日常
ある日。
「なあ、王子様の理想のタイプって、どんな人?」
「なっ……! なんだ突然。そんなこと聞いてどうする」
しかし根が真面目な宮良は、宮麗の質問に真剣に考える。
「気高くて、優しい人だな」
「……おまえ、もろにお姉さんの影響受けてるのな」
「……っ! 悪いかっ!」
「いやあ、別にぃ? 今ではその両方を兼ね備えた女が目の前にいるわけだし。なあ?」
「……っ!!」
途端に顔を真っ赤に染める。
「カワイイねえ」
怒る宮良を後にして、宮麗はその場を立ち去った。
「なあ、雷奈の理想のタイプって、どんな人?」
「なんですか、突然。あたしのタイプですか。えーとですね、まず強くて、美しくて、優しくて、不言実行で……」
うっとりしながら雷奈は、滔々と語り出す。
「ちょっと待て! おまえ、それ特定の誰かのことじゃないのか?」
「そんなことないですよ」
「一応言っとくけどな、良桜は女だ」
「当たり前じゃないですか、何言ってるんですか。もし良桜さまが男の方だったら、あたしは種族の壁をぶち壊してでもお嫁さんになってみせますよ!」
にぎりこぶし。
(ここで自分が男だったら押し倒す、とか言わないだけマシだと考えるべきなんだろうな……)
興奮する雷奈を後にして、宮麗はその場を立ち去った。
「なあ、良桜の理想のタイプって、どんな人?」
「綺羅」
「……。言い切ったな……。しかもピンポイントで」
二人ともむくわれないなあ、とか考えていたら、逆に訊き返された。
「そういうおまえの理想のタイプとやらはどうなんだ」
「え? オレ? オレの理想のタイプはねえ……」
うきうきと語り出そうとして表情が止まる。
良桜はあさっての方向を向いて小さくあくびした。
「えっ……。オレのタイプ……?」
一転、真剣な表情で考えこむ。
「オレのタイプってどんなだろう……。ないのか? いや待て、女なら誰でもいいわけじゃないぞ?」
自分に言い聞かせるように、ぶつぶつとつぶやく。
「ええっ! オレの理想って、どんなだろう!」
「そんなことだろうと思った」
混乱する宮麗を後にして、良桜はその場を立ち去った。
そんな、日常。
―end―