第2章-第12話 土方貴族
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「マジで?」
異世界に召喚され、アヤを貸し出して欲しいとセイヤに頼むと交換条件を出された。1つがアヤの代わりに『ミト』村で、アヤの代わりを務めること。もう1つが国境付近の山肌に道を作ることだ。
『ミト』村から王都に掛けて作り上げた道は、流通革命を引き起こしているらしい。国内要所の村々から物流に掛かる時間が短縮されたことで例えば朝裁いた鶏を昼には、王都の市場で売ることができるようになった。
これに気を良くしたセイヤが、『ミト』村から北進し国境の北門を経由して『ギョウザ』村に続く道と『ギョウザ』村から国境の北西門を経由して『チチブ』村までを作ってほしいと依頼してきたのだ。
俺は、アヤと共に自社ビルに送り返してもらい。うなぎを担当者に手渡し、ハワイ、ロス経由でニューヨークに『移動』し、アヤに10本づつMPとHPのレアポーションを手渡した。
例の外科医に俺の胆石の手術跡で試してもらうことを要求した。内視鏡手術で胆嚢を切除、クリップで留めてあるだけなのだが、開腹手術でそのクリップごと切除した直後にアヤに部位欠損の再生を行ってもらうのだ。本当ならば、全身麻酔による手術なのだが様子を見たいがために首より下だけの部分麻酔にしてもらった。
筆頭魔術師としていろんな修羅場を潜り抜けてきたらしいアヤだったが、人のお腹の中を見るのは初めてだったのだろう。初めは俺のお腹の中におっかなびっくり手を差し入れていたアヤだったが、途中で覚悟を決めたのか、外科医の言うとおり俺の胆嚢を再生させ、開腹手術の傷口も綺麗に直してくれた。
そのアヤをさつきに預け、日本に取って返して、例のロープを伝って、異世界へ戻った。
・・・・・・・
その後、護衛にジロエ団長を従え採掘場にて岩石を切り出す。今度はごく簡単にL字型にした。国の管理下にある全ての採掘場から採掘するのにおよそ1日掛かってしまった。
L字型にしたのには訳がある。長雨などで万が一、土石流が発生しても、人々が居る村々まで届かないようにするためだ。道路の復旧は、大変だろうがそこは人海戦術で解消できる。
山肌に沿って空間魔法で土砂を取り除きL字型の岩石を置く。その手順を繰り返して北進後西進すること約100キロメートル、『ぎょうざ』村から『サル』村までの約50キロメートルは、既に街道が築かれていたため、『サル』村から『チチブ』村まで約100キロメートルの合計200キロメートルを6日間で踏破しつつ、道を作り続けた。
北門以北の国々は、エルフの里などの国々と行き来する場合、本来国内にある山を数日掛けて乗り越える必要がある。だが、この道が完成すると距離的には遠回りになるがチバラギ国を経由したほうが、時間も掛からず危険も少ないため、わざわざこの道を使用するだろう。
そうすれば自然と多くの商人が通過し、通行料や商人が持ち込む品々が王家所有の領地である『ぎょうざ』村、『サル』村、『チチブ』村を潤すことになる。
将来的には『ぎょうざ』村と『サル』村の中間地点に商業都市を建設するつもりだという。
各道の両端では、早くも通行料の徴収兼警備の仕事を割り当てを決める争奪戦が始まっているという、有力な伯爵家が名乗りを上げているらしい。
水曜日には、すべての道が通行できるところまで完成したので、木曜日の朝に自力で1度日本に戻った。
・・・・・・・
「なかなかのものでしょう?」
自宅に帰って待ち受けていたのは、ミンツの変身っぷりだった。ふくっらしたあごの周囲の肉はなくなり、おでこにあった深い皺やほうれい線は、綺麗さっぱり消えていた。これだけでも、15歳は若返って見える。
メイクの仕方も徹底的に教え込んだのだろう。今風の女の子になっていた。しかし、まだ年相応には、遠いようだった。
俺は、1つ思いつき聞いてみた。
「彼女は、コンタクトにしたのか?」
元々ミンツ嬢は近眼らしく、目を眇めてみる仕草が若々しくなかったのだが・・・。
「ええ、メガネとコンタクトの両方を買っておいたわよ。」
「カラーコンタクトにしては、どうかな?」
最近の流行なのか、芸能人も黒目の部分がはっきり大きくなるコンタクトを嵌めていることが多い。ヨウツブのサイトで、地味顔の少女がカラーコンタクトを嵌めただけで、美少女に変身した動画をみたことがあるのだ。
「そうね。それがいいかも、さっそく買いに行ってくるね。行こミンツ。」
そういって、幸子はミンツを連れて買い物に行った。
夕方には、さつきがアヤを連れて戻ってきた。相手が大統領ということもあり、アヤのためにアメリカ国籍を用意してもらい。普通に飛行機に乗って、日本に到着したはずだ。
「どうだった?初めて、飛行機に乗った感想は?」
「もう、ずっとドキドキしっぱなし。なんであんなに大きくて重いものが空を飛ぶの?信じられない!」
アヤは、珍しく少し興奮しているようだ。
「その様子なら手術は成功したようだね。二人とも経過は順調?」
俺は、さつきに聞く。
「はい。言われた通り、MPポーションとHPポーションを飲んで頂いたところ、即日業務に復帰していきました。」
「それは凄いね。核ミサイルの発射ボタンの委譲の儀式は、見られたかな?」
「ええ、ほんの数時間のことでしたが、副大統領に委譲、復帰後の再委譲を真近でみれました。」
「俺も見てみたかったな。アヤ、急にすまなかったね。」
「いえ、勉強になりました。人の身体の中がどうなっているかよく判りました。部位欠損の再生でさらに多くの人々が救えます。是非とも、西洋医学を我が国にも導入しましょう。」
「そうだな。すべてを導入できるかどうかは、解らないが今回やったような手術で助かる人々が居るだろうから、まずは人を育てていかないとな。」
・・・・・・・
「綺麗、見違えたわ。ミンツ。」
「ええ、幸子さんと旦那様のお陰よ。」
ミンツさんは、カラーコンタクトを嵌めることでさらに若々しく、綺麗になった。やはり黒目の輪郭と大きさは重要らしい。
この1週間は、土方仕事ばかりのトムだった。
解かると思いますが『ギョウザ』村は宇都宮、『サル』村は日光辺りです。




