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第2章-第13話 めんどうなきゃく

お読み頂きましてありがとうございます。

 その日は、どこで聞きつけたのか宇宙エレベーターについて、六菱重工神奈川製作所の幹部が面会にきた。六菱重工神奈川製作所といえば、自衛隊の戦闘機をライセンス生産したり、アメリカ航空機メーカーの下請けやミサイル、ロケットまで手がける軍事産業のパイオニアだ。


 近頃では、アメリカ航空機メーカーの下請けとして培ったノウハウと日本自動車メーカーからのエンジン及び人材、資本の提供を受けて、国産初のジェット機を開発するという時代錯誤な、まるで昭和の電機メーカーのようなことをしている。


 幹部の話によると、ジェット機開発のノウハウと人材を宇宙エレベーター開発に提供したいという申し出で、資金も十分提供してくれるらしい。条件は生産を全て任せてほしいという。


 一見過分な申し出のようにみられたが断った。ジェット機開発ノウハウが宇宙エレベーターに必要と思わなかったこと。人材と資金力が豊富すぎて、油断すると簡単に会社が乗っ取られそうだったことが問題だ。


 実際に前例の六菱航空機という会社も人材や技術や資金を提供した日本の自動車メーカーが金融危機の際に資金が動かせなくなった隙をついて、増資を決定し六菱重工が引き受け手となり、いつのまにやら六菱重工の連結子会社になっていたという経緯があるのだ。


 人材や技術や資金を提供した日本の自動車メーカーからみれば、騙された感が強いだろうがジェット機のエンジン生産で資金を回収するしか手段がないわけで泣き寝入りをしているようだ。


 これらの経緯を知っている俺としては、とてもじゃないが共同経営者として迎えたい相手ではない。


 ましてや、相手は宇宙エレベーターのライバルであるロケット製造メーカーでかつ、JAXAからロケット発射等も請け負っている会社なのだ。


 きっと、宇宙エレベーターにとんでもない資金を投入して、ロケット発射して人工衛星を打ち上げても、宇宙エレベーターで資材を宇宙ステーションに運んで人工衛星を撃ちだしても、大して変わらない値段設定をしたいにちがいない。


「なぜですか?」


 俺が断ると不思議そうな顔で聞いてくる。


「より早く宇宙ステーションに荷物を届けるには、航空機エンジン技術が必要なはずだ。」


「宇宙エレベーターに速度は必要ありません。計画では、片道3日、往復6日間かけて宇宙ステーションを往復するのですから。」


 ロケット発射だけを考えるならば数時間で打ち上げられるが、ロケット生産から発射までなら、どう少なく見積もっても3ヶ月は掛かるのである。それに比べれば荷物の出し入れや衛星の撃ちだしを含めて10日を想定しているが、十分勝てるはずだ。


「ならば生産技術はどうですか?日本メーカーとして唯一機密性が必要な航空機の胴体部分を作り上げるわれわれの生産技術は?」


「必要ないです。今回、宇宙エレベーターの胴体部分に使用するオリハルコン鋼は、まだ未知の領域が多い素材です。この素材の生産者であるスミス金属の技術こそが必要なのです。」


 一番のネックは、六菱重工から派遣されてくる正社員の給与だ。元々六菱航空機の航空機設計も大部分が派遣社員であり、開発の完了した今だとそのほとんどが契約終了しており、より高級取りの正社員のみが余っているのだ。開発初期段階からそんな高級取りを入れるのは、愚の骨頂だ。


 まあ、できればその航空機胴体部分の設計技術は使える部分もあるだろう。しかし、本当に優秀な社員ならば、その道の専門家として六菱航空機の維持管理部門に移っているだろう。実際にこちらにくるのは、それなりの社員ばかりだろうと思う。


 実際にそういった設計は、大統領を支援しているグループに老舗航空機メーカーの経営者が居たため、設計のみを外注する予定だ。


・・・・・・・


 その日の午後、さらに鬱陶しい人間がやってきた。元妻である。


「もの凄く儲かっているみたいね。これ自社ビル?」


 まるで俺の資産を監査しにきた役人みたいだ。


「ビル自体は、俺の持ち物で会社に貸し付けているだけだよ。」


「それに、スミス金属にフィールド製薬や牛丼のスキスキ。すごいわね、どうやって儲けたの?」


 少し調べればわかることばかりだが、この女がこんなことを調べるはずもない。いったい誰がなぜ、そんなことを調べているのだ。


「ああ、例のカジノの資金を元手にお前のアホ男がやらかしたフィールド製薬のスキャンダルなどで大きく儲けたよ。ありがたいことだ。」


「そこのお嬢さんと結婚するんだって?Ziphoneの社長のひとり娘だそうね。」


 そんなことまで調べているのか・・・。いったい、どういうつもりだ?


「それがどうした?」


「ねぇ。アキエは邪魔でしょ。返してくれない?」

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