て、ジロエ伯爵のパートナーとして、腕を組んでいた。かなり、アツアツ状態だ。


「実は、内戦騒ぎの後、この人が襲爵してから頻繁にアプローチを受けるようになって・・・。第二の人生をこの世界でやり直してみようかなと。」


 内戦の際には、モモエさんたちを教会で守ったという話を聞いた覚えがある。今までは、子爵家の料理人としてのアプローチだったが、今回は正妻に請われたという。


「それは、おめでとうございます。とすると、ツトムは・・・?」


「ああ、養子に入ってもらう。今度こそ、伯爵家の家人として相応しい人間に鍛え上げてみせる。」


 そうするとツトムが次期伯爵?


 それは無いな。あのアツアツ度合いなら、きっと、モモエさんがジロエ伯爵の子供を産むことになるに違いない。モモエさんは、超高齢出産だが、出産の際に日本に連れて行けば、問題ないだろう。


 その趣旨を両人に伝えた。


「本当ですか?そこが、とても不安だったのです。これで安心して嫁に行けるわ。」


・・・・・・・


「寝室に入る前には、コンタクトを外しなさい。」


「え、でも、これが無いと・・・。」


 晩餐会が終了したあと、アヤを領主の屋敷に送り届けたあと、王都の屋敷に戻って来た。コンタクトに関する注意は、店員にも幸子からも言われていたから、解かっているものだと思っていたのだが・・・。


「大丈夫だ。それが無くても十分可愛いよ。」


「本当に?」


「頑張ったな。よくやった。」


 ミンツは、ようやく安心したのか肩で息をついている。


・・・・・・・


 翌日は、朝からミンツに商品の売り方や値段について講習をした。なにせ、男爵令嬢だし、今まで職業らしい職業に就いていない。


 基本化粧品を売る場合は、試供品を先に渡して試してもらうこと、肌に直接触れるもののため、どうしても合わない人間がいるからだ。そして、使い始めた化粧品は返品不可とする。


 さらに化粧品は冷暗所に保存すること。今の日本の製品の場合、エアコンが効いた室内にあることを前提に防腐剤を最低限にしているためだ。この異世界で暖かいところに置くと途端に腐ることになりかねないのだ。


 カラーコンタクトは、もっと注意が必要だ。今回半年持つものを用意したが、期限を半分の3ヶ月に設定。3ヶ月分の洗浄液などのセットで販売することにした。注意事項を記載した紙にサインしてもらうなど問題が発生しても責任を押しつけられないようにした。


 もうすでに今日伺う約束した人間が数名居るらしい。皆お洒落には、興味津々なのだろう。あとは、口コミで広がっていけば十分だ。


・・・・・・・


 今日の土方仕事は、建物の移築だ。俺が作った道の出口で通行料を徴収する仕事を請け負った侯爵家が依頼してきたのだ。1軒につき5万G、取り壊して作り直すなら小さい家でも12万Gを越えるという。


 今、俺の空間魔法に入る大きさは1辺が20M程度だから、小さな家なら楽勝だ。これを越える大きな邸宅でも、分解後移築し補修すればOKだ。今回は、徴収を担当する人間のみの移動だから、小さい家ばかりだ。


 大工の仕事を奪ってしまうと思ったのだが、そもそも今回の仕事は、道を作ったことから発生した仕事だから問題は無い。それどころか、新築する家や移築先の土台の整備など、たくさんの仕事が発生しているらしい。


 依頼された20軒中19軒までは、順調に自分の空間に取り込めたのだが、最後の1軒だけはどうしてもうまくいかない。家の中を探しても特に問題は無さそうだった。


 どこかに生き物が隠れているのだろうと、うなぎ工場に居る人狼を連れてきて、探索したところ、驚いたことに家の中に隠し部屋があり、そこに1人の女性が監禁されていた。


 すぐさま、その家の持ち主とその女性を近衛師団に引き渡した。数年前に姿を消していた近所の美少女が成長した姿らしい。日本でも、女性を長期間監禁する事件が発生しているが、異世界のほうが人攫いとかが居る分、発覚しにくいみたいだ。


 この事件を重要視した近衛師団が、施設に居る人狼を警備兵として雇い入れるという。まだまだ、コミュニケーションの面で疎通の難しい人狼は、独自のコミュニティで日々援助を受けて生活している。


 ちなみに、近衛師団では、ツトムに通訳を依頼するらしい。


 結局、その家は現状保存ということで、19軒の移築のみした。


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