第1章-第8話 ばかんす
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異世界からセイヤにミンツ共々、送還してもらった。自社の社長室に戻った俺は、3階の一部の大型冷凍倉庫に槌屋さんの弟子達が製造したうなぎのカバヤキを仕舞い。俺の中に作成した空間魔法を閉じる。
日本側では、MPの自然に回復するスピードが酷く遅いため、なるべく早くMPを消費し続ける空間魔法を閉じなくてはならない。特に今週は、アメリカ出張だ。銃社会であるアメリカに居る間は、ほんのわずかだが例の防具にMPを投入しつづけるのだ。できるだけ、温存しておく必要があるだろう。
ミンツとさつきを連れ、自宅のマンションに帰ってきた。
「その娘は、どちら様ですか?」
早速、幸子からチェックが入る。
「ああ、マイヤーの国の男爵令嬢のミンツさんだ。しばらく、日本に滞在してもらうからそのつもりで居てくれ。」
「社長は、明日からアメリカ出張ですよね。その間、どうすればいいのですか?」
「それは、今から幸子にお願いすることと関係する。」
「社長が私にお願いですか?」
「ああ、幸子、ミンツを見てどう思う。年齢は18歳だそうだ。」
「令嬢のわりには、苦労されているみたいですね。額の皺とかほうれい線とか、でもさすがに10代なだけは、あって肌のつやは私とだいぶ違います。」
うーん、さすがに日々肌のお手入れを欠かさない幸子だ。俺達とは、目線が違う。
「そんなに違うか。幸子も十分、すべすべしているぞ。ほらこのへんとか。」
わざと褒めて頬の辺りを触ってみる。頬の辺りは、代謝が早く化粧水が浸透しやすいから、お手入れさえ欠かさなきゃ、結構維持できると思うけど。
「あら、いやだわ。」
「それでお願いなんだが、その綺麗な幸子さんを見込んで、ミンツ嬢を社交界に出しても恥ずかしくないくらい磨き上げてほしいんだ。条件は外科手術を行わないこと。本当は、この顎のお肉とかは脂肪吸引とかを利用すれば簡単だと思うが、いかんせんミンツ嬢が帰ったあとフォローできる医者が向こうに居ないのでな。」
「そうですね。このくらいなら、小顔マッサージなどを利用すれば、なんとかなると思うわ。でも、この額の皺やほうれい線は、美容外科を使わないと無理よ。」
「ボトックスは、フォローが必要だから、ヒルアロン酸注射あたりでいいんじゃないかな。ちなみに予算は300万円だ。これには彼女の化粧品代などすべて含む。別に100万円を幸子への報酬として渡すから、一緒に受けてきたいエステやマッサージがあれば、そこから出すように。」
そういうと難しい顔をしていた幸子は、一転し明るい顔になった。どうやら、同行しても見ているだけというのは、つらいと思っていたのだろう。
「もちろん、信子や紀子に相談して進めてくれ。どうしても、忙しくて同行する暇が無いというならば、信子や紀子に代わってもらってもかまわない。」
「いえいえ、私が責任持って同行します。お任せください。」
やはり、幸子もやりたいと思っていても、予算の都合でできなかった美容法の1つや2つは、あるらしい。俺の説得は、そこにぴったりと嵌まったようだ。
・・・・・・・
さつきにもミンツにも側室の『そ』の字も出さないように言い含めてある。幸子が絶対、嫌がりそうだからだ。そろそろ、幸子に手を出したほうが、いいのかもしれない。あの年齢で出産要員になり得るがどうかは不明だが・・・。
少なくとも住み込みの家政婦として同居していることや、幸子が積極的に俺を誘惑しているところも知られている現状では、社内の人間もまさか俺が幸子と清い関係だとは思っていないようだ。怪しいと思われているようなのだ。
問題は、手を出したあとに幸子がどう変わるかくらいであるが、既に誘惑をしていることが知られている状況では、たいした違いはないだろう。さつきには、言い含めておく必要があるが。元々はさつきが言い出したことが発端なので問題はないだろうが・・・。
と、ここまで考えたが・・・・やっぱり、ダメだ。従業員に手を出すなんて自分の倫理観に反した行動は、できそうにない。
・・・・・・・
翌朝は、10時のフライトだ。添い寝役は、幸子らしい。さつきは、しばらく俺と同行することになるため、今日十分な睡眠時間を取るつもりなのだろう。
「なんだ!そのかっこうは?」
幸子がセクシーなネグリジェ姿で現れた。シースルーになっていて、下着が・・・。どうやら、俺の倫理観を吹っ飛ばそうということらしい。
「いいでしょ。そろそろ、本気を出そうかと思って、いつまでも弄ばれる幸子様じゃないわよ。」
「弄んだつもりはないが・・・見せてくれるというものを無理に拒否したりしないぞ。じゃあ、遠慮なく・・・眼福・眼福。」
「見てるだけでは、つまらないでしょ。触ってもいいのよ。」
「じゃあ、明日は早いからお休み。」
「ん、もう。」
俺が理性を総動員して背を向けると後ろから不満の声があがったが、無視して眠ることにした。・・・敵は諦めず、後ろから抱きついてくる。そのふくよかな感触を楽しみつつ眠りについた。よっぽどトンネル工事で疲れていたようだ。
・・・・・・・
ファーストクラスとはいえ、空の旅はつらい。なんといってもあの騒音の中で10時間以上居なくてはいけないからだ。ファーストクラスの設備や飛行機の中と思えない料理など5時間ほどは気を紛らわせることができたが、そろそろ限界だ。
俺は、さつきに着陸態勢に入ったら、メールをくれるようにお願いする。
「えっどういうことですか?」
「しばらく、飛行機を降りて休憩してくる。今ハワイ上空みたいだから、パンケーキでも食ってくるよ。」
「飛行機を降りるって・・・途中下車は無理・・・『移動』を使うんですか?」
「ああ、新幹線の中で試したことはあるんだ。その感覚だと距離はほとんど関係ない。同行する人数が多いほどMPの消費量は多いみたいだがね。」
「え、ズルい。1人で行くつもりですか?」
「そのつもりだが?まさか、一緒に来たいというのか?」
「もちろんですよ。何処にいくのにも付いて行くのが私の仕事ですから。」
「わかった。じゃあ、少しの時間だがハワイのバカンスと洒落こもうか。」
「では、父に着陸態勢に入ったら、連絡くれるように頼んできます。」
・・・・・・・
ハワイのバカンスを満喫し、4時間後飛行機の中に戻ってきた。
いつも評価して頂きましてありがとうございます。
飛行機の長旅は、つらいですよね。つらいからといって、途中下車できないし(笑)




